2006.5.14(日)〜16(火)

新東宝作品『熟女・人妻狩り』撮影。
何度も言ってきたけど、今回は去年の『マーニー』(『肉体秘書』)に続いてのヒッチコックの『フレンジー』への挑戦だ。内容もテンコ盛りで、三日間の撮影だけど、連日山場の連続という感じで、一体撮り切れるんだろうか?という不安も少しはある。シーン数だけでも60シーンもある。こんなの久しぶりだ。ま、撮り切るしかないんだけどね。そんなわけでいつも以上に不安がせめぎあって、とてつもなく楽しく激しい三日間となったのだった。

初日。
朝7時半新宿集合。オープン・ロケのシーンが10シーン以上あるというのに、前日からの雨はやまずシトシトと降っている。
まずは西口公園近くの路上で車の中でのデートシーン。次に十二社通りにあるコンビニ前でのゲリラ撮影。ただオロオロするだけの助監督たちに早くも怒り爆発、キレまくり。
北新宿公園へ移動して、最初の死体発見シーン(死体=日高ゆりあ)。ここはゲートボールしてるお年寄りたちの怒りをかいながらの撮影となる。
大久保の路上で、車からの死体落下シーン(死体=春咲いつか)。
まさに初日から山場の連続。
午後2時頃、やっと抜弁天のTスタジオに入る。駐車場に車をとめて、犯人の男の死体との格闘シーン。このシーンこそ本日の最大の山場。一体どのくらいの時間がかかるのか、見当もつかないって感じ。まずはカット数を減らすということね。予定の三十数カットを二十カットに減らす。役者の熱演(竹本泰志と死体・春咲いつか)もあってテンポよく進む。暗くなる7時頃終了。竹ちゃん、春咲、よくやってくれたよ。
やっとスタジオ内での撮影となる。
大きくいって殺人シーンが二つ。山場です。
まずは春咲から。春咲の方はHシーンもないし、殺害シーンも短いカットのつみ重ねなので、それほど時間はかからない。
次に日高ゆりあ篇。こちらはレイプシーンもあるし、それなりの仕掛けもあるしで、かなり大変。日高もいい顔で死んでくれました。
終了、深夜3時。本当は『サイコ』もどきのシャワーシーンも撮る予定でいたのだが、初日から完徹もしてられないということと、フィルムが予定以上回っているということで、残念ながら省略する。
オレはスタジオ泊。5時くらいまでビールを飲んでベッドに入る。入った瞬間寝てた。

2日目。
スタッフは朝7時半新宿集合で実景をいっぱつ。役者は8時半、スタジオ直入り。
そんなわけで8時半頃みんな集まってきて起こされる。
9時撮影開始。本日も山場、また山場という感じ。
まずは佐々木麻由子扮する竹宮探偵の事務所シーンから。4シーンだけど、これまた濃いシーンが二つもあるんだな。
3時頃終了。西新宿にある某ビルの屋上へ移動。屋上での麻由子と竹ちゃんの対決シーン。本日最大の山場ね。5時頃終了。スタジオへもどる。
警視庁の会議室シーンと取調室シーン。
探偵事務所を2シーン。これがまた大変なシーンでね。どう大変だったかは、ネタばらしになるので言わない。ぜひ見て楽しんで下さい。
終了、深夜2時半。今日は梅ヶ丘の事務所泊まり。事務所には4時頃着く。5時までシャワーとビール。それから6時半まで仮眠。

最終日。
朝7時半新宿集合。
荻窪のバー、グッドマンで3シーン。
昼頃、新高円寺の新しいマンション・スタジオへ移動。ここでは山場のシーンしかないって感じね。フィルムもいよいよやばくなってきて、夜7時頃、ギリギリの時間に一本注文して持って来てもらう。
ここもネタばらしになるので細かく書きません。見てね。
終了、深夜2時。
今回は完徹はなかったけど、連日2時3時というある意味、一番ヘビーなパターンね。しかし、久しぶりにキャメラの志賀ちゃんからも「仕上がりが楽しみだよ」と言われるほどに、オレ自身もとても手応えを感じている。ホント、仕上がりが楽しみだ。

2006.5.19(金)

編集。
いつもよりフィルム多く回してるし、70分とかいっちゃったらどうしようと思っていたけど、意外や、66分代でおさまる。「え、なんで?」って感じだけど、編集の酒井ちゃんいわく「カット数多いからだよ。三百カットくらいありそうだよ」「え、そんなにあんの?!」と思い、数えてみたら、なんと二百八十カット以上あった。そんなに撮ったんだ。多ければいいってもんじゃないけど、3日間で三百近いって、これは限界超えてます。しかも、カットかせげるHシーンを今回はかなりまびいて撮っていることを思うと、これはホントすごい。やはり志賀ちゃんだよねと思うのだった。
新東宝の福ちゃんから、62分30秒までならOKと言われているので、3分半くらい切ればいい。とにかくホッとしたのだった。

2006.5.20(土)

五代と次回オーピー作品の脚本直しの打ち合わせ。仮題『華麗なる中年ホスト』。

2006.5.22(月)

オールラッシュ。面白い。うまくいってる。みんなでけっこうハイになってラッシュ見る。(みんなって言っても、オレと志賀ちゃんくらいだけどね。酒井ちゃんはあくまで冷静だし、助監督たちは、???…)でも、映倫の先生も珍しく「面白いね、コレ」って言いながら帰って行ったし、やはり面白いのよ、コレ。
ラッシュ後の編集で62分40数秒まで持ってゆく。あと十数秒切ればよいのだ。とりあえずホッとする。
編集後、森山のオーピーの新作の初号見る。痴漢電車ものだ。
前作のホモ映画の不調とはうって変わって、こちらはなかなかの快作に仕上がっていたと思う。なにより、佐野和のホンと役者ぶりがいい。ホンはうまいし、役者ぶりも一段とうまくなったなという感じ。
ただ、前半は快調なのだが、後半失速。演出的にもっと工夫が欲しかったなと。特にラストは「えっ!?」というアイデアを持ち込んで欲しかった。実はオレ、ひらめいたのだ。こういうアイデアを持ち込めば映画が爆発したのになというアイデアを。ホントに『痴漢電車 大爆破』(仮題)になったのに…。おしい。

2006.5.23(火)

アフレコ。
夜10時終了。早い、実に早い。オレの組のパターンは深夜0時過ぎくらいに終了というのが一番多い。それが10時。みんなの熱演もあるけど、それにしても10時はないだろうと思って考えた。最大の理由。セリフが少ない。そう、セリフがとても少ないのだ。「ハッ!」「キャー!」とか、そういう雰囲気が圧倒的に多いのだ。竹ちゃんなんかは一言も発しないで5分以上死体と格闘してたりね。つまりはそういうことであったのだな。謎が解けた。
それにしても、何か傑作が出来そうな時って役者の雰囲気も違うよね。つまり、終わっても帰らないのだ。日高なんか、昼頃終わったのに、夜の6時頃までずっと見てるのだ。そして「歌のレッスンがあるから一旦帰りますけど、10時頃また来ます。お酒持って」なんて言って、ホントに酒持ってもどってくるのだ。麻由子も3時か4時には終わってたけど、8時頃までずっと見てるのだ。
やはり、そういうパワーを映像から感じるんだろうね。そんなわけで、増々手応えを感じたってわけね。
アフレコ後の飲み会、いつもより2時間も早くなったので、朝6時頃までえんえん8時間も飲むこととなったのだった。

2006.5.25(木)

五代宅。一魅にも来てもらう。五代とは、オーピーの台本の最終的なチェック。一魅とは新東宝フレンジーの音楽の打ち合わせ。一魅も、いつも以上にリキが入っている感じよね。

2006.5.26(金)

深町組初号を見る。今回は怪談ものの一篇。しのざきさとみがコワイ。師匠、増々快調です。

2006.5.28(日)

ダビング。新東宝の福ちゃん、例によって顔を出す。いつもなら2、3ロール見たとこで、初号楽しみにしてますと帰ってゆくのだが、今回は昼頃顔を出してから、もうワンロール見たら帰りますと言いながらずっといる。夜10時頃、最後のワンロールとなったところでやっと、「最後だけは初号にとっておきます」と言って腰を上げたのだった。福ちゃんの腰がなかなか上がらない…ここにも、今回の作品の持つパワーを感じるのだ。
終了、深夜0時。いつもどおりの時間だ。
オレも一魅も録音の中村さんも、それぞれが手応えを感じている。いつもはヘロヘロですぐに帰る一魅が、いつも以上にヘロヘロになっているはずなのに、気分が高揚してるせいか、妙に元気で、珍しくオレと中村さんの酒の相手をして、しばらくいてくれる。
今回は、たぶん、かなりいけてると思う。

2006.5.29(月)

左腕の痛みはもう4週間近くも続いている。スチールカメラマンの津田さんに、上野の徳大寺で御祓いしてもらいなさいと言われ、行くことにする。五代親子も付き合う。
御祓いのあと、気のせいか、痛みがだいぶラクになっていることに気づく。久しぶりにつぶらに肩車してやる。
浅草の花やしきで遊ぶ。

2006.5.31(水)

『熟女・人妻狩り』初号試写。
こういうことってあるんだな…。オレの意図や計算を超えて、作品がグングン立ち上がっていくってことが。こんな気分になるのって、何年に一回あるかないかだ。
とにかく面白いです。期待してもらっていいです。
竹本泰志。竹ちゃんの代表作のひとつになることだろう。これほど魅力的な犯罪者像って、そんなめったに見れるものじゃない。竹ちゃん、これ一本で男優賞決まりと言ってもいいだろう。
佐々木麻由子。麻由子もいい。かわいい。とてもチャーミングなキャラを作ってる。
日高ゆりあ。オレの組、これで3本連続となる。前作『弁護士の秘書』(オーピー)では主演だったが(公開は7月だと思う。これもかなりいけてるコメディです。ゆりあの魅力全開だ)、今回は最初に出て、すぐ殺されてしまう役。でも、とてもキレイだし、死体では泥だらけになって頑張ってくれたし、こういうある意味ぜいたくな使い方もありでしょう。次のオーピーでは、またヒロインだ。
春咲いつか。『昭和エロ浪漫』ではヒロインだったが、彼女も今回は殺され役。でも、少しのシーンでも達者な芝居を見せてくれる。死体として、ナップサックに入りっぱなし。さぞ大変だっただろう。役者根性すごいよ、このコ。次はいよいよ深町組に出る。師匠もきっと気に入ってくれることだろう。
三上夕希。オレの組初出演。芝居ははっきり言ってヘタです。でも、ゴージャスなセクシー系美人で、その存在感は芝居のヘタを超えているのだ。次回オーピーにも出てもらいます。
4人の女優に共通してすばらしかったのは、殺害シーンの迫真性ね。みんな実にいい顔で苦しみもがき死んでくれたのだ。すばらしいです。
その他、樹かず、本多菊次朗などレギュラー陣もそれぞれの個性を見せ充実してる。牧村耕次も、写真のみの出演だが、華をそえてくれる。
そんなわけで、役者陣の充実ぶりも見応えありです。
打ち上げ。明日はさっそく次回オーピー作品の生原を印刷に回さなくてはならないので、どこか冷静で、とことん酔いしれることはできず。残念。

2006.6.1(木)

オーピー決定稿(仮題『華麗なる中年ホスト』)を印刷に回す。
三上夕希の働いている六本木のクラブをロケハン。次回作のホストクラブのセットで貸してくれるということで、一人下見に行ったのだ。クランクインは6月20日だ。