2003.11.21(金)

「オレって、なんてラッキー!」っていつも思ってることが、まさにこの日起きた。
森山組ラッシュ。オレは諸事情によりラッシュ見れなかったのだが、東映ラボには昼過ぎに行く。新東宝の福原氏と、来年の2月クランクイン予定の作品に関する打ち合わせがあったからだ。
2週間ほど前にそのプロットが上がって、その打ち合わせということね。
ま、打ち合わせの中味に関しては、こちらの問題なので、今ここでどうこういう話ではないのだが、オレが、自分のラッキーを感じたのは、このあとの話。
この日は、新東宝作品の上野組と深町組の初号試写があり、ついでにオレも見たってわけ。
試写のあと、かわさきくんがオレを呼ぶ。何かと思ったら女優を紹介してくれたのだ。AVやっていたが、これからはピンクをやっていきたいというわけ。桜咲れんというコで、なかなかカワイイ。そしてAカップという貧乳。「このコだ!」と思った。
実は前日、次回オーピー作品『Gショック!』のヒロインに決まっていた西園きさらがいきなりダメになり、急遽変わりのコを探さなくてはならないハメに陥っていたのだが、いきなり、ここにいた!
なんて、オレって、ラッキーなの?!と思うわけさ。
話を聞くと、彼女、1年前までは、広末奈緒という芸名でかなりの売れっコAVアイドルであったという。助監督たちもみんな知っていたし、ますますオレってラッキーね。
そんなわけで次回作『Gショック!』のヒロインは、桜咲れんくんに決定!

2003.11.23(日)

五代暁子と打ち合わせ。『Gショック!』決定稿上がる。

2003.11.24(月)

決定稿、入稿。

2003.11.25(火)

森山組『後家・後妻 生しゃぶ名器めぐり』アフレコ。
オレの方は印刷台本上がって、1回目の演出部、俳優部の打ち合わせ。
打ち合わせ終了後は、アフレコの終了を待つ。
アフレコ、夜の11時終了。オッ、いつもより数時間早い! よしよし…。そのままシネキャビンで飲み会に突入。
佐野和宏、佐々木麻由子と酒豪がそろっていたこともあり、ハイピッチの飲み会となる。
翌朝の7時半まで飲み続け、オレは、はうようにして帰宅する。佐野はまだ飲んでいた。

2003.11.29(土)

演出部、打ち合わせ。

2003.11.30(日)

故小林悟監督夫人の初枝さん主宰の飲み会が小林宅で行われる。オレは、牧村耕二と一緒に参加。
まきやんというヤツもホント不思議なヤツで、実に顔が広いのだ。初枝さんとは、文学座研究所時代の同期生だったそうな。その女性と10年ぶりくらいに会ったら、小林監督の奥さんになっていて、ホント驚いたそうだが、そんな話聞くオレも驚くよ。
飲み会は、大いに飲み、食い、オレと牧やんは翌朝の8時半に、やっと小林宅を出たのだった。

2003.12.1(月)〜4(木)

喫茶店、飲み屋、家と場所を移動しつつコンテ。

2003.12.5(金)

森山組『後家・後妻 生しゃぶ名器めぐり』初号試写。
今回は、森山初のコテコテの艶笑コメディ。『三千世界の鳥を殺し、坊主と添い寝がしてみたい』という原題から分かるようにね。
現場、そして仕上げの段階で予測はしていたが、思った以上の快作、怪作に仕上がっていた。はっきり言って、面白いです、この映画。
まず言えるのは、佐野和宏の脚本のうまさね。ピンクの脚本として、穴が見あたらないほどに見事。それは特に6回あるHシーンの配分。中味の味付け具合に顕著に見てとれる。ホント、佐野って、女をよく知っていて、スケベなヤツだぜ。同じく女好きでスケベなオレがこう言うんだから、これは誰が何と言っても確かなことだ。
次に、キャスティングがいい。天然系超ドヘタ美少女の新人・神鳥美緒の魅力。柏木舞をもっと天然にした感じというか、久々にカワイイ新人を見たね。ま、脚本がうまいということなのだが、ホント、このコいいよ。えがたい存在感だ。オレはこのコにシリアスやらせてみたいと思ったけどね。なんたって19才だ。それだけでもすごい。復活・佐々木麻由子、今やベテランの水原香菜恵がそれぞれの役割をキチンとこなす。神戸もいいとこ見せた。そして助監督の松丸の小坊主役も大成功。しかし何といっても、とどめは、住職役の佐野のパワフルな怪演ぶりにつきるだろう。
そして、キャメラマンの長谷川がうまい。絵にムダがない。大胆で、かつ繊細な技術が光る。オレも今度やってもらおーって、って感じだよ。
そして最後に、個性派集団をまとめあげた森山に、演出力の進歩が確実に感じられたと言っておこう。もうしゃらくさい映画青年風の映画作りはしばらく封印して、当分はこういうピンクの「王道路線」でいくべきと言っておこう。何と言っても、今年は年間4本と、レギュラー監督になってきたのだから。またこういう娯楽路線こそより確かな演出力が必要なのだから。
おっと、もうひとつ最後に大場一魅の音楽ね。今回もまた一魅の音楽センスに助けられた部分がカクジツにあったね。
とにかくこういう一見何もない、ただ面白いだけという娯楽作品が、もっと評価されるべきだと、いつも思うことを言っておこう。

2003.12.6(土)

『Gショック!』改め、公開タイトル『豊乳願望 悩殺パイズリ締め』の役者リハーサル。
午後の1時から西日暮里にある森角の劇団・天然工房のケイコ場を借りてのリハ。このケイコ場の立派さに驚く。広い、清潔、2面が鏡張り、そして家賃も信じられないほど安い! 駅から歩いて2分! と何拍子もそろったすばらしいケイコ場だった。あんな理想的なケイコ場持ってたら、これはいい芝居しないとね。唯一の欠点は、電車沿いの道に建てられたビルの一室なので、ひっきりなしに通る電車の音がうるさいくらい。でも森角の劇団のスタイルにはちょうどいいかも。要はあの騒音に負けない声とパワーでケイコすればいいんだからね。
本読みでは、山口玲子がうまくなってきてるのに驚く。ちょうど今楽しくなってきてるんだろうね。新人の桜咲れんは、やはり基本が全く出来てないので、これは少し苦労しそう。でも、キャラは合ってるし、本人もやる気ありそうなので、これはこれで楽しみね。
夜の7時頃終了。それからスタッフと出演者の一人・石動三六氏とで、大山の色華昇子宅へ移動。劇中の謎の宗教家・石動氏のビデオのシーンを色華さんの家で撮ってしまおうということでね。オレの『牝猫 くびれ腰』を見てくれてる人は、きっと強烈な印象を受けたと思うけど、あの宇宙人の部屋ね、あれ、色華さんのお家なのね。そこをまた使わせてもらったってわけ。
撮影は石動氏の余りのはまりぐあいと熱演であっという間に終了(オレほど石動氏をうまく使ってる監督はいないと自負しているが、今回もはまり役ね。今や彼は貴重なバイプレーヤーです)。
それから昇子ちゃんがワインを出してくれて、みんなで飲んだのだが、このワインがいけなかった。オレにとっては、一世一代の大失敗をしてしまうはめになってしまったのだ。
オレはグラス2杯ぐらいと、オレにしてみたらほんのささやかな飲み方であったのだが、えらく酔ってしまったのだ。でも自分では全然自覚してないのね。だって、オレにしたらほんの少々のアルコールだもん。
しかしホントは酔ってしまっていたのだ。ここんところの睡眠不足、それに前日の森山組の打ち上げの疲れもあったのだろう。帰りの電車の中で、リュックを網棚にのせたまま座席に座り、そのままウトウト寝てしまい、ま、結局、それを忘れて駅に降りてしまったというわけ。ちなみに貴重品は肌身離さないショルダーに入れていたので無事。リュックには別に貴重品は入っていなかった。そう、オレ以外の人には。しかしオレにとっては、超貴重なものが入っていたのだ。今回の作品のコンテ台本。そしてもうひとつ。オレが監督デビューした12年半前からずっと使ってきた皮の台本カバーだ!
それは当時まだ一緒に暮らしていた五代暁子がオレの監督デビューを祝ってプレゼントしてくれたもので、以来、オレの80本近い作品の台本を包んできてくれた。13年間というもの、オレのすぐそばにいつもいてくれた。そしてこれからもいつもいてくれるはずだった……。ある意味オレにとっては象徴的なものだったのだ。使い心地も、ここ数年は手にしっくりとなじむようになり、助監督連中からも「やっぱり皮はカッコイイですね」といつもうらやましがられるほどの風格が出て来ていたのだった。
そんな大事なものを紛失してしまった!
駅の事務所にすぐさま駆け込んで、最終電車まで2時間待ったが、ついに発見されなかった(今この文章は4日後に書いているが、今だに出てこない)。
ショック! 寝込んでしまいそうなショックだ。コンテ台本の紛失もまいったが、これはまたやればいいことだ。しかし、13年間オレのそばにいつもいてくれたヤツがいなくなってしまった。錯乱しそうなほど悲しいねえ。
どうも今年の下半期はバイオリズムが狂ってきてるかのようだ。ロクなことがない。やはりヒマなせいか。
今年は6月までに、監督作4本、プロデュース作3本と、合わせると7本もやって息をつくヒマもないほどに忙しかった。それが7月からの下半期は、監督作2本、プロデュース作2本の計4本と約半分になってしまい、反動もあって、非常にヒマを持てあましてるという感じがあった。やはり何かのタカがゆるんではていたのだろう。バイオリズムが狂ってきてるという感じがあった。
ヒマになると、ロクなことがない。やはりオレは、忙しくてまいっちゃうよと、いつもうそぶいていた方がいいんだなァ…。

2003.12.7(日)

皮カバー紛失のショックを引きずったままロケハン。朝7時半集合。
コンテ台本が手元になくなったので、頼るものがなく、今ひとつロケハンしててもポイントをしぼり込めない。集中力が散漫になる。一体オレはこの場所で何をしたかったんだろう?……というアイマイな気分が重くのしかかる。
ロケハンがナイトオープンの部分は見なくてよくなったおかげで、今回もまた見れないかな?と思っていた天然工房の舞台を見ることが出来た。キャメラマンの志賀ちゃんと一緒に池袋シアターグリーンに駆けつける。
天然工房の芝居は全部見ているわけではないが(今回が10回目の公演ということで、オレは今回が6回目だと思う)、旗揚げからずっと見ていて、去年の『クーラー消してもいいですか?』という傑作舞台をピークに、以後それ以上の成果ある舞台は作れていないという印象をいだいていた。
ところが、今回は久々に、はじけた。
『AM2:00』。深夜2時の牛丼屋さんの控室を舞台にしたドタバタコメディの一編だが、これはすさまじいばかりのスピード感と笑いにあふれた、スラプスティック・コメディの傑作であった。
いつ以来だろう、これほど腹を抱えるほど笑ったのは? ふと、7、8年前、中野武蔵野ホールでドリフの特集やってた時、たまたま見た一本で腹を抱えて笑ったことを思い出していた。
「天然」の笑いは、ドリフ級?!
ここには「喜劇」なるものの「王道」があった。つまり、人間の行動のディテールが基本であるということ。つまり、リアリズムね。それを、とある装置(簡単に言えば、喜劇頭ね)を通過させた時、それは拡大されデフォルメされ、歪曲され、とてつもないバケモノに変貌していくのだが、その時、「喜劇なるもの」が産まれる。
今回の天然の芝居はまさにそれであった。リアリズムというベースをはずしていないから、ただの悪ふざけ、仲間うちの笑いではない、ダイナミックな真の意味での「喜劇」がここに誕生した。
ま、今は、細かいこと言ってる余裕はないので少々はしょるが、話らしい話のない1時間40分を、スピードと笑いだけでもたせたという作・演出の森角と、役者陣は、すごいと、それだけは言っておこう。訓練のたまものだね。特に役者陣の充実ぶりは、天然工房始まって以来のものと感じた。やっぱり、稽古場ありきだね。
もうひとつ。チャップリンとキートンの比較で言うと、『クーラー』はチャップリン路線であったが、今回はキートン、マルクス兄弟路線だよな。森角の資質は、はたしてどちらにあるのだろ? ちなみにオレが監督し、森角の脚本家デビュー作となった『ノーパン秘書』の時は、ビリー・ワイルダー的とか、ウディ・アレン的とか言ってる人もいたなあ。
いずれにしても、こういう天才たちと伍して語られるという才能を森角は持っているわけだから、増々楽しみだな。
オレ、今日は、実は眠るだろうと思って来たのだよ。寝不足と、皮カバー失くしたダメージ、それに今ひとつ期待してなかったというのもあってね。
それが何と言うことか。寝るどころか、皮カバー失くしたことも忘れて笑いころげていたよ。終演後、志賀ちゃんと飲みに行って気づいた。癒されていることに。
「芸」の力とは、かくも偉大なのだよ。
天然工房のみんな、ありがとう。

2003.12.8(月)

森山組『後家・後妻〜』映倫試写、好評。カンペキなピンク映画だもん、当り前だよ。でもオレ一人が面白いと舞い上がっているわけじゃないということが分かって、少しうれしい。

2003.12.10(水)

JRから連絡があり、オレの失くしたリュックが出てきたという。思わず、カッサイだね。

2003.12.11(木)

スタッフとコンテ打ち合わせ。今回は、巨乳ちゃんと貧乳ちゃんの入れ変わり物語だけど、話をしててもこんがらがってきて、志賀ちゃんなんか、胃が痛いとまで言い出すしまつ。んー、難しいといえば難しい話だ。

2003.12.13(土)〜15(日)

オーピー作品『豊乳願望 悩殺パイズリ締め』撮影。