2007.9.24(月)

中野ポケット。天然工房第17回公演『人選組、参る!』。
ここ数年、天然の芝居見ていつも思うことだけど、そこそこ面白いのよ。演出、役者のレベルは、高いと思う。パッケージとしては、ひとつの「天然印」が出来てると思う。
でもね、オレは、ものたりないのよ。
一言で言うと、演劇的衝撃がないのよ。
オレが演劇に求めるもの。それは、演劇的衝撃だ。そこそこ面白いものは、二度三度見る分けないかもしれないけど、そんなもの何度も見ていればあきてしまう。
今の天然の芝居は、そこそこ面白いものを巡るだけで、そこには演劇的衝撃が決定的にないのだ。きびしく言えば、オレにとっては、そんなもん、演劇ではない。
今の天然は、予定調和的世界観に完全にはまってしまっている。つまりは、小手先の見せかたに。
「違うだろ!」と声を大にして、オレは森角に言いたいのだ。
かつての天然の芝居には、演劇的衝撃をオレに、見るものに与えてくれる舞台がいくつもあった。初演の「クーラー」しかり、再演の「牛丼屋」しかり。
集団もここまで大きくなってくると、色々と大変だし、そうそう簡単にはいかないということはよく分かる。でもね、でもねだよ、森角。深く考えてごらん。お前のやりたかったことは、こういう予定調和的な芝居だったのか? 違うだろ。自分にとっても、見るものにとっても、常に刺激的でありたいという思いじゃないのか? 常に転がりつづける石でありたいという…。
違う?
偉そうに言って申し訳ないけど、オレは森角が好きだし、文学青年ぽい理屈なく、エンタテインメント志向で入ってきたお前ってとても信用できるんだな。
目先のことに振り回されないで、もう一度自分の穴を覗き込んで欲しいよ。
理想の演劇とは何か? エンタテインメントであり、かつ、演劇的(生の)衝撃にあふれたもの。例えば、シェイクスピア。


2007.9.25(火)〜28(金)

『小鳥の水浴』のコンテやんなきゃと思いながらも手につかない。原作が芝居としてほぼ完璧と言っていい戯曲なだけに、えらく難しいことに手を出してしまったなという、ある種の後悔がオレを責める。


2007.9.27(木)

田中康文・監督第二作『裸の女王 天使のハメ心地』初号試写。
うまくいってるじゃないか。最近のピンクとしては例のないイベント的大作映画という感じになっている。予算は同じなだけに、より強く「イベント的映画」という部分を感じる。
この作品の成功は、一にも二にも、青山えりなと結城リナというこの二人のヒロインの魅力につきるね。次には、回りを支えた、スタッフ、キャスト、協力の方々、はたまた、朝までというか昼近くまで付き合ってくれた数十人のエキストラの方々の協力にくして出来なかったということね。
でも、それを全部仕切ったのは監督の田中ね。やはり、田中の映画です。
田中の映画には、最近のピンクの新人監督にはない、スケールの大きさを感じるのだ。


2007.9.29(土)

『小鳥の水浴』ロケハン。
朝9時集合。落合のジミーの稽古場→九十九里浜→高円寺のKスタジオ→板橋のK氏宅→阿佐ヶ谷のスターダストと回る。終了、夜10時。オレはそのままスターダストで最終電車まで飲む。
久々に遠出もして、重量感あるロケハンだった。後悔してるなんて言ってられない。一気にパワーが湧いてきた。


2007.9.30(日)

役者リハ。午後1時から5時まで。
終了後は、みんなと飲む。


2007.10.1(月)〜2(火)

家にこもる。終日コンテ。乗ってきた。


2007.10.3(水)

撮影の志賀ちゃん、演出部とコンテの打ち合わせ。志賀ちゃんのアイデア、多々入ってくる。


2007.10.4(木)

コンテ。やり直し、清書…。乗り切り。


2007.10.5(金)

佐藤吏組初号試写。女優陣がすごい。吉沢明歩が主演。他に、大沢佑香、日高ゆりあ。
いい映画。佐藤の生理体質が濃厚に出ている。オレはこういうふうには撮れない。佐藤の映画見て、初めてそう思った。Hシーンでの工夫がもっとあれば、さらにいいのになあ…と思った。
3人の女優がみんないい。ピンクアイドルばかりなのにね。大沢、日高はよく分かるが、吉沢明歩っていいね。あのアンニュイさはすごい。昔のヨーロッパの女優を思わせるね。


2007.10.6(土)

クランクイン前日。もはや、やることもなし。静かに時を待つ。


2007.10.7(日)〜9(火)

『小鳥の水浴』撮影。
この作品、何度も言うように、60年代のニューヨークのオフオフ・ブロードウェの作家レナード・メルフィの処女作『小鳥の水浴』をもとにしている。(オフオフ・ブロードウェイ。ニューヨークの演劇といえば、ブロードウェイ。その商業主義システムに抵抗して50年代、オフ・ブロードウェイという演劇的運動が起こった。その代表作としては、エドワード・オールビーの『動物園物語』がある。そのオールビーらもメジャーに吸収されてしまい、さらに、オフオフ・ブロードウェイという演劇的運動が60年代に起こる。それは別名、アンダーグラウンド演劇とも呼ばれ、日本に輸入された時、それは「アングラ」という呼び名になり、70年前後、アングラ演劇が当時の日本のカルチャーを直撃したのだった。)
この芝居は、孤独な魂を抱いた1組の男女の一夜の出会いを描いたものだ。男と女、2人だけのセリフ劇だ。詳しくは、7月26日のオレの日記を見て欲しい。
2人芝居として、パーフェクトな演劇だと思う。1時間強の中に、あらゆる演劇的要素が全てつめ込まれている。つまり、かないませんよってくらいスゴイ芝居。それを映画にする……オレのプレッシャーはいつもに倍してるってわけです。

初日。
『奪う女』の時もお借りした板橋K氏のアパートから本日の撮影はスタート。
監督になった田中康文が今回はベタについてくれる。それが何とも心強い。
基本的には、日高ゆりあと田中繭子の息づまる親子のシーンを7シーン。4時過ぎに撤収。新宿へ移動。
5時前後のギリギリ太陽の光が当たる中で、オープンをワンシーン上げる。
某シティホテル。田中繭子のHシーンひとつ。日高ゆりあのHシーンを2つ。日高のHシーンのひとつはなかみつせいじくんとのからみ。これは面白い。なかみつくんは役者だ。すばらしいです。ワンシーン、しかもHシーン。それでもしっかりと役者の刻印をきざみつけていく…当たり前だけど、なかなかここまでの俳優さんいないので驚き感動するのだ。
なかみつくん、すばらしいです。また、その中で、自分の全てをさらしている日高もすばらしいのだった。
このHシーン、スゴイと思う。
終了、夜11時半。撤収、12時半。オレはそのまま、ホテルに泊となり、初日の感触をたしかめつつ一人酔うのだった。

2日目。
いつもどおり朝7時半、新宿集合。今日は朝いちで九十九里浜まで3カット撮りに行く日。しかし、ヒロインの日高が遅刻。結局、出発8時半となる。
10時過ぎには九十九里浜に到着。
理想的な荒れ模様の空と海。これが欲しかったんだよね。ロケハンの時に見た荒れた海と空がね。
あっという間に3カット終了。と同時に雨が降って来た。
12時半には東京にもどり、新高円寺のスタジオに入る。
男の主役ため野村くんのシーンを中心に全9シーン。
終了、夜10時半。昨日今日とホント早い。

最終日。
朝6時、阿佐ヶ谷の毎度おなじみジャズ・バー「スターダスト」集合。
ファースト・シーン。難しいシーン。終了、8時半。このくらいかかるよなあ。
落合の某稽古場へ移動。すいてれば10〜15分くらいの距離だが、なぜか異常に道が混んでいる。9時半、小1時間もかかって到着。今日はここのスタジオを野村くんの役の住居にしてのネバーエンディング・タイムの始まり。
野村くんと日高のシーンを9シーン。イメージ・シーンを3シーン。タイトル撮り、ブツ撮り…など。
終了撤収、深夜1時。
高円寺へ移動、オープンを7シーン。
終了、クランクアップ深夜2時半。
それから、オレと日高、野村くん、そして森山の4人で、駅前の大将へ行き、朝の6時過ぎまで飲んだのだった。

今回はオレの監督100本記念作品ということで、現場のギャラリーが非常に多かった。
ピンク映画本『ピンク映画全史』の関係者ばかりだけどね。まず、森山が3日間ベタについてビデオカメラを回し続けた(その本のフロクのDVD「現場のメイキング」用ね)。また、ライターの中村勝則氏も、取材で3日間来る。他には、『ピンク映画全史』用のスチール写真のカメラマンも連日来るし、その本の出版社関係の方々も連日に渡って来たという具合。
つまり、いつもに比べると、現場が異常ににぎやかだったな…ということです。


2007.10.10(水)

朝の7時すぎ帰宅。9時ベッドに入る。
夕方4時起きる。もっと寝ていたかったが、高円寺でハッピーターンのライブと、音楽の一魅との打ち合わせありで、仕方なく起きたのだった。
こんな時にライブなんて行くもんじゃないな。全然耳に入ってこない。
なぜか?
今回の作品、撮影が3日間の映画としては、全てやり切った、出し切ったという思いが非常に強いのだ。そういう時に、人のものを見ても何も入ってこないのだ。自分の世界の中から出れないというかね。
一魅との打ち合わせ。これは当事者同士ということもあり、いつもどおり、実に楽しいものであった。テーマは、一魅に新しい歌を作ってもらうかどうかということだったが、作ってもらうということで意見が固まる。時間がないから、ちょっと不安でもあるが、ここは一魅の才能に賭けよう。


2007.10.11(木)

編集。67分40秒。つまりは6分40秒以上切らねばならない。からみを切るしかないが、今回はからみあまり回してないのだ。これは大変そうだ。


2007.10.12(金)

オールラッシュ。再編集。
ほとんどからみで6分40秒以上切る。それじゃなくても、からみあまり撮ってないってのに、さらに短くなった。会社的、営業的は、非常にまずい状況かもしれない。でも、仕方ない。会社に怒られるのはカクゴしておこう。


2007.10.13(土)

アフレコ。終了深夜0時ジャスト。
ヒロインの日高、技師の中村さん、助監督たちと飲む。朝6時過ぎまで飲んでしまう。
とにかく、今回は、現場もアフレコもやり切った思い。
日高はホント頑張った。あとはダビングだ。一魅の歌が楽しみだ。今回はいわゆる音楽はほとんど入らない。入れないつもりだ。一魅の歌に賭ける。


2007.10.14(日)

アフレコ後は朝まで飲んで、いつものパターンでオレは梅ヶ丘のアパート泊まり。ゆっくり夕方に起きて、それから近所の五代の家まで行って飲んでると、一魅からTEL。歌、完全版じゃないけど一応作ったので、どうしても今日聞いて欲しいと。オレはもちろんOK。一魅、夜の11時頃車飛ばして梅ヶ丘までやって来たよ。それからずっと聞いてる。すばらしい曲だ。絵に合わせてみないと分からないけど、曲としては、すばらしい。


2007.10.15(月)

後藤大輔に会い、次回作の脚本を依頼する。オレにとって、101本目、公開順では100本目になるであろう新東宝作品だ。
オレの脚本家といったら五代暁子というのが定番です。でも以前は五代以外にも色んな人に書いてもらっていた。それがここ4、5年というもの五代のみになってしまった。やはり、さすがに息づまるよね。新しい空気、新しい刺激が欲しくなってきたということです。


2007.10.16(火)

ダビング。一魅の歌がすばらしくハマる。今回は基本的には音楽は入れないという方向で一魅と決めていた。その分、ここぞという時に一魅の声を流したいと。一魅の歌は2回流れる。2回ともとても劇的で、すばらしい効果だと思う。特にラストで流れる歌は、ホント一週間くらいで作っているし、その曲と一魅の声のすばらしさともども、オレにとっては天上の音楽に聞こえて来た。一言で言うと、感動だ。一魅は、やはり、天才だ。


2007.10.18(木)

わが地元・国分寺のラバー・ソウルというところで「煉獄サアカス」のライブ見る。
知り合いのシンガー、茜ユキさんが参加してる集団で、歌と踊りと寸劇と…色々なものが混じり合い、ジプシー的、サアカス的世界観を作り上げていくというライブの試み。
これはなかなかのものであった。特にエンディング近くでの、ダンスと演奏が連発されるあたりは、ほとんどトリハダものであった。
オレはすっかり「煉獄サアカス」のファンになってしまった。次のライブは12月の下旬予定とのこと。あいてたら絶対また行く。
それはそうと、今回の『小鳥の水浴』に出てもらった銀治が客席にいたのには驚いた。なんでも、座長のてんがい氏の知り合いとのこと。明日もよろしくねと言って別れる。そう、明日はいよいよ初号なのだ。


2007.10.19(金)

『小鳥の水浴』初号試写。
さすが100本記念作品だ。地味な内容で、人もそんなに出ていないのに、試写室はいつも以上のにぎわい。花束を2つもいただく。ありがたい。うれしい。
打ち上げもすごい人数。40人くらい来たか。
作品の上がり具合だが、これはいつものことよく分からない。しかし、今回はとにかくやり切ったという思いが強いので、作品の上がり具合については、あまり気にならないのだ。極端に言うと、どうでもいいというか。ま、悪いわけがないという自信が、どうでもいいという気分を作っているとも言えるけどね。
そう、すばらしいと思う。特に日高ゆりあは、最初の代表作になると思うよ。
いつものパターンだと朝まで呑んでいるのだが、オレは最終電車で帰る。なぜなら…。


2007.10.20(土)

ロケハン。そう、いきなりのロケハンいうわけで朝まで呑めなかったのだ。
某女優の山梨の実家が元は民宿だったという話を聞いて、しかも、そこを使ってもいいという話になり、それは一度早急に見たいと、しかし、その女優が20日しかあいていないと、そんなわけで、いきなりのロケハンとなったのだった。
使えます。色々と調整しなきゃいけないことはあるけど、とりあえずここはいけるということだ。うまくいけば、近いうちにオレの映画に出てくることだろう。


2007.10.22(月)

『小鳥の水浴』映倫試写。
今回はHシーン自体の長さは、普段のオレの作品と比べてもだいぶ短い。しかし、「えっ、コレでいいの?!」と当事者のオレが思うほどの過激な描写がいくつもあり、その全てが通ったことがうれしい。お客さん、おいしいですよ。
また、大蔵映画恒例の監督賞だが、今回は内容の地味さ、また大蔵NGの多さなどから、100パーセント以上ないと思っていたのだが、意外の監督賞となった。これもスナオにうれしい。やはり、映画の会社たせな。
大蔵での次回作、「未亡人もの」ないしは「若妻もの」で明るいものをやってくれとの注文くる。12月にやれんかというのを、12月は新東宝があるので、1月に伸ばしてもらう。
夜は久々に原宿の「ラブ・ミー・テンダー」。エルビスの新しいCD、DVD、Tシャツ、写真集など数万円分購入。オレの唯一の道楽。来年のカレンダーが全て売り切れていたのが誤算。
ラブテンのあとは、これも久しぶりに高円寺のバンブーハウス。
そうそう。『小鳥の水浴』の公開タイトル、『半熟売春 糸ひく愛汁』です。だいぶ前から決まっていたのだが、どうにも気に入らず無視していた。初号終わるとそうもいかないので公表します。公開は来年2月です。よろしくです。傑作です。


2007.10.24(水)

久々に映画館で映画見る。地元のシネコン。『ヘアースプレー』と『カタコンベ』。
『ヘアースプレー』。ジョン・ウォーターズが昔撮った映画→ブロードウェイ・ミュージカル→今回のミュージカル映画としてのリメイク。ということらしい。ま、そんなことはどうでもいいわけで、コレ、いいの?という方が問題。ジョン・トラボルタの特殊メイクによる女装ってどうなのよ? オレは気持悪いだけだった。ダンナ役のクリストファー・ウォーケンも腰引けてたぜ。デブでみにくくても、歌って踊れる女優なんて、アメリカのショービズにはいてすてるほどいると思うのよ、そういう人を使った方がはるかにいいと思うんだけどね。でも、あれが商業主義ってもんなんでしょうね。
『カタコンベ』。ホラー。らしいけど、あまりのつまらなさにほとんど寝てしまった。よって、コメントなし。


2007.10.25(木)

桜井さんの高円寺アリアでのライブ。桜井さんのライブも久しぶり。奇跡の生還を果たした8月26日マンダラ2でのライブ以来か。たかが2ヶ月ぶりだけど、えらく久しぶりに感じたのだった。