2002.3.2(土)〜5(火)

新東宝作品『猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!』撮影。

初日。まずは、後藤大輔監督宅のマンションのドアまわり。マンション回りを借りての撮影。いつも夜中に、打ち上げの3次会、4次会で最近は来させてもらっているのだが、その時の印象とちがい、車の流れがヒンパンにある。アレ、なんで?と思ったが、いつもは夜中なのだ、朝はやはりこのくらいは車が多いのだな。
それから、東映化学。屋上のシーンをいくつか。
次はナイト・シーンだが、夜になるまでだいぶ時間があいたので、ここで、前回のオーピーの撮りこぼしのビデオの画面撮りを入れる。約2時間。
そして、いきなり、ラストのクライマックス・シーンへ。全盲の葉月螢が、ストーカーの入江浩治に追いつめられるシーン。このシーンは長い。現場的には、東映化学と新東宝を借りて全部撮る予定なのだが、今日のところは、東映化学の巻。
追いつ追われつという、一種のアクション・シーンでもあるので、カット数がそれなりに多い。まずは廊下での追いつ追われつを撮っていたのだが、何と、途中でキャメラマンの志賀ちゃんがダウン。救急車を呼ぶという事態となる。(このページをずっとお読みの方には分かると思うが、今回の撮影は、10日間で2本撮りという強行軍。オーピーまず4日で撮り、2日、あいだがあったとはいっても、オレにしても全然休んではいない。新東宝の準備に2日間埋めつくされ、そのまま突入という、かなりのハード・スケジュール。志賀ちゃんもその疲れが一気に出たのだろうね。)
志賀ちゃんはそのまま病院に行き、あとは助手さんが受けつぐという緊急事態。ここで助かったのは、撮影チーフの長谷川さんが、国沢組を始め、何本も回しているキャメラマンであったということ。
そのまま、撮り残した廊下のシーンをワンカット撮る。
その頃には、志賀ちゃんの急を聞いて駆けつけてきた撮影部が2人くる。キャメラマンの小山田氏と、助手の岡部くんだ。撮影部の世界ってスゴイなと思った。親分が倒れるといきなりヘルプが2人も飛んでくるのだ。
それから、エレベーター回りのカットを4カット。階段のカットを、7カット撮り、本日は終了。時刻は深夜0時を回っていた。
その頃、志賀ちゃんも戻ってくる。思いの他、元気。ホッとする。

2日目。この日は、公園のシーンをいくつかと、前日の続き、ラストの追いつ追われつを新東宝で撮るというこの2シークエンスのみ。そういう意味で今日は早いと思っていたが、いきなり今日もハプニング。
午前中から入る予定でいた新東宝が、ビルの管理会社の点検ということで、午後まで入れなくなる。ロスタイムは2〜3時間。仕方がないので、普段は撮影の最終にやる、タイトル撮りやってしまおうとなり、公園のシーンのあと、シネキャビンに移動。そこでタイトル撮り。
午後1時過ぎ、新東宝へ移動。
まずは、更衣室のシーンを3シーン。
そして、前日の続き、ラストのクライマックス・シーンだ。
前日の短いカットの連続ばかりでなく、今日は移動車を引いての長いカットもある。葉月も入江もバツグンの出来。はっきり言ってスバラシイ。
手応え、バシバシ。終了、夜の9時。やはり4日撮りはラクだ。こんなに早く終わる日があるんだもの。

3日目。今日は赤羽にあるスタジオでの撮影のみ。移動もなし。その意味では今日もラク。でも、今日の撮影は、オレが今回最もポイントとしているねらいのカットが連続する。その意味では、オレにとっては最も重要な日。
まずは、スタジオ回りでオープンを3シーン。色華昇子さんのオカマが強烈。
そして部屋に入る。若い女のコ(新人の真咲紀子。今年、オレはこのコで走るつもり)がストーカー野郎(入江浩治)にレイプされ、殺される。何も知らない全盲の女(葉月螢)がその部屋にやってきて、殺人のあとボーゼンとしているストーカーと遭遇する。
見つめ合う2人。しかし、片方は全盲。ストーカーは当然それを知らない。そういう2人の視線の交錯、その妙な緊張感−今回オレが一番やりたかったのがコレだ。
真咲、入江、螢の出来もすばらしく、オレは手応えバシバシ。
しかし、ここでまたハプニング。
隣のオバサン役で登場の五代暁子が足の親指のツメをハガすという事故が起きる。
志賀ちゃん、新東宝、そして五代と、3日連続してのハプニングというか、異常事態。
一体、これは何だ?!
明日は何もなければいいのだが…。
終了、夜の9時半。早い! なんて4日撮りってラクなんだろう。

4日目。最終日。今日は、荻窪に出来た新しいスタジオでの撮影のみ。その意味では今日もラク。
全盲の女(葉月螢)の部屋関係のシーンが13。順に撮ってゆく。葉月と刑事役の石川ユーヤが初めて結ばれるくだりがよい。葉月がすばらしい。葉月に出てもらうの初めてだが、葉月って、やはり、いいなと、実は、初めて思った。
最後に、ストーカー入江くんの回想シーンを3つ。入江くんの出来もすばらしい。彼の代表作になるだろう。母親役の美麗のHシーンを最後にクランクアップ。このHシーンの時に初めてピンク映画を撮ってる気分になる。ま、サービス、バシバシのシーンだけど、そのくらい今回のヤツは、ピンクに頭が向かっていない。
終了、深夜の1時過ぎ。早い。前回のオーピーといい、今回といい、完徹が一日もない。やはり4日撮りはラクだとあらためて思うしだい。ま、あたりまえだけどね。普段、3日でやってることを、そのまま4日でやるんだから。特に今回は2作とも4日だからって特別なこと何もしてないしね。
ま、とりあえず終った。心配していた異常事態も4日目は起こらずホッとする。

2002.3.7(木)

オーピー映画『欲情牝 乱れしぶき』編集。つい1週間前に撮影していたのに、だいぶ以前のことに感じる。不思議な感覚だ。
71分以上あった。10分は切らなくてはならない。ンー、からみだけではムリだ。シーン抜きも考えなくては…。

2002.3.8(金)

オーピー『欲情牝』オールラッシュ。ラッシュ後、再編集。4シーン抜き、からみもバンバンカット。一気に10分近くカットする。あとはアフレコで20〜30秒切ればOKだ。

2002.3.9(土)

オーピー『欲情牝』アフレコ。若宮弥咲、さすがだ。舞台できたえてる人は違うね、やはり。倉沢七海もがんばった。3週間前、特訓した時を考えると、ものすごい進歩。やはり芝居ってのは、気持が大事なんだな。なかみつせいじ。またいい。ホント役者です、彼は。佐藤広義。はっきり言って、ヒドイ。余りに不器用。しかし悪いことしてしまったと思うのだ。彼の不器用さを見抜けず使ってしまったオレのミス。このまま終ったら、イヤな気分しか残らないので、次の機会を考えなくては…。
終了、深夜12時半。それから、ラッシュ。終了、3時。

2002.3.11(月)

新東宝作品『暗闇で抱いて!』編集。今度はいきなり新東宝の方の仕上げにかかる。65分58秒。新東宝は、62分以内なら許してくれるので、4分切ればOKだ。オーピーとほぼ同じ量のフィルム回してるのに、こっちの方が5分以上短い。やはりアクションつなぎが多いので、その分カットが細かくなって、切る量も変わってくるということなのだ。ともあれ、オーピーほど長くないのにはホッとしたが、Hシーンもギリギリの量しか撮ってないので、どうしたら4分切れるのだろう?

2002.3.12(火)

新東宝『暗闇で抱いて!』オールラッシュ。再編集。なんとか4分近く切れる。究極の手を使ったのだが、ここで語るには、台本を用意しなくてはならないので出来ない。とりあえずホッとする。
編集後、初号試写を覗く。樫原辰郎氏のピンク・デビュー作だ。
都会の片隅の酒場を舞台に展開する、せつなくも哀しい、そして、ほろ苦くも微笑ましい「死者たち」の物語。オレは見ていて、阿刀田高風の「奇妙な話」連想して、ニンマリ笑いながら、物語の世界を楽しむことが出来たのだった。
ステキにオシャレなカフェバーと、ボロボロのアパートの対比。「あのシーン、どこで撮ったの?」と思わず助監督に聞いてしまったオープンのロケーションのすばらしさ。日傘、包丁、グラスにそそがれるウイスキー……などの巧みな小道具の使い方。そして、安定した役者陣の演技(特にすばらしかったのは、竹本くんと山咲小春が初めて結ばれるシーンのカウンター越しの芝居。あれこそ、ラブシーンだ!)……などなど。
映画に対する「思い」に満ちたこの映画、オレは好きです。
もうひとつふたつ、特に好きなシーンを上げると−まず、あの坂道ね。そして何といってもすばらしかったのは、竹本くんがゾッとして、ゴジラ屋の外を見ると、そこには風にゆれる日傘のみがあるというあのシーンね。とりわけ美しいシーンだ。
もうひとつ言うと、竹本くんが印象的。いつのまにあんなによくなっちゃったの?!−という感じね。彼の存在がこの映画をずい分支えていると思った。

2002.3.13(水)

新東宝『暗闇で抱いて!』アフレコ。トントン拍子で進み、終了、なんと夜の10時半。12時を回らなかったなんていつ以来だろう。
明日はオーピーのダビング。深夜になるのを覚悟してたオレは今日はキャビンに泊まるつもりできていた。とは言ってもすぐには眠れないので、ゴールデン街の「if」まで呑みに行く。こうして呑むなんて実に久しぶり。マスターの佐々木共輔相手に気分よく3時間ほど呑んでキャビンへ戻る。疲れもたまっているので、けっこう酔っている。そのまま倒れるように眠ってしまう。

2002.3.14(金)

オーピー映画『欲情牝 乱れしぶき』ダビング。大場一魅のアコーディオンを使った癒し系の音楽がとてもいい。終了、深夜1時。そのままキャビンで朝まで呑む。

2002.3.16(土)

渋谷のシアター・コクーンにて『身毒丸』。実は五代暁子が大の寺山修司ファンでね。オレはムリやり引きずられていったという感じかな。久しぶりの演劇。7年前の武田真治・白石加代子バージョンも見ていて、それ以来の『身毒丸』。今回は、藤原竜也・白石加代子のキャスティング。7年前も思ったけど、たいした芝居じゃないよ、コレ。中味が何もないのを、必死になって、大仕掛けな美術、照明、音楽でごまかしてるという感じしかないのだ。でも、7年前のバージョンよりは少しよかったかな。武田真治より藤原竜也の方が全然いいし、白石加代子もすさまじい存在体になり、メチャうまく、チャーミングになっていたからね。やはり化け物だね、あの人。