2004.8.20(金)

次回オーピー映画『ぼくとダディのできごと』の公開タイトル決まる。『愛のラビリンス』だって。このタイトルって、オレが五代暁子・作詞、大場一魅・作曲で作ってもらって、今までオレの映画で何度か流してる歌のタイトルと同じなんだよね。オーピーの担当者に聞くと、そのことは全く頭になかったとのことで、つまり全くの偶然ね。でもオレ的には、ちょっと笑っちゃいましたね。

2004.8.23(月)

ロケハン。
小平霊園から始めて、メインスタジオとなる三ヶ所、そして、オープンの候補地と都内を見て回る。
今回のロケの目玉は、原宿は竹下通りにあるエルビス・プレスリーのグッズ専門店「ラブ・ミー・テンダー」の店前でのロケね。多分に個人的な思いが強いが、キャメラマンの志賀ちゃんが、ラブ・ミー・テンダーを見るやいなや「ここだよ、ここがいいよ」と言ったことでもあるし、やはり、そのシーンのシチュエーションとしては最適の場所なんですね。店長のOKも取り、今からワクワクものです。
オレのこの日記で今までに何度となく登場している「原宿ラブ・ミー・テンダー」だけど、今回初めてスクリーン上に登場するということになったのだ。とにかくうれしい。
ロケハン終了後は、久々、ホント何ヶ月かぶりでか阿佐ヶ谷のジャズ・バー「スターダスト」に顔を出す。ママも増々元気になってるようで、これもうれしかったね。

2004.8.24(火)〜26(木)

コンテ。

2004.8.27(金)

役者の打ち合わせ。
今回のキャスティング。主役に森健人くん。本職はヘア・メイク、スタイリスト、モデルという人。映画出演は初めて。さすが衣装プランはすばらしい。まかせておけばいいという感じ。でも芝居は…。こればかりは初めてだし、ちょっと苦労しそうだ。綱島渉くん。Vシネやピンクには何本か出てるそうだが、オレの組は初めて。このコのことは、今回だけではなく、長いスパンで考えてみたいなと…そういうコ。他には、牧村耕次、本多菊次朗、横須賀正一、神戸顕一とレギュラー陣。そして紅一点で紅蘭。オレの『欲求不満な女たち』でSM嬢役で出演してくれた人ね。オーピーから、次は主演で考えてもらっていいですよと言われているので、オレとしてはひとつのテストパターンね。なんせ前作は、彼女のキャラ通りの役だったので、それとはちがう、自分とは違うキャラを演じるということにどの程度の対応力があるのか見たいということね。そしてもう一人、オレが久々に重要な役で出演する。ホンネでは出たくないのだが、オレのかわりがいないということと、予算的な問題で久々に出ることにする。
以上です。オレの作品にしては出演者は少な目で、非常にタイトな感じです。
打ち合わせ後は、シネキャビンに移動しての飲み会に突入したのだった。

2004.8.29(日)

森健人、綱島渉、紅蘭を集めて特訓。この3人がやはり一番心配なので、出来るだけやっておこうということね。

2004.8.30(月)〜9.2(木)

コンテ。合間を抜って、原宿ラブ・テン、高円寺のバー「一平さん」と再度見て回る。

2004.9.3(金)

スタッフ打ち合わせ。最終的なコンテの確認ね。現場ではどう転んでいくか分からないけど、一応コンテの確認をしておかないと不安だし毎回やってるというわけ。でもね、いつも思うけど、こうしてやっててもコロコロ変わっていく瞬間があってね、それが何より面白いというかね。現に今回も、撮影の志賀ちゃん、助監督の佐藤から色々と意見が出てくるわけだよ。そこがまたオレが悩んでたり迷ってたりしてるとこだったりするわけね。そうなると、「そこだよ、そこ、何かない?」となって、みんなで知恵をしぼりあうという展開になっていくというわけね。それによって、コンテがガラリと変わってきたりしてね、そういうことがとても楽しいというわけ。みんなでひとつのことに向かっているんだなと思える時がね。ま、そういうところに、映画という協同作業の醍醐味があるというかね。オレなんかそういうことでテンションがまたひとつ上がるし、現場が待ち遠しいという気分になっていくというわけね。

2004.9.4(土)

クランクイン前日。
ちょっと時間が出来たので、前から見たかった『真珠の耳飾りの少女』を下高井戸シネマで見る。美術、撮影と圧倒的にすごい。役者も少女役のスカーレット・ヨハンソン、天才画家フェルメール役のコリン・ファースとこれまたすごい。でも、それだけの映画。アメリカ映画がSFXに走るように、ヨーロッパ映画は美術に走る。そして一番カンジンの中味が忘れさられていく…ということね。なんかむなしい。
最近の一般作で、ホント手応えのある、ホントに面白いという映画に出会うこと難しくなってるなと思うしだいだ。ピンク3本立ての方が楽しいこと多いよ。これ、ホント。

2004.9.5(日)〜7(火)

オーピー映画『愛のラビリンス』撮影。
最も重要なことのひとつ、天気は3日間とも降水確率70パーセント以上と、悪い。3日間とも午前中はオープンロケの予定。台風も来ているし。少し不安。でも、いつものことさ。何とかなるだろう…と、いつものごとく思ってる。

初日。
たまに小雨がパラつく空模様。午前中は、原宿でのオープンが2シーン。2シーンとも主役の佑介(森健人)と、佑介をしたうマコト(綱島渉)のシーン。
路地裏での2人の歩きながらの会話のシーンからスタートしたが、いきなりアチャ!
2人ともシロートのしゃべりなのだ。顔が死んでる。声が死んでる。ま、2人ともシロウトと言えばシロウトなので仕方ないと言えば言える。それにしても…。いきなり口を大きく開いて、顔面の筋肉をリラックスさせる訓練から入った。演劇の養成所じゃないっての。先が思いやられる…。
路地の次のロケ地。ここは今回の撮影のハイライトね。オレが年中行っているELVISグッズ専門店『LOVE ME TENDER』の店先を借りてのロケなのだ。店長も開店時間の1時間以上も早く来て店を開けてくれるし、『LOVE ME TENDER』全面協力って感じね。店長、ありがとう!とにかく、ロケハンの時、キャメラの志賀ちゃんがこの店を見た瞬間「ここがいい! ここしかないよ!」と言ったくらい絵的、またストーリーの内容的にベストのロケーションなのだ。(エルビスに、ロックに、興味のある人もない人も、一度ぜひ行ってみるといい。竹下通りを入ってクレープ屋の角を右に入ってすぐのところにある。)
ラブテン前のロケも何とか終え、東中野のスタジオへ(移動中から雨がザンザン降ってくる。でもオープンは終ったもんねェ。ラッキー!)。11時前には入る予定でいたが、すでに昼。1時間以上も押してしまった。
スタジオでは全部で8シーン。少ない。しかし、そのうち3シーンがHシーン。今回は全部で4回あるSEXシーンのうちの3回がここに集中しているのだ。イン前から、かなりウンザリしてはいたけど、ま、仕方ない。ガンガンやるか。
Hシーンでのハイライトは、ベテラン俳優牧村耕次のフェラチオ・シーン。
うまいのだ! 思わず「真紀ん、うまいね!」。マキん「初めてですよ!」。
それはそうかも…だけど、それにしてもうまい!
それにフェラチオ以外にも、芝居が安心。森、綱島と、ヘタクソ2人相手にイライラしてるとこに牧村耕次が登場するとホッとするよ。(森クン、綱島クン、怒んないでね。ヘタなのは事実なんだから。でも森クンはなかなかカンはいい。)
終了。夜11時半。目標11時だったので、ま、いいかって感じね。
からみを3シーン撮り終えたのにもホッとする。かなり流してしまったが、そこはオレのH演出、ちょうどいいアンバイかもね。

2日目。
この日もオープンから。四谷三丁目近くのビルの屋上でワン・シーン。雨模様だが…。
オレと紅蘭のシーン。
オレは今回は久々に準主役の役どころで出演。主役の佑介の父親役だ。
紅蘭はオレの前々作『欲求不満な女たち』でのSの女王様役が強烈だった人ね。
ここで簡単にストーリーを。佑介は父親との2人暮らし。母親は佑介が幼い時に死んでいる。佑介はゲイである自分を父親にカムアウトできずに少し悩んでいる。父親は父親で若い愛人がいるが、そのことを息子に言えないでいる。そういう男の親子2人のお話ですね、今回は。
で、紅はオレの恋人役ね。
屋上のシーン、さっさと終らせて、10時くらいには高円寺のバーに入る予定であったが、以外というか、ビックリするほどこのシーンに手まどってしまう。
紅蘭だよ。彼女は前作なかなかいい感じで、オーピーからも次は彼女主演で何かと言われてたので、今回はそのテストというか、前回みたいな地に近い役でない時、自分ではない人を演じるという時、彼女ははたしてどの程度の力量があるのかを見たいということで、今回彼女にキャスティングしたというわけさ。
ところがだよ…。
いや、もう何も言うまい。
悪いのは、オレ。キャスティングしたオレが一番バカだ。結果的に彼女の自信はなくさせるは、オレの映画の足を引っぱられるは、とロクなことはなかったが、すべてはオレが悪いのだ。ああ、悲しいね。あの役は、だれでもよかったのだ。だれでも喜んでやるような役なんだから。からみはないは、芝居どころはいくつもあるはで、ピンクで芝居に目ざめた芝居したい女のコたちにとってはサイコーにいい役と言える役だったのだ。
ああ、バカバカ、オレの大バカヤロー!
何も言うまいと言いながらグチってるな。
トホホ…だよ。
というわけで、高円寺のバーのセットに10時くらいには入れると思ってたのが、何と昼近くになってしまったのだった。
バーではけっこう重い芝居場のシーンが4シーンもあり、バーのケツもあるし、うちらもそのあとはホテルがあるしで、6時から7時くらいには出るつもりでいたが、結局、バー出たの8時半すぎ。ずい分まいたのだが、ま、仕方がない。
バーでは、神戸クンにホッとする。さすがダテにオレの映画80本以上出てないよな。さすがです、神戸は。
シティホテルに移動。3シーン、うちひとつがHシーン。
今回の映画の全4回ある中での撮影では最後のHシーン。
このHシーンはリキが入った。今日唯一のHということと、本多菊次朗の今回唯一のHシーンであるということでね。
クランクイン前から、オレはこのシーンには燃えていたのだ。
いやあ、楽しかったね。本多が思っていた以上によかった。彼もオレの映画、これで14本目になるんだよね。確実にオレの思いを表現してくれる役者になってきてくれた。オレの思いって何かをカンタンに言うと、Hシーンで手を抜くなということね。
Hシーンになるやいなや、芝居のシーンとあきらかに変わる俳優が多い。手を抜くというか、気が入らないというか、これは別というカオになるというか…つまり、カンタンに言うと、いきなり気どっちゃうんだよね。
冗談じゃないよ。Hシーンこそ全力でやらないで、なんでピンク映画に出るのよ!?
ピンクをなめんなよ!
そういう俳優が多い。
本多菊次朗もそういうヤツだった。ま、彼の場合は、にめてんじゃなくて、Hシーンの表現スタイルがひとつしかなくて、それでよしとしてたって感じなんだけどね。つまり、知らなかったのね。そして、知る必要がないと思っていたのね。
しかし、今や彼は、Hシーンも芝居のシーンと同じテンション、気持ちでやるようになってきた。
いや〜、今回の本多菊次朗のからみはサイコーの出来です。
本多くんもフェラがうまいんだよ。もちろん彼も初めてと言ってた。牧やんといい菊ちゃんといい実にフェラがうまい。いい!
でもコレあたり前。つまり、役者だったらね。役者なら、初めてやるフェラもうまくてあたり前だ。想像力と表現力があれば初めてでも実にリアルにうまく見せてしまうということね。
終了、撤収、深夜2時。入り時間考えるとかなり早く終った。つまりノッてたということね。

最終日。
まずは、小平霊園でのオープンから。台風が来てるということで今日も天候が安定しない。雨と雲、そしてたまに晴れ間。風の流れが早い。
イン前から、この日だけは雨が降らないで欲しいと思っていたが、さて、どうか?
現場に着くや、雨は上がり、たまに晴れ間も見えてきた。なんたるラッキー!
結果、今回の撮影で唯一、太陽が出たシーンとなったのだった。そしてそれはラストシーンだったのだ。ものすごいツキというしかない。
昼から大泉のスタジオ。
親子の重い芝居場を中心に7シーン。
終了撤収、深夜3時。

結局今回も、連日雨で台風まで来ていたのだったが、結果的には雨にはたたられず、一番欲しいところではお日様まで出てくれる…という、最もありがたい展開となったのだった。

2004.9.10(金)

編集。64分代という、最近では最も短くつながる。とりあえずホッとする。

2004.9.11(土)

三軒茶屋シアタースパークで『タイガー』という芝居見る。いきなり樹かずから芝居見て下さいという連絡があり、急遽駆け付けたというわけ。
何も言うことなし。
あわてて駆け付けた自分をうらみたくなるような芝居だった。一言だけ言うと、樹がなんであんなのに出たのか(客演)、そして、何でオレを呼んだのか、それだけは聞いてみたい。

2004.9.12(日)

オヤジの墓まいり。

2004.9.13(月)

オールラッシュ。ラッシュ後の編集で一気に60分代になる。こんなにラクな編集、いつ以来だろう?と思うほど久しぶりにラクだった。

2004.9.15(水)

新宿タイニイアリスで、「IQ150」という劇団の『浮人形』という芝居を見る。
この変わった名前の劇団、何でも仙台を根じろに活動してるという集団で、今回は「アリス・フェスティバル2004」参加作品ということらしい。
なかなか見応えのある芝居であった。
舞台は、とある田舎の一軒の農家。そこに都会ものらしい若いアベックが突然やってくる。ドライブ中に車が故障したところを、この家の長男に助けられたという。その日は、8月13日。盆の入り。久しぶりに賑やかな夕食をすませた家族たちの団らんが、見知らぬアベックの出現をきっかけに、いつしか13年前の出来事を浮きぼりにしていくことになる。家族それぞれのかかえる心の闇。口をつぐんでいた記憶の扉が開かれ、ひとつひとつの謎が浮き上がり、ときあかされてゆく…。
という話。どう、十分魅力的でしょ?
とても演劇的というか、幻想とリアリティの交錯、せめぎあいの中から浮かび上がってくるひとつの真実の像…。
とても堪能出来ました。こういうのを演劇というのです。
ただひとつダメをつけるとしたら、作者たちの思い入れが強すぎるせいか、表現にちょっと過剰な部分がありすぎるかなとは思った。つまり、くどいのだ。特に音楽の部分にそういう感じを強く抱いた。ちょっと酔いすぎじゃない?と思うくらい音楽が鳴りひびく。音楽自体はすばらしいと思う。しかしそれがずっと過剰に鳴りひびきすぎると、演劇から逆に離れ、安っぽくなっていくように思えるのだね。特にあの唄なんか全くいらないとオレは思った(その唄って作者の創作の糸口になったってヤツなんだけどね)。作者たちの創作の糸口を聞かせる必要は全くないと思うのだ。それはしまっておいてよ。
とまあ、少し批判的になってしまったが、作・演出の丹野久美子さんという方と、変わった劇団名はしっかりオレの中に入り込んで来た。また見たい。

高円寺で、一魅と音楽の打ち合わせ。
撮影で借りたバー「一平さん」で朝まで飲んでしまう。