2005.10.24(月)

三軒茶屋中央劇場。韓国映画二本立て『サマリア』『オオカミの誘惑』を見る。
『サマリア』。待望のキム・ギドク監督作だ。『魚と寝る女』『春夏秋冬、そして春』で、圧倒的な衝撃をオレたちに与えてくれたキム・ギドクだ。まさに待望の映画だった。
でもね、この作品、オレにはちょっとつらかったよ。
一人が実行し、一人が見張りをするという二人の少女の援助交際の話から物語は始まるのだが、キム・ギドクが描くと、二人の少女の友情の物語が、一気に悲劇へと、悲惨なストーリーへと転がり落ちていく。そしてその悲惨なストーリーが、悲惨なまま、クールに、そして余りにキム・ギドク的な寡黙さで淡々と描かれていく…。その語り口は、もはや完成形のキム・ギドク・スタイルと言えるのかもしれない。
しかしここには『魚と寝る女』や『春夏秋冬』にはあったものが、ひとつ欠落してるのだ。その何かとは、一言で言うと「カタルシス」だ。
キム・ギドクの作品の最大の特徴は、その「寓話的世界」にあると思う。映画が終わりを迎える時、その「寓話的世界」も閉ざされる。そして、そこに一種の救いが、そして「カタルシス」があっと思うのだ。
しかしこの『サマリア』では、世界は閉ざされていかない。救いがあるかのように見せかけてはいるが、実はここには一片の救いもない。それどころか、より苛酷な現実を暗示して終わる。
つまり、「ちょっと待ってよ」って感じなんだな。見るものを、カタルシスのない、イヤな気分にさせたまま映画は終わるからだ。
どうしてこうなったか?
やはり「援助交際」という余りに現実的なネタから始まってしまったので、「サマリア」「インド人の天使のような娼婦」というキーワードはあるものの、「寓話的世界」には収束出来なかったということなのかな?
でも、ひょっとしたら「寓話的世界」からの脱皮を試みた映画なのかもしれないね。
んー、そう考えると、キム・ギドクの次回作に注目だな。楽しみだ。

2005.10.28(金)

府中のシネコンで『NANA』と『ドミノ』見る。
『NANA』はよかった。予想外の面白さだった。もうひとつ言うと、オレも何本かやってもらってる鈴木一博さんが撮影というのもうれしかった。
『ドミノ』は論外のつまらなさ。実在の俳優ローレンス・ハーヴェイの娘ドミノが賞金稼ぎであったという実話をネタにした映画。いくらでも面白くなりそうなのにな。『マイ・ボディガード』のような例外もあるけど、やはりトニー・スコットはダメだな。

2005.11.2(水)

劇団め組公演『ラ ヴィ アン ローズ』見る。
まずは、め組の持ち小屋という吉祥寺シアターのキレイさに驚く。あんな劇場作るなんて、め組ってお金持ちなんだあ?!
次に、め組の今回の新作に驚く。時代劇専門劇団だと思っていため組の、オレの知る限りは初の現代劇公演に驚く。
時は1945年8月。長崎に原爆の落ちた日。舞台はその日の長崎を描いた群像劇である。
立派な舞台でした。役者たちも初の現代劇ということで、普段以上にイキイキとして見えた。オレはこの芝居、ぜひ全国の中学生くらいのコたちに見てもらいたいものだと思った。原爆の加害者であるアメリカ人を出すことによって、戦争を被害者側から見るだけの単眼的な見方になることから救っているし、戦争というものを考える上での最適な教材になると思うから。

2005.11.3(木)

荻窪グッドマン。桜井明弘ライブ。今回は、オレの新作『乱れ三姉妹』の中で桜井さん作詞作曲による歌を歌った池田こずえが、その歌を引っさげてゲストで登場。ま、それだけのことなんだけど。

2005.11.4(金)

次回作『朝日のあたる家』初稿上がる。

2005.11.5(土)

吉祥寺Bポイント。桜井明弘ライブ、3日に続いて池田こずえがゲスト出演する。

2005.11.6(日)

木の実葉出演の舞台『ファミリー』を南阿佐ヶ谷のかもめ座で見る。

2005.11.8(火)

五代親子とディズニーランドで遊ぶ。

2005.11.11(金)

府中のシネコンで『ALWAYS 三丁目の夕日』と『SAW2』を見る。
『ALWAYS』は次回作の参考にと思って見に行ったので、全く期待もしていなかったのだが、やられてしまった。すばらしいです、この映画。世間では昭和30年代を再現したノスタルジーにあふれる映画と言われているみたいだけど、実はこの映画にノスタルジーなんてありません。あるのは、いつの時代でも変わらない人間の感情、気持。それをたんねんにリアルに描いているのだ。そこにオレは感動した。
それにしてもシネコンはいい。平日行くとどんな大ヒット作でもガラガラ。『ALWAYS』もほとんど一人で見てるみたいなもの。そうなると、よりハマるよね、あの映画。満員の客席で見たら、醍醐味、半減すると思ったね。
『SAW2』はちとガックリ。前作に比べると、大味にはなってるよね。ま、前作がすばらしすぎたんだけどね。前作と比べなければ、2も充分面白いとは思うよ。

2005.11.15(火)

次回作のロケハンで、西日暮里、谷中霊園、上野のあたりを一人で歩く。あのへんって、いいよねえ。

2005.11.16(水)

吉行由実組の初号を見せてもらう。小道具を少し貸したんだよね。ヒロインの女のコが久々の天然巨乳って感じでよかったよ。

2005.11.17(木)

五代と打ち合わせ。

2005.11.21(月)

次回作『朝日のあたる家』決定稿上がる。

2005.11.23(水)

印刷台本上がる。助監督の茂木と打ち合わせ。

2005.11.26(土)

天然工房第十回公演『ぎんなん 雌の木』を見る。新装なったシアターグリーン・エリア171。
役者は充実してるし、話も最近の試行錯誤の中ではいい方だと思うし、楽しい舞台ではあると思う。それは何より、初めて見た人のほとんどが面白かったということが証明していると思う。でも芝居って楽しいだけでいいんだろうか?
最近の天然の芝居を見るといつも思うことだけど、初演の『クーラー』のカンドー、再演の『牛丼屋』の突き抜けた笑い、そこにあったただ楽しいだけってもんじゃなかった。とてつもない楽しさがあったのだ。難しいとは思うけど、オレは2度も突き抜けた楽しさを見てるからな。やはり天然の芝居にはあのレベル以上を求め続けたい。

2005.11.28(月)

森山の「おかしな監督映画祭出品作に出演する。ほんのちょっとだけど久々の出演だ。
それはいいんだけど、夕方に国沢君から緊急の電話が入る。
「明日クランクインなんですが、主演の森田りこが、助監督のケータイに『親が危篤でやれなくなった』と一言メッセージ残して失踪しました。急遽代役を池田こずえに頼みたいのですが、電話番号教えてもらえませんか?」。
ガーン!!だよ。というのは、オレも次回作の主演は森田りこに頼んでいたからだ(ちなみに他の女のコは、池田こずえ、春咲いつかだ)。
国沢君に池田のナンバー教え、オレもあわてて森田にTELしてみた(国沢組は池田が無事に代役やれたそうだ)。
「只今その番号は使われておりません」だって。結局森田はオレの前からも消えてしまった。今に至る(12月8日)何も言ってこない。一言「すみません」くらいあってしかるべきなんじゃないかな。ひどい話だ。
そんなわけで、オレはこれから一週間キャスティングであたふたすることになったのだった。
ちなみにクランクインは12月17日だ。