2005.2.3(木)

目黒シネマで『シークレット・ウィンドウ』と待望の『ソウ』を見る。
『ソウ』は期待どおりの面白さ。老朽化したバスルームで目覚める2人の男。2人の足首には鎖がはめられている。そして2人の間には自殺死体。というシチュエーションからオレは不条理な作品を想像していたのだが、予想に反してこの映画は、痛快まるかじりの娯楽性にあふれたスリラーであったのだ。
いや〜、面白かった。

新東宝から4月下旬公開作品の発注を受ける。サスペンスものでどうですか?ということで、それはうれしいのだが、もう少し早く言ってよというところ。
五代と次回オーピー作品の企画打ち合わせ。前回はSMの120分作品というコテコテのものをやったので、次はちょっと息つぎという感じで、シンプルなものをやりたい。
一応2つのアイデア出来る。ひとつは、ベストセラーの『負け犬の遠吠え』から発想した女3人の話。もうひとつは、シティホテルに連泊してる女が、次から次へと男とやりまくるという話。一体?なぜ?この女は何者?という謎をふくんだ展開のもの。
2つとも非常にシンプル。どっちにしようかな。

2005.2.4(金)

新宿東急で『カンフーハッスル』、武蔵野館で『理由』。
『カンフー』は、まさに「ありえねー」ほどに面白い、パワーにあふれる快作。映画を見て久々に笑った気がする。
『理由』は世間の評判に「?」という感じ。原作小説と比較してどうこうは言いたくないけど、これはあまりにも宮部みゆきの原作がすごすぎてね。オレにはどうしても小説のダイジェストにしか見えなかったのよ。もっと大胆に映画独自のアプローチが欲しかったな。

2005.2.5(土)

deru2のネットドラマ三浦組の打ち合わせ。三浦は助監督をしてる女のコで、オレが言い出しっぺとなった女性監督シリーズの大場一魅につぐ2人目だ。
タイトルは『かたもみ』。これも、不倫をしている女のコの心情がふっとにじみ出てくる、なかなかいいホンなのよ。あとは、ホンの行間をどこまで演出出来るかという監督しだいのホンだ。難しいとは思うけど、楽しみでもある。

タイニイアリスで南船北馬一団の『にんげんかんたん』という芝居を見る。役者は悪くないけど、これはホンが弱すぎた。引っかかってこない芝居だった。

2005.2.6(日)

最近は読書に燃えているのだが(読書が最も安価でハズレの少ない娯楽であるということに思い至ったんだよね)、すごい小説にぶち当たってしまった。
それは、乙一という人を食ったペンネームの若い作家の『暗いところで待ち合わせ』という本だ。全盲の若い女性が一人暮らしをしている家に、殺人の容疑者として追われる青年が隠れ潜むという話。
これはメチャクチャにすごいホンです。絶対ソンしません。幻冬舎文庫、495円です。呆然唖然として深い読後感にひたれます。ひとことで言えば、感動、です。

2005.2.7(月)

新東宝の福ちゃん、脚本の五代と企画の打ち合わせ。『マーニー』プラス『ビューティフル・マインド』の線で行くことになる。

2005.2.8(火)

ネットドラマ三浦組『かたもみ』撮影。キャストは、牧村耕次、鏡野有栖、そして三浦の知り合いの役者さんの3人。
大場組と違って一歩も二歩も引いたとこにオレはいるので、午後に3時間ほど現場を見に行くにとどめる。

夜は、シネキャビンの中村さんと、荻窪グッドマンでの「桜井明弘ライブ」に行く。
桜井さん、相変わらずの好調をキープ。心なしかすごみみたいなものが出てきている。

2005.2.9(水)

ネットドラマ大場組『数える人々』のパート2の撮影。
若干ホンを直してきた部分に、一魅のこだわりを強く感じる。
役者陣、なかみつちゃん、麻白、谷畑くんのコンビネーションも増々快調で、撮影は夜の7時前にとどこおりなく終了。
新宿に出て、なかみつちゃん、一魅、オレの3人だけの打ち上げとなる。

2005.2.11(金)

一魅組『数える人々2』編集。
また傑作がうまれた。「http://deru2.com/」で絶賛配信中!! 見てね。
それにしても一魅の才能にはちょっとうなってしまう。いずれピンクも書いてもらいたいものだ。

2005.2.12(土)

オーピーの企画、結局、『負け犬の遠吠え』路線にする。もうひとつはもっと面白いものになりそうなので、いずれということだ。

2005.2.13(日)

すさまじい映画を見てしまった。
『復讐者に憐れみを』(新宿武蔵野館にて)。
『オールド・ボーイ』で話題のパク・チャヌクが、『オールド・ボーイ』の前に撮った作品だということだ。
ロウア者の青年が、腎臓病で手術が必要な姉のために、少女を誘拐する。身代金を得た青年だったが、弟の犯罪を知った姉は自殺してしまう。一方少女も偶発的な事故のため死んでしまう。少女の死体を前に、その父親は復讐を誓った……というのをメインストーリーに、青年の恋人である革命家の女、臓器密売の闇組織などが複雑にからみあって展開していく物語。
復讐が復讐を呼び、血で血を洗う……まさに終わりなき惨劇のものだかリガ、クールに、ハードボイルドに、畳み掛けるかのような迫力で、すさまじいリアリズム描写とともに、圧倒的に展開する。復讐のカーチェイスとでも言おうか。
その余りの救いようのなさに、一体、コレって何なんだ!?……って感じなのよね。
また、この終わりなき惨劇を描くパク・チャヌクの手法が、余りに特異で際立っているのよ。「映画に文法はない」という小津安二郎の言葉を思い出す。
オレはただただ呆気にとられて見入るしかなかったよ。
実はこの映画のあとで、レイトでやってる『オールド・ボーイ』も見るつもりだったのだが、余りにすごい映画見てしまったので、ちょっともったいないなとなり、パスする。
それにしても、この映画の監督パク・チャヌクといい、キム・ギドクといい、『殺人の追憶』のポン・ジュノといい、韓国映画すごいな。オレにとっての「韓流」は、こっちの方ね。
今の韓国映画のすごさって、映画の表現に対する圧倒的な信頼感からくるのかなあ? 映画というジャンルそのものを信じてるというかさ。そこからあの自信と迫力にあふれた映画が生み出されてくるのかもね。

2005.2.14(月)

オーピー映画の準備をしつつ、連日のように映画演劇通いの日々だ。
下北沢タウンホールにて、主婦劇団FMCの公演『姥神誕生!物語−歌いたいのよ、踊りたいのよ、私たち!−』を見る。
なぜにそのような芝居を見に行ったかというと、10年来の知り合いの女優が一人出ていたから……である。それだけ。
ま、芝居そのものはね、いよゆる主婦劇団のノリのものだし、オレが「演劇」に求めているものとは真逆なのでどうもこうもないのだけどね。

2005.2.16(水)

劇団遊劇社の鳳いく太氏が鳳劇団を立ち上げた。その第一回公演『昭和元禄桃尻姉妹』を新宿タイニイアリスで見る。
これこそオレが「演劇」に求めているものであった。演劇的な、あまりに演劇的な、実に濃密な演劇的空間と時間がここにはあった。
実と虚を行き来するとは、演劇においてよく形容される言葉だが、ここでは、虚と虚を2人の女優が自由自在に行き来するのだ。
いわば「ウソの上塗り」。一体、この芝居はどこへ見る者を連れて行こうとしているの?と、少々不安にもなってくる。
そう、どこへでも連れて行ってはくれない。
「ウソの上塗り」の果て、さまざまな演劇的言語、そして演劇的記憶が飛び交う、そう、いわばブラック・ホールのような暗黒の空間に見る者は放り出され、それでおしまい。
このいわば開き直ったかのような作劇の果てに鳳いく太がやろうとしてることがほの見えてくる。
それは、「演劇の解体」。
鳳いく太は長年に渡り自身の肉体と精神の各部に深く染み込んだ「演劇的もろもろ」から一度自由になろうとしているのではないか?
これは、鳳いく太式「演劇の解体」であり、「第二次鳳いく太」の始まりの儀式であったのかもしれない。
いずれにしても、一年前の初演の時と比べても、はるかに研ぎすまされていて同じ演目とは思えないほど。
二人の女優の体を張った演技がすごい。驚異的なアンサンブルで見る者を圧倒する。
ここ10年くらいの鳳さんの芝居の中でも、最も刺激的で面白いと思った。
鳳いく太よ、どこへ行く?

2005.2.17(木)

目黒シネマで石井克人『茶の味』、ホウ・シャオシェン『珈琲時光』の2本立て。
2作とも、よくもわるくもゆるい映画でね、5時間近くもゆるい映画を見続けるというのは、もうそれだけでかなりきびしいものがあったってわけ。
ただ『珈琲時光』の方の、小林稔侍と余貴美子はよかったね。小林稔侍なんて、こんないい役者だったのかと目を見開かされた。また、余貴美子っていいねえ。『東京タワー』でも寺島しのぶと並んで存在感あったけど、ここでの余貴美子がまたいいんだな。ステキだね。

2005.2.18(金)

佐藤吏の第3作『ハードレズビアン クイック&ディープ』の試写を見る。
前2作と比べても、今回はちょっとうまくいかなかったね。ま、残念な出来であった。

2005.2.19(土)

吉祥寺Beポイントで、桜井明弘ライブ。
桜井さんが、ガンに冒されているという衝撃の告白付きライブであった。

オーピー『負け犬のA・E・GI』(仮題)の初稿上がる。

2005.2.20(日)

劇団超新星『カンナギノチ』見る。銭湯の2階の宴会場という場所は面白かったけどね。

オレが監督する予定のderu2のネットドラマ、大場一魅のホン『タイム・マシーン』でやることになる。
時間がないので(3月2日撮影予定)、さっそくホンをFAXしてもらい、電話で一魅と打ち合わせ。
一読。刺激的で面白い。意表をつく展開で魅力的なホンだ。

2005.2.23(水)

五代とオーピーのホンの直しの打ち合わせ。
4月に新東宝でやる予定のヤツのプロット出来てくる。『マーニー』プラス『ビューティフル・マインド』ってヤツね。
問題は…。上がったプロット、余りに面白いとオレが思えなかった点ね。確かに「マーニー、プラス、ビューティフル・マインド」にはなっているのだけど、今ひとつ乗れないというか、具体的に見えてくるものがないんだよね。簡単に言うと、「あっ、このシーン撮りたい!」というようなね。

2005.2.26(土)

ネットドラマ『タイム・マシーン』スタッフ、キャスト打ち合わせ。
キャスティング。佐々木麻由子、石川雄也とピンクファンにはなじみの役者。
キャメラは志賀ちゃん。さっそく志賀ちゃんから、モノクロでやったらどうかというアイデアが出る。回想シーンはカラー。それによって、血の赤がいきる。よし、決まった。
うまい酒を飲む。

2005.2.27(日)

オーピー『負け犬のA・E・GI』決定稿上がる。

2005.2.28(月)

決定稿、印刷所へ回す。
夜は五代と新東宝の打ち合わせ。

今月のマイ・ベスト。
映画は『復讐者に憐れみを』がダントツね。『カンフーハッスル』笑えた。『ソウ』エンタメだったのね。
芝居。鳳劇団『昭和元禄桃尻姉妹』。
本。乙一の2冊『暗いところで待ち合わせ』『死にぞこないの青』。浜野佐知氏の『女が映画を作るとき』も面白かった。必読です。

2005.3.1(火)

オーピー、印刷台本上がる。助監督と打ち合わせ。

2005.3.2(水)

ネット・ドラマ『タイム・マシーン』撮影。
朝8時新宿集合。午前中はオープンロケ。
山手線、西武線の電車が、朝のラッシュ時ということもあり、引っ切りなしに通る線路脇での撮影。電車の騒音に悩まされる。大げさに言うと、10秒と静けさは続かない。
それから某警察署前でのロケ。こちらはドキドキもの。
オープン、昼前に終了。スタジオへ移動。
病み上がりの麻由子嬢の鼻声は気になったが、役者2人とも緊張感があり、なかなかの感じ。夜7時頃、スタジオ終了。
ナイトオープン一発。
8時頃すべて終了。
9時頃から新宿の居酒屋で、スタッフ・キャスト5人ほどで打ち上げ。うまい酒となったのだった。

2005.3.3(木)

オーピーの公開タイトル決定。
『負け犬OL 毎日が発情期』。なかなかカワイイじゃないか。

2005.3.4(金)

ちょっと必要があって、調布パルコで『誰にでも秘密がある』を見る。宣伝文句に「韓流二大トップスターが贈る、極上のロマンティック・ラブストーリー」とあるように、いよゆる韓流の映画ね。イ・ビョンホンとチェ・ジウというのがその二大スターらしい。『冬ソナ』とか見てないので、オレには全く分からないんだけどね。
そんなわけで、最初はちょっと斜めから見ているとという感じだったのだが、いつしか、この映画に見入ってしまっていたのだった。
なんと高揚感にあふれ、楽しい映画であることか。ゴージャスで明るく楽しい、そして激しさもある、大エンタテインメントです。
つまり、前にも言ったけど、自信にあふれているんだよね。で、なぜに自信にあふれているかというと、映画を信じているからなんだよね。映画というジャンルの持つ表現のすべてを信じているからなんだよね。
ほんと、うらやましいほどの信頼関係が、映画人と映画の間に成立しているんだな、韓国って。
そうそうこの映画、このままピンクになります。ま、そういう含みで見に行ったんだけどね。でもその場合問題なのは、女優以上にイ・ビョンホンのような男優がわがピンクにいるかということでしょうね。ま、竹本くんとか平川くんに頑張ってもらうかな。

2005.3.5(土)

セメントマッチで助監督の中川と小道具の件等、細かい打ち合わせ。
夜は五代と新東宝の件の打ち合わせ。

2005.3.6(日)

笹塚のDuo Stage BBSというところに石動三六氏が旗揚げした劇団玉の湯の第一回公演『猫は災難』を見に行く。
驚いたのは、2、3年前オレの組でデビューした柏木舞が出演していたこと。最近連絡取ってなかったし、もうこの業界からフェイドアウトしたと思っていたから驚いたね。
他には、川瀬有希子だの、元篠原さゆりだのピンクでなじみの顔が多く見れて(石動氏もだね)それなりに楽しめましたよ。
それにしても篠原がキレイに見えたなァ。