2005.11.29(火)

次回作『朝日のあたる家』で、いつもは五代や原田なつみにやってもらっている役、つまり母親役だけど、その役をやってもらう人に会う。
その人、芸名を吉原あんずさんというんだけど、ビックリしたことにこの人とオレとは20年ほど前にピンク映画で共演していたんだよね。
20年ほど前(滝田洋二郎監督作『はみ出しスクール水着』でオレと彼女は共演していたのだ。オレは例によって、高校の理事長役。彼女は女子高生役。役柄としては、4番手くらいの役だったし、オレはもちろん全く記憶から欠落してる人だった。
なんでそんな人と20年ぶりに会うことになったのか?
今年の夏、五代暁子が息子のつぶらと親子キャンプというのに行ったのだな。その時、同行した親子の中にその吉原さん親子がいて、キャンプ先で五代は彼女とすっかり意気投合して仲良くなり、その時の話の中から、吉原さんが昔女優をやっていたという話が出てきたというわけ。
吉原「私、今は脱いだりするのは出来ないけど、お芝居だけの役だったらぜひやらせてもらいたいので、五代さんの書いてる監督さんに紹介して下さいよ。ちなみに私は以前、一本だけピンク映画に出たことがあり、それは滝田さんの『スクール水着』でした」。
五代「えっ!! 私の書いてる監督の池島も以前は滝田組の常連の役者で、その作品にも出てるわよ。うわー、おどろいた!」。
ては話が展開し、ついにはオレと会うことになったってわけです。
で、とりあえず一度会っておきましょうよとなり、今日会ったってわけね。
脱がないってのが残念なくらいのいい女っぷりの熟女でした。文句なく、彼女に次回作の母親役やってもらうことにしました。
それにしても、20年ぶりとはね。全くビックリします。人生にはこういうこともあるってことですね。

2005.11.30(水)

新宿プラザで『エリザベス・タウン』。全くつまらなかった。

2005.12.2(金)

荻窪グッドマンで桜井明弘ライブ。
次回作の挿入曲というか、シンガーソングライターの役での出演を正式にお願いする。
それで、大場一魅、桜井明弘と、2人のシンガーがライブシーンを演じるというピンクとしてはちょっと豪華なことになってきたね。

2005.12.3(土)

演出部打ち合わせ。

2005.12.9(金)

ロケハン。本郷、谷中、八王子方面と見て回る。

2005.12.10(土)

役者の打ち合わせで長い一日となる。
朝10時セメントマッチに助監督と、ヒロイン役の春咲いつか、そして池田こずえが集合して衣裳合わせ。
午後1時からシネ・キャビンで役者リハーサル。
終了、夜8時。それから飲み会となる。
終了、明け方の4時。
もうヘロヘロ。長い一日だった。

2005.12.12(月)

ロケハン。
今日は千葉方面を中心に。
夜8時、グッドマンを最後にロケハン終了。
東中野リズ、高円寺バンブーハウスとハシゴする。

2005.12.14(水)

撮影の志賀ちゃん、助監督たちと最終的なコンテの打ち合わせ。
終了後、佐藤吏組の初号の試写を覗かせてもらう。
佐藤の4本目となる作品だが、オレは今回のヤツが一番気に入った。
佐藤の、日常の空気感を切り取るというスタイルが、今までの中では一番濃厚に、かつリアルに描出されていたと思うから。
前半はちょっとヤバイ。しかし中盤の本多菊次朗のコンビニ店長の登場あたりからがぜんドラマが動き始め生彩を放ち始める。
とある地方都市を舞台にした、高校生の息子たちとその母親たち、そして女子高生のセックス相姦図というそのストーリー展開はよくある話といえばよくある話だ。しかし、佐藤のちょっと突き放したかのようなクールな目線の取り方が、人間たちの行動を悲劇的にも喜劇的にも見せ、実にリアルに空気感がかもし出されてくるのだ。
加えてロケーションがすばらしい。今までのピンクでは見たことのない風景の中を行き交う人物たちを見てるだけでも新鮮な心地よさがある。
キャスティングの失敗とか色々あるのだが(主役の高校生役、あれはないだろう。芝居どういう以前にふけすぎ。女優陣はみんなよかっただけにおしい)佐藤の個性というかスタイルというか、やりたいことというか、そういうものが初めてシンプルにキチンと見えてきた作品として、今までの中では一番うまくいったものだとオレは思うのだ。

2005.12.17(土)〜19(月)

オーピー映画『昭和エロ浪漫 生娘の恥じらい』撮影。

初日。
朝一は荻窪のライブハウス「グッドマン」でのロケ。歌声喫茶のシーン2つ。バーのシーン2つ。計4シーン撮らなくてはならない。終了午後1時目標。ギリで2時。
グッドマンのあと、豊田まで行き、オープン2シーン。それからヒダカスタジオに入る。日が短いので、最悪でも3時までには豊田に行っていたいのだ。
グッドマン、終了3時。絶望的だ。志賀キャメラマンと相談。「池ちゃん、豊田でオープン2つはもうムリだよ。どこかこの辺で何とかやっちゃうしかないよ」。「そうだよなあ…。あ、あそこはどうかな? 何度もロケしてる杉並の堀ノ内の川ぞいの道は?」。「そうだな。とにかく行ってみよう」。
ということになり、堀ノ内へ向かう。オレはガックリきていた。10年以上前から一度撮りたいと思っていた豊田駅近くのナイスな坂道、そして美しい浅川をあきらめて、行ってみなくちゃ分からないところに向かうという絶望感に打ちひしがれていた。
堀ノ内到着。さっそく志賀ちゃんとロケハン。川ぞいの公園でひとつ、橋の上でもワンシーンと場所が固まる。
2シーン終了。と同時に日が落ちて真っ暗になる。ホント、ギリだった。(オレはもはや絶望的な気分で、こんなところで撮らなくてはならないなんて情けない。ああ、ホントに豊田でロケしたかったよ……なんて思っていたのだが、後日ラッシュでこの時の2シーン見て驚いた。見事に昭和30年代風の雰囲気で画面が切り取られていたのだ。なんて志賀ちゃんてすごいのだと思ったよ)。
6時ヒダカスタジオ到着。ここでHシーンを3シーン。またまたきびしい条件が2つあって、ひとつは池田こずえの出し。今日中に京都まで行かなくてはならないということで、逆算すると8時15分にはスタジオを出なくてはならない。ということは8時には終わらせなくてはならない。もうひとつは、スタジオの条件で、深夜12時までに完全撤収という絶対的な決まりがあるのだ。(オレは過去に2度ばかり、この決まりを破っていて、今やブラックリストで、オレの名前ではこのスタジオ借りられなくなっているのだ。ちなみに今回は助監督の一人の中川の名を借りて、中川組ロケとなっている)。
今日だけヘルプで来てくれている助監督の田中のおかげで助かった。さっそくセッティングに入ってくれて、あっという間にラブホテル、そしてビンボーな工員のアパートの一室と作ってくれる。
そんなわけで、池田こずえとなかみつちゃんのからみ、7時スタート。1時間一本勝負だ。2人ともうまいので、8時には終わるとオレは宣言。
処女のOLと上司の中年とのSEX。しなやかに濃密なからみが展開。フィルム、ガンガン回ってしまう。ついには予定オーバーの2本以上が回ってしまった。
終了、ジャスト8時。やった!
それからアパートの部屋でのからみを2シーン。ビンボーな工員に平川直大、恋人のOLに春咲いつか(このコも処女役ね)。
11時に終わらせると宣言。
なかなかリアルな処女喪失シーンが撮れたんじゃないかな。
終了、11時5分。ほとんど予定通り。これでスタジオさんにも怒られなくてすんだ。
という具合に、あわただしく一日目は終わったのだった。

2日目。
この日と3日目はとても変則的なスケジュールとなったのだ。というのも、劇中唯一のヤリマン女類子役の日高ゆりあくんが、この日NGで翌日しかあいていない。もともとは2日目は類子役中心のスケジュールだったので、それが出来ないとなると、この日はとてつもなくラクになり、その代わり3日目が超ハードになる。女優を変えるか、スケジュールをずらすしか手はない。しかし、もはや日高くんでやるしかない、スケジュールのやりくりももはやムリというところまで追いつめられていた。それで変則的なスケジュールに突入となったのだ。
例によって7時半新宿集合。谷中に向かう。昭和といったら谷中だよね。
谷中で2シーン。特別出演の水原香菜恵とヒロイン役の春咲の芝居、安心して見れる。役者たったらとりあえずこのくらいは…としみじみ思うのだ。
千葉港へ向かう。千葉港で2シーンというか、2カット。
南酒々井の津田スタジオへ向かう。このスタジオも久しぶり。牧やんがボケ老人やった『不倫妻の淫らな午後』以来か。
やれるシーン、4シーンしかない。しかもラクなシーンばかり。
終了、なんと6時半! こんなに早く終わったのっていつ以来だろう? オレの記憶では、『ヴァンパイアもの』を撮って以来か。あの時も、一日は取調べ室のシーンのみで、6時頃終わったと思う。あの時以来か。もっともあの時は4日撮りだったので、単純には比較できないけどね。
メシ食ってフロ入ってサケ飲んで、夜中1時に寝る。
明日は20シーンもある。全39シーンの映画なので、半分以上が明日に固まっているというわけだ。

最終日。
8時開始。昼食までに5シーン。昼食後はオープンに出る。オープンで5シーン。スタジオに戻ってきた時には暮れつつあった。
類子の部屋関係を5シーン。うち3シーンはからみ。新人の日高ゆりあくん、いいよ。ちょっと林由美香に似ている人だな。顔つきも体型もね。芝居は当然まだまだだけど、やる気というか、やりたい気持がふんだんにあるコなんだな。要は芝居が好きなんだな。性格もクセがなくて実にいいコ。事務所に入っているのが、オレ的にはちょっとネックなんだけど、オレ、このコで来年は走ろうかななんて思うよ。2本くらい主役クラスで使えば必ずピンクのアイドルになるコだと思った。
深夜1時頃、類子関係終了。
ここから家族関係の重い芝居場を中心に5シーン。
役者の登場シーン、終了、朝7時。
それから小物撮り、タイトル撮り。終了8時。予定通り、完徹となったのだった。

2005.12.20(火)

1時間ほど休けいして、9時半津田スタジオを出発。新宿へ向かう。
昼12時、新宿着。
午後1時、自宅にたどり着く。
すぐ寝ればいいものをハイになってるものだから洗濯したり掃除したりビール飲んだりしてダラダラと過ごす。夕方いつの間にか寝てしまい、ふと目を覚ますと夜の10時頃。風邪の初期症状あり。やばい。薬とビタミンCを飲みベッドに入る。翌日の昼過ぎまで爆睡。

2005.12.22(木)

編集。今回も20本近く回ってしまったのでやばいなと思っていたが、やはりだった。69分弱となった。8分近くは切らないといけないわけだ。またいつものことのくり返し。理想は64〜65分だよなあ。それだと、3、4分切ればいいわけだ。そのくらいが理想。Hシーンだけ切ればちょうどいい感じ。8分となると、Hシーンだけというわけにもいかなくなってくるからつらいのだ。

2005.12.23(金)

荻窪グッドマン。桜井明弘、今年最後のライブ。今年は久々に桜井さんにも2本の映画でお世話になってしまった。池田こずえに提供した曲なんて、実はいい曲だったよなァ。池田がもう少しマトモに歌えてればよかったのにね。

2005.12.26(月)

オールラッシュ。ラッシュ後の再編で、一気に8分切る。61分弱。オッケー。芝居のシーン抜きは2シーンで済んだ。そのうちの1シーンは、ちょっとくやしいところであったけど、ま、仕方がないということだ。
ラッシュ後、辺ちゃんの試写を覗く。面白かった。ピンクとしては文句なしの作品。藍山みなみを佐藤組に続いて見た。すごいコだ。カッコイイ。圧倒的な存在感。久しぶりに上玉を見たね。

2005.12.27(火)

アフレコ。
快調に進行して、今回は珍しく10時くらいに終わるかなと思った(いつもは深夜0時前後というのが、オレの組の平均的なアフレコ終了時間)。
ところが夕方から一気に停滞。はっきり言うと一人の役者のせいだ。個人攻撃みたいになるとまずいのでここではその人をAとしておく。いや〜、怒ったね。久しぶりに。オレだって、もともと出来ない人には怒らない。例えば、幼稚園児になんでカケ算が出来ないんだとは怒れない。習ってないんだからね。でも、中学生がカケ算出来なかったらビックリするよね。要はそういうことだ。
余りにも、芝居とか映画とかなめすぎだよということ。例えは悪いが、芝居を初めてやるようなAVギャルだって、ひたむきにけんめいに喰らいついてくるし、努力もしてくるよ。それをアナタ…。
オレも妥協するわけにも、投げすてるわけにもいかないので必死だよ。
本番テイクを何度かとって、いいとこをミックスさせるみたいなサイテーの手も何度か使わざるをえなかった。
終了、深夜1時過ぎ。
Aはかなり落ち込んでいた。「やっぱり私は役者に向いてないんだ…」なんて言ってね。
オレは言った。「役者に向いてない?アンタね、どっちかっていえば役者に向いてるんじゃないの。声の質とか姿勢とか雰囲気とか他のない人に比べれば全然あるじゃないですか。アナタにないのは、心がまえ心がけというベースそのまたベースみたいなことですよすごく甘く考えていたか、なめてたってことだよね」
A「そんな!…」
オレ「でもね、そんな落ち込むことはないと思うよ。見た人はアナタのこといいと言うと思うよ。だってオレが一応OKしたんだもの。ギリギリ水準まで来てくれなければオレは絶対OKしないから。だから結果的には水準までは来てるはずなので大丈夫だよ」
(このオレの意見は後日ダビングの時に証明された。現場を見てない技師の梅ちゃんも音楽の大場一魅もオレがAのことグチるとビックリして「えー、そんなァ!? Aさん、すごくいいじゃないですか。監督がそんなこと言うと、えー、どうして?って思いますよ」と異口同音に言ってくれたからね)。
終了後、なかみつちゃん、A、春咲いつか、中村さんなどと飲み会。結局朝の8時まで飲む。オレはハイテンションで一度も眠くならず。でもさすがに帰りはつらかったね。

2005.12.29(木)

シネキャビン忘年会。ここ数年定例化した田中スタジオのあけぼの橋スタジオで今年も盛大に忘年会が開かれたのだった。

2005.12.31(土)

今年は年の始めにひとつの目標をかかげた。新作映画を100本、芝居を30本、DVD、CSなどで見る映画を100本、本を100冊読む…というのがその目標。
結果。新作映画62本。芝居15本。DVD、CS150本。本60冊。TVで見る映画以外、その目標にはとどかなかった。
よかったもの。
映画。『ソウ』、『復讐者に憐れみを』、『春夏秋冬、そして春』、『ZOO』、『コントロール』、『サマリア』、『ALWAYS 三丁目の夕日』。中では『復讐者に〜』、『春夏秋冬〜』、そして『ZOO』の中の一編(地下室監禁の話)が圧倒的にすごかった。
芝居。2月に見た鳳劇団『昭和元禄桃尻姉妹』がダントツ。鳳式「演劇の解体」。
TVで見た映画。『浮気な関係』(女優ムン・ソリに出会った。オレのHシーン演出の多大な影響力)。『オールド・ボーイ』。『オアシス』(ムン・ソリがすごい)。『東京物語』(何度目だろう、見るの)。『座頭市血笑旅』(シリーズ最高かも?)。『半落ち』(2度見たけど、原作を読んでから見た2度目に感動。なんで…)。『愛のお荷物』(川島雄三の快作)。
本。乙一につきる。出版されてる文庫本10冊全部読んだ。みんないいが、特にいいのが『暗いところで待ち合わせ』、『夏と花火と私の死体』。他には佐藤忠男の『伊丹万作「演技指導論草案」精読』。これはいわゆる名著です。日本映画100年の歴史を駆け巡るめまいがするほど面白い本。超おすすめです。

2006.1.1(日)

今年もよろしくお願いします。

2006.1.2(月)

昨日今日と大晦日の2大格闘技大会「男祭り」「K−1ダイナマイツ」計10時間を見続ける。2大会通してのオレのベストバウトは、所VSホイス、ですね。

2006.1.4(水)

大蔵映画恒例の社長の御挨拶会。いつもは15分くらいで終わる社長の挨拶がどういうわけか今年は1時間もあった。話のうまい人なので面白いけどね。イキだしね。実はオレ、大蔵の社長のファンなんです。とても魅力を感じる人です。

2006.1.5(木)

五代の息子つぶらが2泊3日でうちにくる。
映画3本見る。
『キングコング』。予告で期待をふくらませていただけに、余りの期待外れにガックリ。特に前半の(コングが出るまでの)無意味で冗漫なこと…許せないね。しょせんこの監督は人間を描こうなんて余計なことしちゃダメなのだ。コングの造形、そして暴れっぷりのアクション演出はよかったけどね。でも、最後泣けないし(なんで?どうして?不思議だ)、やはりダメだね。
『あらしの夜に』。主役の動物二匹を大人の男にしたのが最大のミス。これってホモ映画かよって思っちゃうもんね。やはりあれは子供どおしにするべきだろう。そしたら泣けたのにね。それとも、大人のオスとメスね。どんなに愛し合っても決して結ばれない種同志の愛ということで、悲劇性が際立ったと思うし、それでも離れられない二匹というところで一種崇高な愛までも描けたんじゃなかろうか。
『チキン・リトル』。ほとんど寝てしまった。

2006.1.8(日)

ダビング。一魅の音楽がすばらしい。今回はダビングまでの時間があった分、いつも以上に繊細でシャープでよりすばらしかったのだ。
今回の音楽は、一魅のクリエイターとしての才能、人間としての愛、そして、大いなる遊びごころという三つの要素の見事な、そして美しき結実といっていいだろう。
そういうすばらしい音楽に包み込まれて仕上がった今回の作品がつまらないものになるわけないよね。というか、傑作に思えてきたから不思議だよ。早く見たいよ。
それにしても一魅って才能あるよなァ。
それにしても一魅って歌がうまいよなァ。
それにしてもダビングしていて映画が出来上がってくる瞬間に立ち会っている時ってホンとに幸福な気分に包まれるものだよ。ホント、映画やってよかったなあ…ってね。
ありがたいなあ。