2004.3.21(日)〜23(火)
オーピー『欲求不満の女たち すけべ三昧』撮影。
今回の三本撮りの最後の作品。
初日。
まずは西新宿の神田川周辺でのオープン・ロケから。
今回の作品は一応オムニバスで3人の女の行動と生活をバラバラに追っていくもの。3人の女に接点らしい接点は全くないが、ラストシーンで一瞬だけすれ違う。そのカットがうまくいくかどうかが作品の成否の大きな分かれ目になる。
オープンではそのシーンを中心に9シーン撮る。いたって順調で午後の1時過ぎには全て終了。
2時頃から某シティホテル。
今回はオレも久しぶりにHシーンもある役で出演しているが、ホテルでは、オレと華沢レモンちゃんとのHシーンを中心に5シーン。
終了。夜の8時半。早い!予定通りと言えばそうなのだが、めったにこんなに早く終わることないのでとまどってしまうよ。
オレとレモンちゃんのからみは濃厚でリアルでなかなかのものだと思うよ。
それにしてもレモンちゃんはいいなあ。オレの作品は今回で2回目の登場だが、年内になんとか主演作を撮ってあげたいものだ。オレの予想では、そうすれば新人賞確実という感じだ。次回作でそういう企画を考えてみたい(後日、オーピーの次回作、会社の注文で女のタクシー・ドライバーものとなる。よって19歳のレモンちゃんでは「?」となり、主演作とならず。やはりタイミングだよね、こういうことって)。
終了後は、オレはそのままホテル泊。翌日の朝一がまたホテルからなのだ。
すぐ寝ればいいものを、コーフンしてるせいか、いつものように夜中の2時、3時までダラダラと酒を呑んでる。台本も少しは開いたりはするが結局は何もしてないんだよね。ハッと気づいたら、ソファに座ったまま寝ていた。あわててベッドに入り爆睡。
2日目。
朝の7時、ホテルの部屋集合であったが、今日のヒロインの佐々木麻由子を始め、スタッフキャスト、6時半過ぎには続々とやってくる。やはり前日が早く終わったのでみんな体がラクというのもあるのだろう。
まずは、麻由子と樹かずのからみ。2人ともうまいので快調なテンポで進んでいく。
それから、今回がオレのヤツ初出演となる野村貴浩と麻由子のひと芝居など全部で3シーン。お昼前に終了。
野村くん、いいねぇ。声がいいし、芝居に力があるし、カンがいい。すっかり気に入ってしまったよ。
午後からは、オープンを二つこなし、大泉のスタジオへ。
麻由子のダンナ役に石動三六、娘役に川崎ラン子(かわさきひろゆきの娘)のキャスティング。
親子のシーン、主婦の日常シーン、麻由子のオナニーシーンなど8シーン。
終了、深夜0時。今日も早い。
二日続けて0時を回らないなんてほとんどないことだから、予定通りとはいえ、とまどいも大きい。
最終日。
9時という遅い集合時間。
朝一ではオープンの予定だったが、雨が小降りに降っている。そんなわけで昼から入る予定だったスタジオに入り、スタジオのシーンを撮りつつ様子を見ようということになる。
今日は新人の紅蘭の日(ちなみに、レモンは17歳の女子高生役で援助交際をしている。麻由子は36歳の主婦で、日常のむなしさから出会い系サイトにはまる。紅は29歳のSの女王様という風俗嬢。6歳になる息子がいるが施設にあずけている…という三者三様の女たちの日常を追ってゆくというのが今回のテーマ)。
午後になり雨が一応上がったのでオープンに出る。あるカットだけは前後のつながりから日が出て欲しいとこだったのだが、ぜいたく言ってられない。雨が上がっただけでもラッキーと思わなくては。ところが何と、その「あるカット」の時にだけ一瞬日が出たのだ。なんたるラッキー!
今回も傑作になるにちがいないという確信を持つ。
五代暁子の息子つぶらが紅の息子役で出演。とにかく可愛いです。
スタジオ、オープンで10シーンを撮り、またもや、某シティホテルへ。夜の8時頃だったか。
SMシーンを2シーン。紅嬢、さすがに本職だけあって水を得た魚ね。
紅蘭にも期待するね。キレイだし独特の雰囲気ある。真面目だし、この人とはまたやりたいものだ。ただ、ガラ的に役柄がある程度限定はされてくるのは仕方ないか。
終了、明け方の4時。
総じて今回の撮影、体力的にはラクなはずであったのだが、疲労感はいつもと一緒でグッタリと疲れる。やはり時間の問題ではないということか。
でも、非常に手応えを感じている。
2004.3.24(水)
久しぶりに映画を見るか。でも疲れているので気楽に見れるヤツがいいなと思い、ミラノ座で『レジェンド・オブ・メキシコ』。
ほとんど寝てしまったよ。でも寝ながらちっとももったいないとは思わなかったので、たぶん退屈な映画なのだろう。
2004.3.25(木)
オーピー『欲求不満な女たち』編集。66分強で上がる。5〜6分のカットが必要。
またも映画を見に行く。歌舞伎町オデオンで『テキサス・チェーンソー』。トビー・フーパー版のこの原型を見た時の衝撃は今だに忘れられないが、はたしてこのリメイク版はいかがなものか?
またもやおそいかかる睡魔を必死にふり払いながら何とか最後まで見ることは出来たが、トビー・フーパー版ほどの衝撃はなかった。当り前か。
2004.3.26(金)
オーピー作品オールラッシュ。これ、かなりいいんじゃないの…と思った。
またも映画。新宿プラザで『マスター・アンド・コマンダー』。そして、またも眠ってしまう。やはり一ヶ月で3本も撮ったという精神的肉体的な疲労感は抜きがたくオレの全身をおおいつくしているということか。
2004.3.27(土)
中野武蔵野ホールへ行き、I氏、K氏に会う。
実は5月の1日と4日に武蔵野ホールでオレの特集をオールナイトでやってくれるということになり、今日はその打ち合わせというわけ。
そうなんです。5月1日そして4日にそういうことになったんです。ここはぜひみなさんに来てもらってなんとか盛況のイベントにしたいものです。
両日とも夜の11時半開始。両日ともにオレ、他ゲストによるトークショーあり。
プログラム。1日。
『不倫妻の淫らな午後』(オーピー)。昨年度のPGベストテン2位の作品。牧村耕二と佐々木基子の演技が評判となりました。
『OL性告白 燃えつきた情事』(02・新東宝)。佐々木麻由子の、とりあえずの引退作でした。泣けます!
『超いんらん 姉妹どんぶり』(98・国映)。私の唯一のベストテン1位作品です。やはりこれを出さないわけにはいかないでしょう。このタイトルからは全く想像つかないでしょうが、バンパイアの話です。この機会にぜひとも見て欲しい一本です。
『花嫁バイブ淫行 えぐる』(98・オーピー)。小津安二郎『晩春』のパロディです。けっこう笑えると思います。
4日。この日はバラエティ色重視です。
『美人秘書 パンストを剥ぐ』(97.オーピー)。プロローグとエピローグ以外は全てホテルの一室のみで話が展開するという一種の実験劇でもあります。
『猥褻ストーカー 暗闇で抱いて!』(02・新東宝)。オードリー・ヘップバーン『暗くなるまで待って!』から発想したサスペンスです。葉月螢のメクラ演技がすばらしいです。
『コギャル・コマダム・人妻・美熟女 淫乱謝肉祭』(96・新東宝)。監督=主演作もひとつ入れたいと思い入れました。田口あゆみ、しのざきさとみ、橋本杏子、吉行由実…と当時のピンク映画のオールスターキャストものという側面もある映画です。
『好き者家族 バイブで慰め』(01・オーピー)。ドタバタ・コメディです。やはりコメディを入れないことには私の特集にはなりません。すばらしくくだらないです。笑って下さい。
以上8作品。つい先日の『欲求不満の女たち』が私の80本目のピンク映画でしたので、10分の1にしかなりませんが、なかなかこうしてまとめて見れる機会もめったにないので、ぜひ見ていただきたいと、せつに願うしだいです。
2004.3.28(日)
オーピー『欲求不満の女たち』アフレコ。
夜の9時終了。現場も早かったが、アフレコも早い。ほとんど新記録というノリであった。
2004.3.29(月)
麻由子嬢と松木良方出演の舞台『ドレッサー』を中野ポケットまで見に行く。
芝居のあとは、久々に朝まで飲む。
2004.3.30(火)
オーピー作品ダビング。
オレ、大遅刻。10時開始予定が、シネキャビン到着13時。それでも終了、夜の9時。なんという早さ。天辺を回るのが常なだけにこの早さには驚く。ひとつ秘密があって、今回初めて音楽を使わなかったのだ。オレは音楽が好きで、いつもはガンガン入れるものなのだが、今回は沈黙という音楽をえらんだってことね。80本目なので、今までやってないこと何かないかなと思っていたが、音楽なしという初の試みができたのでオレにとっては記念作だね、やはり。
2004.4.3(土)
新東宝『淫乱なる一族 第二章 絶倫の果て』アフレコ。
『第一章』は完成させたが、そのあとはオーピー作品を優先させたので、撮影から一ヶ月以上たって『第二章』のアフレコということになったのだ。
現場から一ヶ月以上たってのアフレコなんて、もちろんオレは初めてで、正直不安はあった。みんなほとんど忘れていて、えらい時間がかかるんじゃないかってね。
ところがだ、そんな心配は杞憂となった。
終了、夜の9時。なんと早い!
役者陣全員、テンション高く、気が入りまくり。つまり、現場での芝居が付け焼刃でなかったということなんだろうね。体に入っていたということなのだ。あらためてみんなの心がまえに感謝だね。
2004.4.4(日)
野村貴浩所属の劇団め組の『岡田以蔵』を池袋の東京芸術劇場で見る。
め組の芝居は野村くんから招待状をもらうので、ここ2年ほどはほとんど見てると思うが、今回はよかった。
オレの好きな俳優。藤原習作はもちろんだが、今回は以蔵役の新宮乙矢がよかった。彼の持つ一種の暗さが岡田以蔵にはまるのか、以蔵の悲劇性がクッキリと浮き彫りにされていた。せつないほど可愛いく、せつないほどにバカ…そう、これから新宮くんのことを小劇場のジェームス・ディーンと呼ぼうではないか。彼に望むことは、今後は以蔵以外でもこれだけの魅力を発揮してくれること期待したい。それから野村くん。達者なやつだ。
2004.4.5(月)
オーピー『欲求不満の女たち すけべ三昧』初号試写。
ま、賛否両論色々あるだろうが、オレ個人は今回の作品、大いなる手応えと納得を感じている。7月頃封切だと思うが、ぜひ期待してもらいたいと思う。
ひとつだけ佐々木麻由子嬢の感想を紹介しておこう。これは賛の方ね。
「私、この映画、女性に見てもらいたいですね。なぜならからみがすべて心理描写になっていると思うからです。つまり、からみも芝居の流れの中に組み込まれていると感じるのです。だから感情移入できて女性にも見やすいピンク映画だと思うんです。もちろんからみはいつもの池島組のノリで十分ハードなので男の人にはもちろん楽しいですわ」
2004.4.7(火)
『欲求不満の女たち』映倫試写。
微妙だったが、ギリギリ会社にも好評でホッとする。
試写後は、見に来たシネキャビンの中村さん、助監督の佐藤吏と、銀座で3人だけの打ち上げ。ガンガンに飲み、大いに盛り上がる。
2004.4.8(水)
新東宝『淫乱なる一族 第二章 絶倫の果て』ダビング。
オーピー作品の反動ってワケじゃないけど、音楽をガンガンに入れまくる。つまり、『第二章』の方は、からみ、からみ、またからみ…みたいな映画なので、少しでもテンポつけてあきないようにもっていきたかったということね。でも面白いです。こちらの方も。ピンク映画の一般のお客さんにとっては、ブラック調サスペンスの『第一章』やオーピーの『欲求不満の女たち』なんかより、こっちの方が断然喜ばれるわけだしね。
終了、夜10時。なんか最近早くない?
2004.4.9(金)
中野武蔵野ホールへオレの特集の打ち合わせに行く。ついでにレイトショーでやってた古沢憲吾監督の『青い夜霧の挑戦場』という聞いたことのない映画を見る。夏木陽介主演。星由里子、そしてオレの好きな水野久美も出ていて「意外な拾い物かもと期待して見たのだが、「とんだ一杯食わせもの」だった。
武蔵野ホールの映写技師・のろけん氏と朝まで飲む。
2004.4.10(土)
新宿文化センターにジャズピアノを聞きに行く。
オレとジャズピアノ? エッ?ていう感じだよね。手短にコトのしだいを言うと、
オレの知り合いに桜井明弘というシンガーソングライターがいる。オレもこの日記で何度となく彼のことは書いているので、名前をおぼえていてくれる人もいると思う。年に十数回のライブ活動をしつつ、オレの映画に曲を提供してくれたり(『こんな、ふたり』の名曲は忘れられない)、ま、色んなことをやってる好奇心旺盛な方です。彼はまた熱心な格闘技・プロレスマニアで、そのへんもオレとは趣味があったりするのですが。
その桜井氏が去年からだと思うが、ジャズピアノのコンサートをプロモートし始めたのです。そりピアニスト、三上クニさんと言って、デューク・エリントン楽団という、ジャズのことはほとんど知らないオレでも知っているような超ユーメイなビッグ・バンドの専属ピアニストなんです。ヘエーッ!と思うでしょ? そうなんです、すごい方なんです。で、どういう経路かは分かりませんが、桜井さんがその三上さんのコンサートのプロモートを去年からやっていると、そういうことなのです。
オレも去年から「とにかくすごいですから」と一、二度誘われてはいたのですが、未だに聞く機会なく、今回は、なんと桜井さんが三上クニさんとジョイントするということで、これは何はともあれ行かなければと駆けつけたというわけです。
見ました、聞きました。さすが、デューク・エリントン楽団です。すごいです。
でも一番感じたことは、ジャズの楽しさです。ジャズってこんなに楽しいもんだったんだ、という驚きでした。ジャズは、最強のエンタテインメントのひとつであったのだ。
2004.4.11(日)
望月梨央が初舞台をふんでいるサクセス・プロモーションの『誰かの星空』を見に、新宿モリエールへ行く(主演の俳優が、声よし、姿よし、雰囲気よしでよかった)。梨央は夢中になりすぎ。客から見ると、そこにはただただ見当違いな方向に夢中になって走っている女がいるだけなので、いったい彼女のどこを、何を見ていいのかとまどい途方にくれ困ってしまうのだ。もっと客の目線で自分の芝居を見る訓練をしておかなくては。しかもあれほど長く(ほぼ半年?)練習してたんだからね。いったい何を練習していたのかと言いたいよ。あれじゃ達成感もないだろうし、妙な欲求不満しか残らないんじゃないの。だって、客に何を、どう見せたいのかさっぱり伝わって来ないんだもん。オレなんか昔から悪い意味でよく言うんだけど、テンション芝居って言ってるんだけど(テンション高くやってるだけで何かやってる気になっちゃってるってことね)、いわゆるそのテンション芝居の典型だね、あれは。もともと梨央には芝居のテクがあるわけではなく、オレの映画の時もテンション上げてやるしか手はなかったわけだが、今回は半年も練習してるんだからね。何かひとつでもふたつでも自分を見るという訓練をして欲しかったね。
…とまあ、少しはシビアなことを言っておいた方が彼女のためにはなるだろう(梨央はこの日記読んでるようだし)。だいたいフツーの客なんて「(一生懸命やってたから)よかったよ」としか言わないもんだしね。
2004.4.12(月)
さあ、ラース・フォン・トリアー『ドッグヴィル』見るぞ!と勇んでシャンテ・シネに行ったのはいいが、何たるバカ、カン違いして隣の方に入ってしまった。オヤ?と思った時はもう遅い。『スパニッシュ・アパートメント』というフランスの青春映画を見るハメになってしまった。「意外な拾い物」を期待して見たが…。ンー、ラストが気に入らない。バルセロナを舞台に国籍バラバラの大学生たちの共同生活を描くというアイデアはとても新鮮だし、何よりバルセロナの街並みがナイス。学生たちもそれぞれが個性的で面白い。主人公と不倫する人妻もキレイでセクシー…といいとこいっぱいあるのに、あのラストで月並みな青春ものになってしまった感がある。何か他になかったのかねえ。
2004.4.13(火)
新宿ピカデリーの2、3で『クイール』と『イン・ザ・カット』見る。
『クイール』。動物ものに弱いオレだが、それをおいても、この映画はいいです。とにかく、クイールがカワイイ、すばらしい。役者がみんないい。オレのキライな俳優も何人かいるのだが、その人たちでさえもいいのだ。まるでドキュメントであるかのような…。日常のある瞬間を切り取ったかのような…。絵に写るものすべてがいとおしい…。さすが崔洋一というべきか。いくらでもベタベタになる話を、客観的な目線で描き切り、かつベタを望む客をも満足させてしまった演出家の力か。こういうのを完璧なエンタテインメントというのだ。
『イン・ザ・カット』。ダメだ、こりゃ。期待が大きかった分、よりガッカリ度も大きい。「官能」と「ミステリー」が見事に融合しているという謳い文句だが、えっ、いったいどこが?つて感じだよ。「ミステリー」の部分でのあの犯人の出し方…こりゃないよ、反則だよという唐突さ。クリント・イーストウッドの『ミスティック・リバー』の時にもそういう唐突さは感じたが、そちらの場合は、いいじゃんこれはっていうくらい本スジの部分に重く圧倒的な迫力があった。それに比べると、こちらはねェ…。カンピオン、何やりたかったの? メグ・ライアン、脱ぎぞんだよ。面白くなりそうな要素いっぱいありながらのこのダメさ。どうにも疑問ぬぐいがたく、思わず原作の小説買ってしまったよ(まだ読んでないけどね)。
2004.4.14(水)
新東宝『淫乱なる一族 第一章 痴人たちの戯れ』、『第二章 絶倫の果て』初号試写。
もともとは『第二章』の方のみの試写の予定であったが、二本一緒に見れるチャンスはほとんどないだろうということで、急遽二本立てにしたのだ。
はっきり言って非常に面白いと思う。この2本。もちろん一本ずつでも面白いが、2本続けて見ると面白さも2倍以上になるって感じかな。
こうして、嵐の3本撮りが完成した。オレにとってはとても貴重な経験であった。3週間で3本撮るなんて、ホント初めてだったしね。たいへんだった。でも、それ以上に、とても楽しかった。
3本の映画が全部違うテーマとねらいであったというのが大きい。
オレのよく言う言い方になんだけど、「ピンク映画」って何ぞや? ものすごく簡単に言うと、「ピンク映画」って、つまりは「ピンク」(お客の一番期待してること、つまり、裸、セックス)と「映画」(作者サイドの思いね。つまりは、だの裸映画にはしたくないという作者サイドのテーマね)の合わさったものだよね。そして、それこそが、完璧な「ピンク映画」なのだよ。
オレなんかがピンク映画の監督になって13年、一番考えてること、思ってることは、そういう意味での、完璧な「ピンク映画」を撮りたいということなんだよね。つまり、きちんと一般の「ピンク」を見に来るお客さんも満足させつつ、「ピンク」に「映画」を求めてくるお客(カンタンに言うと「PG」なんかの読者ね)も満足させるということね。
オレは、最新のオーピー映画でちょうど80本目なんだけど、基本的にはすべての作品をそういうつもりでやってきた。
で、今回の3本はどうであったか?
オーピーの『欲求不満の女たち』は、「6・4」、ヘタすると、「7・3」で「映画」が勝ってるかもしれない。つまり「ピンク」が弱いってことね。
新東宝『第二章』は、逆に、「7・3」、ヘタすると「8・2」で「ピンク」が勝ってるかもしれない。
『第一章』は、うん、これは、「5・5」、ホンの少し「映画」が強いかもしれないが、ほぼ「5・5」の、つまり完璧に近い「ピンク映画」だと思う。
これは結果論じゃなくて、かなりの部分で確信犯的なんだけどね。
以上、「PG」的には、一番評価されるのは、オーピー『欲求不満の女たち』かもしれないが、総合的には新東宝の『第一章』が一番面白いかなと思うのだね。次は『第二章』ね。『欲求不満』はつまりはマニアにしかうけないというか…。
ま、そんなわけで、オレにとっても忘れがたい思い出となりそうな今回の3本撮りであったのだった(ああ、またやりたい。なぜなら、映画を撮ってる時が一番の快楽なので、またあの集中を味わいたいから)。
2004.4.16(金)
シャンテ・シネ『ドッグヴィル』最終日。やっと見た。
これほどスリリングな3時間、久しぶりに味わった。
ラース・フォン・トリアーって天才?キチガイ?
ま、モノホンのキチガイがこんな映画撮れるはずはないので、天才なんだろう。
ゴダールの『気狂いピエロ』でサミュエル・フラーが言った「映画は戦場みたいなものだ。愛と悲しみ。戦いとアクション…。一言で言えば感動だ」という言葉を思い出した。この言葉を思い出す映画って、オレにとっては最高傑作と言えるものしかないのだけどね。
ラース・フォン・トリアーって『キングダム』の頃から気になる人だったが、今回は彼の中でも最高じゃないかな。
一言だけ言う。「映画ってすごい」って久しぶりに思った。久しぶりに「映画」を誇らしく思う。
とんでもない映画だ。
2004.4.17(土)
横浜光音座で『豊乳願望 悩殺パイズリ締め』の舞台アイサツ。そして、新文芸坐で「ピンク大賞」のイベント。
光音座。山口玲子と美奈が一緒。光音座は去年の『恋する男たち』のアイサツ以来2度目。いいとこだよね。横浜って場所、そして劇場のある日の出町という場所、オレにとっては、そのすべてがファンタジー。となりにある異国ってカンジ? 横浜は昔から好きだったけど、去年から日の出町も好きになった。いつかゆっくりと徘徊したいものだ。
お客さんの雰囲気もよく、イベントもいい感じで盛り上がり、終了となる。
終了後は、前回は近所のバーで打ち上げとなったが、今回はオレたちのケツがあるので、劇場事務室でささやかに支配人さんが接待してくれる。お寿司などとってくれてね。
残念だった。あのへんのバーって、ホントふんいきあってワクワクするのよね。
ま、今度はゆっくり、プライベートで行きたいものだ。
新文芸坐。大盛況。例年この時期は雪とか雨とかで天気悪く寒いのに、今日は珍しくピーカンで暑い日となった。
昼夜、大盛況のイベントにふたつ行って思うこと。ピンクも捨てたもんじゃないよなあ…。正直、ビックリ。うれしい。
ひとつだけ言いたい。
『ノーパン秘書 悶絶社長室』を上映して欲しかった。男優賞、女優賞、新人女優賞をそれぞれトップで受賞してる3人(本多菊次朗、酒井あずさ、まいまちこ)がしかも主演で出てる映画なのだ。5本やるというなら、5位の『痴漢義父』をはずしてでも『ノーパン秘書』やって欲しかった。ねんのため言うと、『痴漢義父』はオレのプロデュース作品だ。でも個人賞は誰もいない。ならば、『ノーパン』やって欲しかったと思うのだ。オレがもし客席にいる客の立場だったら、女優賞の酒井あずさ、新人賞のまいまちこは絶対見たいと思うからだ。ま、こういう意見をいちいち聞いていたらキリがないと思うけど、それを充分に分かったうえで、これだけは言いたいし、そうしてしかるべきだったんじゃないかと思うので、あえて言ってみました(結局、新人女優賞4人の作品は一本も上映されなかったので、その意味でも一本はやってもよかったのではと思うのだ)。
2004.4.19(月)
新宿ピカデリーで『ロード・オブ・ザ・リングの』最終章見る。第一部は余りにつまらなくてほとんど寝てしまい、映画百年の歴史にツバをかけるくらいひどい映画だと思ったもんだし、だから第二部は見てないし…ということで見たもんだから話が分からない。でもそれなりに見せ場はあって、第一部よりはずっと面白いとは思ったよ。でもね、こんなもんかね、大ヒットして、アカデミー賞とかね…。(『ミスティック・リバー』が取れば、少しは見なおしたけどね)。はっり言ってこんなもん映画じゃないよ。映画がダメになった、世の中がヘンだ…そういう「負」のエネルギーの象徴みたいな映画だね。対極にトリアーの『ドッグヴィル』がある。
|