2003.8.30(土) ロケハン。南千住の隅田川の川っぷちから豊田のヒダカスタジオまで、東京を横断。助監督の森山が先にロケハンしてさがし出してくれた隅田川の川っぷちはイメージぴったりの場所であった。未完成の公園がほっぽりっぱなしになっている場所で、人も入れないようになっているので撮影もしやすいしね。 夜はタイニイアリスで芝居見物。以前から何度か見て、気になっている劇団・榴華殿の舞台。気になっていたのは、その耽美な作風と、ヒロイン役の森田小夜子という女優。 森田嬢は身長130センチくらいと思える耽美な小美人。以前からオレが「ヴァンパイア」につぐホラーものの第2弾として考えている企画があるのだが、その企画のヒロインのイメージにぴったりということで気になる存在であったのだ。 3年ぶりくらいに見る森田嬢は、すっかり体に肉がついてしまい、以前の清楚な小美人というたたずまいから見ると別人のようになってしまっていた。ちょっとガクゼン。ちょっとガッカリ。ああなると、もっと太って、一種まがまがしい感じをねらった方がよかったのになんて思ってしまった。ま、以前の清楚な小美人の時の方がいいには決まっているけどね。 2003.8.31(日) 『痴漢電車 誘惑のよがり声』役者リハーサル。午後1時から5時まで。6時からは場所をシネキャビンに移動して、ミュージカル・シーン用の歌の録音。今回、痴漢軍団・suicaのテーマというのを作って、導入部、神戸以下4人の痴漢が歌って踊るのだ。作詞・五代暁子。作曲・大場一魅による、軽快なコミック・ソングだ。 8時頃終了。例によって飲み会となる。深夜2時頃までには、ほとんどの連中が帰るか寝はじめる。元気のいいオレと本多菊次朗はそこでキャビンを抜け出し、2人で2丁目の居酒屋へ。そこで朝6時まで飲んで別れる。本多、自転車なんだよな。新宿から世田谷の上町まで。酔っぱらって自転車って危ないんだよな。オレも去年引っくり返って、ヒザを打って今だに痛いもんね。 2003.9.4(木) セメントマッチ事務所に演出部集合。最終的な小道具のチェック、確認。 2003.9.6(土) クランクイン前日。例によって、キャメラの志賀ちゃん、演出部と最終的なコンテの確認、打ち合わせ。 2003.9.7(日)〜9(火) 『痴漢電車 誘惑のよがり声』撮影。 初日。 一日中オープンロケ。デイシーンのみ。つまり陽が落ちたらおしまい。時間との戦いとなる。 朝一から演出部が右往左往している。小道具のひとつが紛失とのこと。そこで30分のロス。次のロケ地では引越しの軽トラックに邪魔され、そこでも30分以上のロス。オープンはこれがあるからコワイ。結局、遅くても午後1時には到着していたかった千住の隅田川沿いに着いた時は2時を回っていた。おりからの曇り空。それもあって、陽のあるリミットは夕方5時半だろう。エーッ、撮り切れないよォ! この段階でもはや絶望的。予定では、1時から6時の5時間を考えていたからだ。 とにかくやるしかない。気をとり直して、ミュージカルシーン、アクションシーンと大急ぎで撮ってゆく。 しかし、ついにタイムリミット。6時を過ぎたあたりで真っ暗となる。アクションシーンの半分くらい(ヒロインと悪党の一対一の対決シーンの大半)を撮りこぼす。 もうダメだ。スケジュール的にもう2度とここにくることは出来ない。絶望的な気持ちにおそわれ、オレは今まで初めて、映画を投げ出しそうになる。 夜は撮るシーンないので早く帰れた。酒を飲みながら「もうダメだ!」とつぶやいている時、突然ひらめいた。「アクションシーン、場所を変えてやればいいんだ。3日目、八王子の方に行くので、そこで林でもさがしてその中でやればいいじゃないか。隅田川から、いきなり林の中になったって別にいいじゃないか。シリアスな映画じゃないんだし」 がぜん勢いづいたオレは、さっそくキャメラの志賀ちゃんにTEL。志賀ちゃん「それでいけるよ。林の中に走り込んでくることにすれば全く問題ないよ」。 地獄から生還したオレは、すぐ寝ればいいものを、ハイテンションで飲み続けてしまったのは言うまでもないだろう。結局4時まで飲んじゃったよ。 2日目。 今日は都営地下鉄に乗り込んで痴漢シーンを撮るという気の重い日。しかも車椅子なども小道具として持ち込まなくてはならず、より気が重い。 結局、12時過ぎまでかかって地下鉄終了。ホント、オープンって予想以上に時間がかかるものだ。ま、ゲリラでやっているので、こちらのおもわくどおりに事は運ばないということなんだけどね。 午後からは目黒区のスタジオカプリ東ヶ丘に移動。『恋する男たち』から、このスタジオ、ほぼ毎回のように来ているなぁ。比較的低料金だし、そのわりに広くて使い勝手もいいので気に入ってるのだ。 今回オレは久しぶりにちょっと大きい役で出演しているのだが、その出演シーンを次々に撮り進めていく。ヒロインの新人・愛田美々もなかなかよろしくて、いいテンポで進行する。 夜になって、今回初のHシーンとなる。 Hシーンを3つ。 新体操選手だった愛田美々のしなやかな肉体。そして、山口玲子の思わず笑っちゃうしかないような超巨乳。なかなかよいからみが撮れた。 終了、深夜の3時半。 最終日。 高円寺駅7時半集合。今日はエキストラの人も多く来てもらい、豊田駅に着くまでの間に中央線内で痴漢シーンの撮影。 豊田に着くや、おあつらえ向きの林の公園が近くにあるということで、初日撮り切れなかったアクションシーンの撮影をそこでする。なんとか初日の撮りこぼしが撮れてホッとする。 午後2時過ぎ、ヒダカスタジオに入る。昼食後、痴漢シーンの下半身中心の撮影。痴漢シーン多くてかなり時間かかる。 昨日までフィルム回りすぎてて、フィルムの残量とにらめっこしながらの撮影。今回は意地でもフィルムをオーバーさせないつもり。いつもそうなんだけど、結局はオーバーさせている。そして編集で苦労する。どこをどう切ろうかってね。つまり、フィルムは回せば回すほど尺も長くなり、ピンクの尺はほぼ60分と決まっているので、では切らなくてはいけなくなる。これってホントばからしいよね。お金をよぶんにかけてフィルムを買って、その上で今度はそれを切らなくてはならないんだから。いつもそう思いながら、足りないとなるとフィルムを買ってしまい編集で苦労する。だから今回こそはそうはしまいと心に誓っての現場なのだった。 今回ばかりは意地でもフィルムはオーバーさせない。となると、自然欠番が多くなってくる。今回はコンテの段階でいよいよとなったらここはカットしようと思っていたので決断は早い。あっという間に6シーンを欠番にする。 終了、12時。新宿の居酒屋へ移動。 ここでも大幅なカット。骨だけ残して肉を切るという感じ。 それでも数十秒足りない感じとなる。梅ヶ丘のセメントマッチに数十秒分の残生があるので急遽助監督に取りにいかせる。 それで何とか間に合わせる。 終了、朝の5時半。 いつもそうだが、今回もやはり時間との戦いであった。3日でこれだけのことやろうっていうんだから、ま、当然なんだけどね。 2003.9.11(木) 編集。63分。いつ以来だろう、65分を超えなかったのって。 今回はほとんどアクション映画みたいなとこもあってカットが多い。それもあって、というか、そういうことでこれだけ短く編集されてきたのだ。 こうなるとラクだ。編集の酒井ちゃん「明日、切りすぎないようにしないとな」。 2003.9.12(金) オールラッシュ。映倫のチェックきびしい。再編集。60分を少し切る。いつ以来だろう。60分を切るなんて。大昔のエクセスでの「痴漢電車」以来か。そうなんだ、電車ものってカットが細かいので、そんなに尺が伸びないのだ。 新東宝へ行く。来年早々やるという作品の企画の話あり。2本撮りなんだけど、ま、いずれ発表しましょう。 2003.9.14(日)〜15(月) 久しぶりにAV男優をする。 ホント、AVの男優はラクでいい。天国だ。 メインスタッフからは「池さん、久しぶり」と声をかけられるが、若い男優の人たちはオレを知ってるもの誰もいない。時の流れですね。 2003.9.16(火) 『痴漢電車 誘惑のよがり声』アフレコ。 ヒロインの愛田美々、ストリップ劇場の仕事が入っていてアフレコ出来ず。アテレコに木の実葉を起用。さすが天才葉、声が生きてる。バタバタと片づき、終了、なんと夜の9時。こんなに早く終ったアフレコなんていつ以来か、オレには記憶がない。 例によって飲み会。飲み始めて1時間でオレはつぶれる。2時間ほど眠って復活。朝の6時か7時まで飲んだのか。オレはヘロヘロになりタクシーで梅ヶ丘のセメントマッチへ。近くに事務所あってよかったとこういう時思う。 2003.9.17(水) 午後1時過ぎからラッシュ。酒が抜けてないオレは後半ほとんど寝てしまう。 2003.9.19(金) 佐藤吏の監督第2作の初号試写に行く。 なんでああいう風に一般論的な「感動」にもっていっちゃうのかね?というのが、オレのとりあえずの感想。 佐藤のいいところ、オレは分かってるつもりだ。今回もいい感じで来ていたんだよな。8割がたね。おっ、ひょっとしてコレは傑作!?とオレは思ったもんだ。 でもね、最後の最後でね、なんでああなっちゃうのという疑問がね、ぬぐいきれないのだよ。あんなもの、いつか見た風景でしかない。 惜しいよな。でも、ザマアミロだ。そんな簡単にいいもの撮られてたまるかよだ。 |