2004.4.21(水)

オーピーの次回作のプロット上がる。次回は会社の注文で、女性のタクシードライバーものをやってくれということで、一時は日本海、佐渡島まで行くという壮大なロードムービーを夢想したものだが、冷静に色々と現実的に考えてみると、とてもピンクの予算ではムリということで、だいぶ規模を縮小したものが上がってきた(脚本・五代暁子)。
今は色々と悩んでいる。

2004.4.22(木)

シネマミラノで韓国映画『殺人の追憶』見る。こういう映画を傑作というのだろう。見事に面白い。まいった。もう一度見たいと思わせる数少ない映画だ。
これに比べると、新宿東急で見たデイゼル・ワシントン主演のサスペンス『タイムリミット』の楽天性が際立つというものだ。よくも悪くもハリウッドの映画。見てる間はそれなりに楽しいが、見終った瞬間から風化が始まるという。ついこの間までは、この手の主役って白人の大スターがやっていたものだけど、今やデイゼル・ワシントンというアカデミー賞スターが当たり前のようにやる時代になってきたんだなァ…という感慨めいたものはあるけどね。シドニー・ポワチエ主演の『夜の大捜査線』も今は昔か…。去年だか、このポワチエの映画、CSでやっていたので何十年ぶりかで見なおす機会があったが、今見ても充分「夜の熱気の中で」(ちなみにこれ原題ね)展開する物語に感情移入でき、非常に面白かった(ポワエチと対立する田舎の警察署長のロッド・スタイガーが、これまた絶品の演技ね)。

2004.4.24(土)

久しぶりのCOA(怖)のライブ。歌舞伎町マーブル。
今回は、COAをオレに教えてくれたオレの旧友長谷川も十数年ぶりに東京にやってくるというオマケつき。(長谷川って、オレの三十数年前からの知り合いで、彼が二十数年前に田舎の姫路に帰ってからもテキトウに連絡とっていた。オレが二十年くらい前に姫路に遊びに行った時に、長谷川が経営するレンタルビデオ屋でバイトしてた高校生が柴原ね。柴原はほどなく東京へ出て来て、ピンク、AVの助監督をやり、92年に『ほんとうの空色』(ENK)でデビューした)。
そんなわけで柴原も顔を見せ、他にはCOAとはなじみの後藤大輔監督、オレ、長谷川の共通の旧友・伊井くんも顔を出し、ライブのあとは飲み会となったのだった。
伊井一郎くんは、去年『女創一代・中野弘子伝』という本を新宿書房から出したライターね。この本、オレも読んだけど、はっきり言って面白いです。誰かがやらなくてはいけない、でもその誰かはなかなかいないという大衆芸能に関するホントに貴重な文献です。心ある人にはぜひとも読んでもらいたいものです。これはなにもオレが身内だから言ってるんでなく、ホント面白いということと、これを読んで、今のうちにピンクの歴史をたどってみようじゃないかという奇特な方の出現を待ち望んでいるということもあります。小林悟監督は亡くなりましたが、多くの人は今だバリバリです。誰かいませんかね、あえて労作に挑む人が。オレはもちろん全面的に協力しますよ。ちなみに、出演作の台本500冊、ビデオ100タイトル、監督作の台本80冊、ビデオ80タイトル…あります。それなりの資料にはなるでしょう)。

2004.4.27(火)

三本撮りの初号試写も終わり、光音座も終わり、新文芸坐も終わり、COAも終わった…そのせいか、日曜から熱が出てきてどうやらカゼのようだ。そんなわけで珍しく3日間外出もしないで、酒も飲まずにビデオばかり見ていた。十数本見たけど、一言言わずにはいられない傑作が何本かあり。一言づつ言わせて下さい。
『ヘブン』。『デカローグ』のキェシロフスキ監督の遺稿脚本を『ラン・ローラ・ラン』の監督が撮ったという作品。女が私怨である男を殺そうと計画する。その計画は完璧なはずであった…。ところが…日常ではよくある、タイミングのほんのちょっとしたズレで男は死なず、全く関係のない人間がたまたま偶然に巻き込まれ4人も死んでしまう。しかもそのうちの2人は子供であった…。という導入部から、この映画はたまらないほどせつなく、かつ厳しい。この映画の導入部にはもうひとつの仕掛けがあり、ラストシーンでその仕掛けの意味があかされる時、しかもその意見がタイトルの「ヘブン」を指し示すと分かる時…余りの感銘で、たぶん映画館で見てたら、しばらく席を立てないんじゃないかと思わされた。せつなくて悲しいけど、同時にとてつもなく幸福でもあるという画期的なラストシーンであった。
この映画にはサミュエル・フラーのあの言葉「映画は戦場のようなものだ。一言で言えば感動だ」…をささげよう。
『トーク・トゥ・ハー』。この映画もアルモドバルの話術の芸というか、語り口の巧みさには圧倒された。なんて人間って悲しい存在なんだろう、なんて人生ってせつないんだろう……でもね、捨てたもんじゃないかもね…という一瞬の希望をのせて映画は終わる。
酔った。すばらしいです。
『過去のない男』。アキ・カウリスマキです。「捨てたもんじゃないぜ」といえばこの人。この監督ほど「人生、捨てたもんじゃないぜ」ということだけを語ってきた人もいないでしょう。この映画もまた見事にカウリスマキの映画だった。あの愛想のなさ…それこそカウリスマキ節、というか、いつしか乗せられ、はめられ、感動させられてしまっている。不思議な監督だ。(オレは個人的にカウリスマキの語り口に非常な興味とあこがれめいたものをいただいている。オレも、カウリスマキのように余分なものをすべてはぎ取ったかのような映画を、愛想のない映画を、でも、それでも見るものは感動させられてしまう映画を、いつかは撮ってみたいものだね。
酔った。すばらしいです。
…と、みなさんよくご存知の作品を3本並べてみたが、次はどうだ。
『フォーン・ブース』。見てる人は少ないと思う。前3作はすべてヨーロッパ系の映画であったが、これはちがう。これはアメリカの映画だ!
映画の導入部とエピローグを抜いた全てのシーンが、マンハッタンのド真ん中の公衆電話ボックスだけで展開するサスペンス。
これは見事。みごとに面白い。ビックリした。ホント面白いだけの映画を見たい人は絶対見るべき、必見の映画だ。
この映画にも、サミュエル・フラーの言葉をささげよう。「映画は戦場のようなものだ。…一言で言えば感動だ」。

2004.4.28(水)

五代暁子と打ち合わせ。体調すぐれないが、4日ぶりに酒を呑む。

2004.4.29(木)

下高井戸シネマで『ジョゼと虎と魚たち』。「ジョゼ」「虎」「魚たち」というタイトルの意味が分かるたびに、より劇的な感興をそそられるという珍しい経験をさせてくれる映画。最近見た日本映画ではサイコー。文句なしです。

ついでに下高井戸シネマでレイトショー。『10ミニッツ・オールダー イデアの森』見る。8人の監督によるオムニバス・フィルム。見ているうちに叫びそうになったよ。「たのむから、ゴラクをしてくれェー!」。一体何なんだろう、この映画のあまりの退屈さは。さすがにゴダールだけは、自分の過去の作品の断片のみをコラージュしていくというトンチの利かせかたで、思わずニンマリ。楽しませてくれましたけどね。

2004.5.1(土)

中野武蔵野ホールにおけるオレの特集の第一日目。
夕方4時、シネキャビンの中村さんと井の頭公園で会い、ビールと焼き鳥で気分を高める。
19時から、吉祥寺Be・Pointも。もはやオレにとっては「恒例の」と言える桜井明弘氏とAサーキットのライブ見物。相変わらず楽しいライブ。今回は中村さんが来てくれたけど、いつも思うのは、勿体ないなあということ。ここにはいつもこんなに楽しいものがあるのになんでお客が少ないんだろう…勿体ないなあ…。
で、満を持して、深夜11時半からのオレのオールナイトへくり出す。
まず一発目は、『不倫妻の淫らな午後』から。これは、来てくれたゲスト10数人も一緒になって見る。
次にいよいよトークショー。一応30分と言われていたが、面白ければ1時間くらいやってもいいじゃんというつもり。どっちみちオールナイトだしね。で、きっちり1時間やる。
ゲストは12人か。女優が少なくてね。水原香菜恵、色華昇子、水子ちゃんのみ。あとは男優陣が神戸、樹かず、本多菊次朗、松木良方。スタッフでシネキャビンの中村さん、梅ちゃん、音楽の一魅、脚本の五代、監督の森山。
司会は、おなじみの松島政一氏ね。
みなさん、どうもごくろうさんでした。
客数は40数人とのこと。キャパ70人の小屋だし、まあまあじゃない。
二発目『超いんらん 姉妹どんぶり』、三発目『花嫁バイブ淫行 えぐる』の間は近所で打ち上げ。四発目の『OL性告白 燃えつきた情事』の途中から小屋にもどり、最後は全員での客出しとなったのだった。

2004.5.4(火)

オレの特集第二夜。進行は第一夜と全く同じ。一発目で『猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!』。次にトークショー。二発目『美人秘書 パンストを剥ぐ』、三発目『好き者家族 バイブで慰め』の時に打ち上げ、四発目の『コギャル・コマダム・人妻・美熟女 淫乱謝肉祭』の時にもどってみんなで見る。
ゲスト。本日は女優デー。佐々木麻由子、望月梨央、柏木舞、持田さつき(次回作のヒロインね。新人)、華沢レモン、紅蘭、色華昇子、水子ちゃんと8人もくる。他には新東宝の福ちゃん、石動氏など。司会は、今や「ピンク界最強の司会者」と呼びましょう、松島政一氏。
みなさん、どうもごくろうさまでした。
今日は、一発目と四発目を見る。ホントは全部見たかったけど、やはりそうもいかないというかね…。
一発目では、確実に客をつかんだのが見えた。オレも2年ぶりに見たが、われながらこんなに面白い映画だったのかと驚く。
四発目は、今回の中での唯一の監督=主演作だったし、もう8年前の映画だし、なんとしても見たかったのね。やっぱりいい映画でした。今やこんなに女優が7人も8人も出てくる映画撮れないしね。当時は金にいとめをつけないで撮るということがまだ出来たってことですよ。
客入り、初日より多かった。オレ的には大成功と言いたい。
こうしてオレにとっては実に感動的であった二夜は無事に終わったのだった。
来てくれたお客さん、ゲストのみなさん、武蔵野ホールの方々…みなさんに感謝したいと思う。
終了後、キャビンの中村さんが中心となって、打ち上げをする。結果、午前10時頃まで飲んでいたのだった。

2004.5.5(水)

次回オーピー『誰もいない海へ』(仮題)初稿上がる。

2004.5.7(金)

テアトル新宿で『きょうのできごと』見る。オレはこの映画ダメであった。『ジョゼ』ではあれほど魅力的であった妻夫木くんと池脇嬢のつまらないこと。つまりそういうこと。

2004.5.9(日)

五代と台本の直し。

2004.5.10(月)〜13(木)

ほとんど家にこもる。
次回作のプランニング、ビデオで映画、読書の日々…。猫が喜ぶ。

2004.5.14(金)

オーピー、決定稿上がる。公開タイトルも決まる。『人妻タクシー 巨乳に乗り込め』。お忘れなく。

2004.5.15(土)

決定稿、印刷屋へ入れる。
新宿ピカデリー2で『キル・ビル2』。破天荒だった第一作と比べると、ぐっと哲学的な趣になっている。ま、遊んで下さい。どうも最近のタランティーノは金持ちの道楽という感じがして好きになれない。ホントひがんじゃうよ。

2004.5.17(月)

演出部、キャメラマンの志賀ちゃんと一回目の打ち合わせ。クランクインは30日だ。
タクシーものなので、車の中のシーンが多く(当たり前か)、今から気が重い。

2004.5.18(火)

オーピー映画の前作『欲求不満な女たち −すけべ三昧−』が大蔵映画の監督賞となり、金一封をいただきに目黒本社まで顔を出す。
そのあとは銀座に出て映画を2本見る。
シャンテで『永遠の語らい』。
みゆき座で『スクール・オブ・ロック』。
とりたてて言うことも、なし、か。

2004.5.20(木)

新宿プラザで『ホーンテッド・マンション』。なんてつまらない映画だ。ほとんど寝てしまう。
大場一魅と打ち合わせ。一魅と話してた方が何百倍も面白い。

2004.5.21(金)

次回作『人妻タクシー』ヒロイン、持田さつき嬢と打ち合わせ。

2004.5.22(土)

ロケハン。久しぶりになつかしき九十九里浜の大東崎灯台の方まで行く。『痴情報道』の時に行ったところだ。今回もまたそのあたりでロケをすることになる。夜になり都内にもどり、スタジオでのロケハン。終了、深夜の12時過ぎとなる。

2004.5.26(水)

役者・打ち合わせ。今回はほとんどと言っていいくらい、主役の牧村耕次と持田さつき2人の映画。だからオレの組の打ち合わせにしては珍しく役者は2人のみしか呼ばない。
持田嬢、なかなかいい。期待出来る。

2004.5.28(金)

演出部・志賀キャメラマンとコンテ打ち合わせ。

2004.5.30(日)〜6.1(火)

オーピー映画『人妻タクシー 巨乳に乗り込め』撮影。