2002.1.21(月)

森山茂雄第一回監督作品『桜井風花 淫乱堕落天使』映倫試写。
会社側からはえらく評価された。新人監督としては異例というオーピーの監督賞を受賞。評価すべきところはキチンと評価してくれるという、いい意味でのオーピー映画の真面目さが、監督賞という評価につながったのだと思う。
森山もうれしかったことだろう。
さっそく次回作の依頼も受ける。会社側の条件はふたつ−桜井風花主演であること、そして、次回は彼女のHシーンをもっと多くということ。
桜井風花主演ということで次回もということはオレも少し前に会社から聞いていたので、実は、森山に次回作のプロットを用意させていたのだ。さっそく提出する。
森山の次回作、佐野和宏脚本ということになりそうだ。
なぜか?
実は、次回作については、さっき言ったように少し前からオレと森山の間では話を進めていて、会社は桜井風花といってるので、これが絶対条件。ただ彼女のギャラがいく分かたかめなので、次は人があんまり出ないヤツをやったらいいんじゃないかということをオレは森山に言っていたのだ。つまり、女2人、男2人ぐらいの構成のホンということだ。
で、18日に東映化学でやった森山組の初号の時、佐野和宏も来ていて、打ち上げの三次会の後藤大輔宅にも佐野和は来て、オレが帰ったあと、森山が佐野和になにげに次はこういうのをやりたいのですと話したってわけ。
すると、佐野和が、オレ、そういうの書いてるよ、と。読んでみるか、と。
それを森山が読ませてもらい、これはいけるんじゃないかと思い、それをプロット化して持ってきたと、そういうわけなんです。
ま、どうなるか分からないけど、会社がOKだったら、次回は佐野和宏脚本になると、そういうことだ。
オレも当然、そのプロット読んでみたけど、これがまた、いいんだな。とても魅力的。これやれたら、色んな意味で面白いんだけどね。
森山と別れて、日比谷スカラ座。トム・クルーズ主演の『バニラ・スカイ』見る。トム・クルーズの自己満映画って感じで、オレは乗れず。原作のスペイン映画『オープン・ユア・アイズ』の方が全然面白かったね。やはり、アイデアの映画だから、リメイクして何の意味があるの?−という感じね。しかし、トムって、どこがいいんだろう? ナゾだな。

2002.1.22(火)

中野武蔵野ホールで『東京ハレンチ天国 さよならのブルース』見る。後半、ちょっと面白かったけど……。
久しぶりに高円寺。宮川→鳥やすと、朝まで呑み歩く。佐々木麻由子嬢とも、10日の初号以来久しぶりに会う。

2002.1.24(木)

池袋、芸術劇場での星座公演『なに様?!』見る。
スゴイ! 篠原久美子さんは天才だ!
篠原久美子さんて劇作家ね。2年前、星座がシアタートラムでやった『マクベスの妻と呼ばれた女』の作者ね。(あの時はオレも出ていて、ロミオ役をやったものだ。)
その時は、シェイクスピアの『マクベス』を元ネタにしながら、自分の作品世界を構築してしまった篠原さんの腕力に圧倒され、すごい作家が出て来たものだと思ったものだ。
この作品には、「七人のノラ」がいると思った時の感動は忘れられない。シェイクスピア『マクベス』から(ある意味)遠く離れて、スペクタクルに、エンタテイメントに、そして、シニカルにリアルに、「女性論」を展開し、まるで、映画『オール・アバウト・マイ・マザー』のように、「すべての女性、女なるものに捧ぐ」とでも言えるような演劇を作り上げた彼女の筆力−まさに、天才的としかいえない作品であった。
で、今回は、星座のために書きおろした篠原版『ハムレット』−『なに様?!』であった。
実は、先に台本をもらっていて、何度か読んでいたのだが、正直言って今回は、前作ほどの完成度はないんじゃないかと思ったものだ。『マクベス〜』の時は、シェイクスピア『マクベス』を材にしただけで、まさにオリジナルの篠原久美子の世界を作っていたのに比べ、今回は、シェイクスピアの手の平で遊ばされているという感じがしたからだ。
それは、作者自身もパンフで、「しまった…手を着けるんじゃなかった…」、「なんだか草葉の陰で、シェイクスピアという名の巨人(もしくは、ただのいいかげんなオヤジ)に、あざ笑われている、そんな気さえした」と書いているとおりだ。
でもね、それでも、このホンは面白いのだ。
再び、作者の言葉を引用しよう。
「それでも私は、書かずにはいられなかった…(中略)ハムレットという、複雑で、弱く、ごう慢で、切れやすく、落ち込みやすく、不安定な人物像を透かし見ると、そこに、現代が見えてきたからだ。そして、これほどごう慢な人物であるにもかかわらず、『民衆に人気がある』ハムレットという社会現象を見つめたとき、そこに、日本が、見えてしまったからだ」。−ということだ。
でもね、ここで篠原さんは「見えてきたからだ」「見えてしまった」と言ってるけど、その正体は、実は、まだ、おぼろげね。篠原さんの今後の作家としての重要なターゲットのひとつに、その正体があると思う。ぼくら凡人をそこまで連れて行って欲しいものだ。
ま、何のかんの言っても、この作品はすごいです。篠原さんには、何より、エンタテイメントというものを、絶対はずさないという器量があります。
で、今回の星座の舞台だけど、これがまたよかったのです。役者ひとりひとりが、今現在出来ることのベストをつくそうという感じ、必死にかじりついてる感じが濃厚で、うまいヘタを超えたところで、各人、ベストプレイでした。
そんな芝居がつまらないわけがない。
意図を超えたところで、アンサンブルの世界が現出し、「とある世界」=つまり、演劇的な、幻想的な、宇宙的な世界へまで、見てるオレを連れていってくれたのだから…。(ちょっと、ほめすぎ?)
台本を何度も読んでいるオレでさえ、後半の大団円が近づくにつれ、「エッ?、このあと、どうなんの?」と思ったくらい、ラストのテンポと、サスペンスフルな展開はすごかった。
だから、今思うことは、芝居って、何が起こるか分からないなァ…ということ。
つまり、昨日は、そして明日はつまらないかもしれないのだ。でも、オレが見たこの瞬間の2時間は…まさに、一期一会の瞬間であったのだった。
やはり、どこで、何に出会えるのか分からないものなのだ。
常に、「私は好奇心の強い女」のように生きていくことが、大事なのかもね。
オレにとって、上がり目、または、インパクトのあった役者は−間宮結、入江浩治、吉川くん、そして、かわさきひろゆき、だ。
打ち上げ。3時頃まで付き合い、そのあとは、後藤監督、ライターの平田氏と、翔子の店「寺小屋」へ。朝まで、しとど呑んでしまったのだった。

2002.1.29(火)

五代暁子と打ち合わせ。次回のオーピー作品、実は、去年の11月のケツから12月の頭にかけて、佐々木麻由子・ピンク引退作でやろうと企画した第2弾、『欲望という名の電車−ピンク版』がオーピーではOKとなり、それをやることになったのだよ。
とてもやりたかったヤツなので、すごくうれしい。2月中旬、クランクイン予定だ。

2002.1.30(水)

新宿プラザで『スパイ・ゲーム』、ミラノ座で『バンディッツ』を見る。
その合間に新東宝の福ちゃんからTEL。
3月下旬公開作品を撮ってくれないかという話。条件がひとつあって、去年の麻由子引退映画として進めていたものの、諸事情により出来なくなった『暗くなるまで待って−ピンク版』を、葉月螢主演でやれないか?−ということ。
オレにとっては、すぐにも飛びつきたい話ではあった。しかし、オレにしても考えなくてはならないことが少なくとも二つあった。
ひとつは、次のオーピー映画『欲望という名の電車−ピンク版』と、撮影時期がほとんど重なってしまうということ。
もうひとつは、葉月螢のスケジュールの問題であった。『暗くなるまで待って』を葉月主演で今年やらないかということは、去年の11月の末の段階で福ちゃんから言われていたので、当然オレとしては、葉月に今年のスケジュールを聞いていたってわけ。その時の話では、所属してる水族館劇場の芝居が5月にあるので、3月くらいからは稽古で時間が取れないということだった。
さっそく葉月にTELしてスケジュール調整に入ったオレであった。
ところで、見た映画二本の感想を簡単に言うと、二本とも、オレにはダメであった、徒労感しか感じなかった。
これほど、お金を使い、大スターを使い、凝りたおした絵作りをして……それでいて、この程度なの!?
ピンクのすばらしさ、とは言わないまでも、ピンクのよさを再確認させられたよ。
まったく真逆なんだもんね。
ピンクは、お金は全くない、いわゆる大スターなんて使えない、凝った絵作りなんて、したいけど、してる時間は全くない……それでいて、魂に響く映画、もっとあんじゃない!?−って思うもんね。
今さらながら思う。ダメだなァ…ハリウッドのスター主義の映画って−。当然全部ってわけじゃないけどね。
それにしても、レッドフォードの老人しわはみにくい。もともと、あんまり好きな役者じゃないから、よりそう思うんだろうな。クリント・イーストウッドのシワにはしびれるけどね。
映画のあとは、ゴールデン街「if」、そして翔子の「寺小屋」と呑み歩き、朝帰る。

2002.1.31(木)

葉月のスケジュールが何とかなれば……オレの監督史上初の二本撮りに挑戦という夢も今出て来ている。

2002.2.1(金)

助監督の森角がやっとホンを書いてきた。3、4ヶ月前に「お前、書かないか?」と言ってたんだけどね。
一読。面白い。オレが考えていたアイデアとは全く違うものを持ってきたけど、これはこれで面白い。オレの作品系列の中では『三好家シリーズ』のジャンルになる「おバカ=ドタバタコメディ」だ。
ここ、2、3年、五代暁子・脚本ばかりなので、たまには味を変えたいと思っていたが、ウン、このホンならやれる。たぶん、次々回作くらいにはなると思うけど、この森角脚本期待しててちょうだい。
夜。新宿ピカデリー2で『息子の部屋』。
ナンニ・モラッティの映画を見るのは初めてであった…。
感動してしまった。
なんて、静かな映画なんだろう。
なんて、節度のある映画なんだろう。
すばらしいです、この映画。
オレ的には、妻役のラウラ・モランテという女優にまいった。
なんと、美しく、気品があり、そして、セクシーな中年女性であることか…。(乳、デカイ! Hシーン、もっと見たかった!)
すばらしいです、この女優。(芝居はもちろん、メチャうまです。)

2002.2.2(土)

葉月螢から連絡があり、オレが頼んでいた3月2日〜5日のスケジュール取れましたという。おぉ、よかったァ! これで、オレの監督史上初の2本撮りへの挑戦の夢がかなった。2月24日→27日がオーピー、3月2日→5日が新東宝だ。オーピーは『欲望という名の電車』のピンク版。新東宝は『暗くなるまで待って』のピンク版だ。(もっとも『暗くなるまで〜』の方は、元の映画とは全然違う話になっちゃったけどね。)2作とも、実は去年の12月の佐々木麻由子・ピンク引退映画の企画として、脚本も初稿まで上がっていたのだが、諸般の事情で実現しなかったものなのだ(その辺の事情については、このホームページ版甘い生活の第一回目に詳しく書いた。)その時は、結局、キアヌ・リーブス主演のメロドラマ『スウィート・ノベンバー』を元ネタにした、『OL性告白 燃えつきた情事』という作品に結実し、ちょうど今、新宿国際で公開中というわけなのだ。
ま、ともあれ、その時宙に浮いた作品がこうして一気に実現してしまうなんて、なんてオレってラッキーなの!? 今年のオレってけっこうツイてるって星占いにはあるど、ホント、そうかもしれない。
新宿で映画。新宿スカラで『仄暗い水の底から』、シネマカリテでレイトショー、インド映画『ストーミー・ナイト』。
『仄暗い水の底から』、いやー、久しぶりにこんな恐いホラー見たよ。ホラー好きのオレが恐かったというんだから、この恐さ、ホンモノね。誰も住んでいないんじゃないかと思える不気味さに支配された集合住宅のたたずまい(よくそんなとこで暮らせるよな? 全然リアルじゃないじゃん−なんてヤボは言うまい。あの非日常性が、より恐怖感を増幅させるってことだ。ま、そういうねらいなんでしょう。)ヒタヒタと迫りくる水の恐ろしさ(あの水の恐さの演出はただごとではない監督の腕の冴え、力量を感じる)。そして、キューブリック『シャイニング』もどきの、エレベーターから一気に奔流する(こっちは血じゃなくて)圧倒的な水の迫力!(小さな小屋で、結構客席埋まってたんだね。だもんで、思い切って一番前に座り、スクリーンを見上げる形で見ていたのだ。その見かたがよかったと思った。この映画を十倍楽しむには一番前に座りなさいと言っておこう。)
唯一の不満は、十年後というラストね。廃屋となった集合住宅を十年ぶりにおとずれた娘のシーンね。あんなシーン、必要だったのかなぁ? なんか強引に親子の情愛に持っていってるような気がしたのだ。ホラー映画としては蛇足だ。エピローグ入れるなら、強烈なオチであるとか、さらなる恐怖をあおるとか、そういうエンドじゃないとね。
『ストーミー・ナイト』。インド映画には珍しい(日本に来るのがかもしれない)サイコ・サスペンスというポスターのコピーに引かれて見てみた。
結論から言うと、とにかく長い。1時間40分くらいだが、せめて50〜60分くらいの尺だったら、かなり面白いんじゃないとは思うのだが、とにかくタルイ。3人しか出ない役者もみんな力演でね、とてもいいのだ。それだけにせめて60分くらいだったらなァ…とても楽しめたと思うのだ。オシイ。
ゴールデン街「if」。深夜3時頃、タクシーで高円寺「鳥やす」へ移動。久しぶりに佐々木麻由子と会い、朝まで呑む。