2003.6.17(火)

オーピー『不倫妻の淫らな午後』映倫試写。
映倫の先生にはほめられるも、会社には受けなかった。ン…?。
シャンテ・シネで『愛してる、愛してない』見る。『アメリ』の女の子の新作。試写での評価が心に引っかかって、こっちの映画には集中できず。疲れもひどい。ほとんど寝てしまったので2回見ることになる。『アメリ』よりは好きかな…。

2003.6.18(水)

五代暁子親子と、調布にある温泉「ゆかりの湯」に行く。東京のド真ん中といっていいトコにこんないい温泉があるなんて…。五代の息子、円もいたせいで、すっかり堪能する。料金もリーズナブルだし、この温泉おすすめします。

2003.6.19(木)

試写の2本立て。
本来は、新東宝で撮った『ノーパン秘書2 悶絶大股開き』の試写のみだったのだが、ついでに(先週の試写見れなかったスタッフ、キャストが数人いたということもあり)、オーピーで撮った『不倫妻の淫らな午後』もやることにして、2本立てとなったのだ。
まったく内容もスタイルもテーマも違う2本の映画ゆえ、撮影中から、この映画、2本同時に見るのが一番いいよねなんて冗談めかして回りに言っていたのであったが…。
片や(オーピー)渋いしっとりしたシリアスな映画であり、片や(新東宝)エログロナンセンスの極みを目ざそうかというほどのドタバタ・ハレンチ映画であったからだ。
このことは、からみの尺数をはかると如実に分かる。オーピー作品は、芝居場40数分にして、からみは10数分。片や新東宝作品は、芝居場10数分にして、からみは40分強という具合にまったくの逆だ。だから、2本同時に見てもらえば、バランス的に一番いいのにね。なんて言ってたってわけ。
ところがだ、仕上げの最中、いきなり気づいたのだ。この2本、表向きは全く異なる2本の新作だが、実は作品の根底の部分で、一卵性双生児のごとく一緒であるということに。
どこが? めんどうだから簡単に言うと、出てくる女たちがみんな魂の姉妹たちなのだ。例えて言うと、みんな、イプカンの『人形の家』の主人公ノラの末えいたちなのだ。
2作品に出てくる女たち6人は、性格も個性も生まれも育ちもみんな違うが、でもみんな、ノラの魂を受けついだ姉妹たちなのだ。
つまり、だいたんに言うと、この2本の映画は「女性論」の映画なのだ。
脚本家が五代暁子という女性である点。
そして、五代は、とりわけ女の生き方ということに意識的な人であるという点。
以上2点から、この2作品は、ノラの末えいたちが大活躍するというテーマをおのずと内蔵していたってわけね。
そう考えると、この2作品に出てくる6人の女たちがいとおしくてね、オレはたまらなかったよ。
だから、いつもそうなんだけど、今回の2作品は特にオレは愛しちゃってるよ。
ま、産みの苦しみがあった分、よりかわいいってヤツなのかね。ホント、大好きな2本の映画だ。
役者がまたいい。
『不倫妻〜』では何といっても佐々木基子がとんでもなくすばらしい。何度も言ってるが、この作品は彼女の代表作になるだろうな。牧村耕二。ピンクマニアの多くを驚かせるだろう。
『ノーパン2』では、酒井あずさが一等賞ね。ねらいどおり、さらにパワーアップした姿を見せてくれた。新人の西園貴更もなかなか面白い味がある。
2作品通してでは、これでオレの作品7本連続出場の本多菊次朗、そして4本目の望月梨央が期待に答えた存在を示してくれている。
樹かず、神戸、銀治もいいしね。
ホント、みんな楽しそうでいいよ。
そんなわけで、打ち上げ、いつもに増してみんなのテンション高く、オレは3次会で朝まで飲んでいたのだった。
終わった。今年は今にいたるまでほとんど休みなくやってきた。監督作4本、プロデュース作3本の計7本もやった。去年が計8本だったことを思えば、ほとんど1年分やってしまった感じだ。いきなりヒマになる明日からがコワイ。

2003.6.22(日)

劇団め組公演『玄蕃と十平次』見る。下北沢・「劇」小劇場。忠臣蔵ものなのだが、今回はなかなか見ごたえがあった。め組の悪い時のパターンである、大河ドラマのダイジェストのような芝居にならず、玄蕃と十平次という、2人の男を中心にドラマを展開させた点がまずよかった。そして今回はめ組には珍しく、女優が2人大きな役割を担って登場するが、これがまたよかった。以上4人が書き込まれている構成のよさ。そして、この4人を演じる役者がまたよかったのだ。
藤原習作と新宮2矢。劇団の看板役者2人。この2人がいいのだ。「陽と陰」と全く対照的なキャラクターの2人の俳優なのだが、今回はこのキャラクターの書き分けが見事。2人ともに水を得た魚のごとく生き生きと存在している。2人ともに、キャラが非常に鮮明である点、そして、姿・形がいい点、動きもムダがなく、キレイである点、そして、こえもく、口跡もいいと、役者にとっては最大の武器をいくつも持っている俳優だと思う。今後も楽しみだ(ま、ホンだよな。ホンはいつでも大事なのだが、こういうエンタテインメント時代劇というくくりでは、より重要だと思う。役者のキャラ勝負的な芝居って、役者を生かすも殺すも、すべてホンしだいという気がするのだ。作者の合馬百香さん。またいいホン書いて下さいね)。
女優2人もよかったが、特に玄蕃の妹役で出た平沢昭乃はすばらしかった。この人は一年前に初めてめ組を見た時から注目していた人だが、今回は大きい役をふられハジけたね。かなりのコメディエンヌです、この人。また、この人が活躍する芝居、見たいものだ。合馬百香さん、よろしくおねがいね。
なぜにオレが「め組」の芝居を見るようになったか? ピンクにもたまに顔を出している劇団の役者・野村貴浩くんから招待状が来るようになってからだ。初めて見たのが、去年の春頃の「次郎長もの」。これがよかった。エネルギッシュで、アバンギャルドな味も加味されていてね。あの路線、なんでやらないのかな? オレはあの路線買います。また見たい。
というわけで今に至るのだが、野村くんのこともちょっと。やはりこういう劇団にいるだけあって、彼もなかなかの実力派だ。オレもかねがね彼のこと、いじってみたいと思っているのだが、なかなかタイミングがね…。ま、いずれ野村くんにもオレの組、出てもらいたいものだ。でも、彼のようなタイプの俳優って、オレは舞台でいじりたくなるんだよね。芝居の演出でね。ま、それはムリなので、いずれ映画でね。
め組の次回公演は…おっと、もうすぐだ…8月6日から10日まで、池袋の芸術劇場、『赤報隊始末記』というのがひかえてる。年に4回くらいやってる劇団だからね。チラシ見ると、人がいっぱい出る。ちょっと悪い予感もするのだが、とりあえずおすすめします。

2003.6.23(月)

久しぶりに映画をハシゴ。
新宿のオデヲンで『ミニミニ大作戦』。プラザで『ザ・コア』。2本ともとりたてて言うこと何もない映画。むなしい。

2003.6.25(水)

去年、樹かずの監督デビュー作『キミニ惚レテル』に主演した千葉尚之くんが劇団を旗揚げした。その名も「NO・1・7」(イチナナと読むらしい…)。見に行く。タイニイアリス。
その舞台は「希望」をテーマにした、全5話のオムニバス。千葉くんは、全部の演出と、第4話の脚本、出演。
なかなかよかったです。特に、ビルの屋上での自殺志願の男女の出会いを描いたものと(ヒロインの女の子がいい。グラマー美人。ピンクやらないかなァ…なんて思いながら見てました)、千葉くんの出演した病室を舞台にしたものがよかった。そうそう、死神の話もよかったな。役者の熱演もあってね。それぞれがチャーミングでした。
次は、長篇を見たいですね。骨太のテーマにじっくり取り組んだものをね。好感・千葉尚之、がんばってね。
芝居のあとは、一緒に行った酒井あずさ嬢と、佐倉萌の店「殿山」に飲みにいく。そのあとは酒井嬢と別れ、清美の店「銀河系」へ。久しぶりだ。結局、朝まで飲む。

2003.6.30(月)〜7.5(土)

沖縄へ行く。同行は五代親子。なんと8年ぶりの沖縄。遊びに行くのは8回目。仕事も入れると10回目の沖縄だった。昔は毎年のように行っていたものだったなァ…。
今回は、主だったところは大体行っているので、石垣ステイでの離島ツアーにかけてみた。
大正解。あいかわらずオキナワの海はとほうもなく美しく、魚たちにかこまれてのシュノーケルを大いに堪能する。
そして、思った。
人間には、こうしてバカになる時間が必要だということを。
何も考えず、海と太陽とうまい料理、夜になれば心地よい疲労で自然と眠りに入る生活。
東京での生活サイクルと全く逆転する時間。
自然と同化してしまう時間の流れ…。
何も考えなくなるから、はっきりいってバカになる。でもこのバカになるということがいかに快感であることか。
この自然にバカにかる快感をオレは実に長い間忘れていたのだ。
反省した。
来年からは、このバカになる快感を忘れないように、毎年オキナワに行くことにする。
来年がまた楽しみだ。

2003.7.7(月)

プロデュース作品・森山組『夢を見た…』の決定稿上がる。脚本、佐野和宏。佐野ちんがこういうの書くの?…というようなコメディだ。クランクイン、7月25日。

2003.7.8(火)

映画をハシゴ。新宿ピカデリーで『めぐりあう時間たち』。武蔵野館で『アバウト・シュミット』。
『めぐりあう時間たち』。オレの大好きな女優2人(ジュリアン・ムーア、ニコール・キッドマン)と、好きじゃないけど、めちゃうまい人(メリル・ストリープ)が共演というスゲーゴーカなキャスティング。三つの時代を並列的に描きながら、いつの時代でも「女のかかえる悩み・問題は同じなのだというテーマも明瞭で、かなりの力作ではある。
ではあるが、オレはこの映画、ダメ。
わざわざこんなめんどくさいことした意味がどこにあるのか!?と思うのだ。
ひとつの時代の話でいいじゃない。それがホントに普遍性のあるものであれば、わざわざ3つの時代を並べて普遍性を見せるなんてめんどくさいことしなくていいはずであるからだ。
つまりこの映画、3人の大女優の顔見せ興行なんだね。もしくは、カッコつけたかった映画ね。
おさんかた、みなさんそれぞれ立てます。でありながら、ただ3人並べるだけではない構成の妙で見せます。かつてない映画。つまり、これはアートなんです、芸術なんです−と声高に言ってるだけの映画にしか思えないのだ。
つまり、制作者たちの自己マン映画という臭みを感じずにはいられないのだ。
一言で言えば、感動がないのだ。
とはいっても、オレはこの映画の構成、いつかパクれないものかと、虎視眈々でもないけど、今、思っているけどね。
それくらいには、魅力的な構成ではあった。
『アバウト・シュミット』。
逆にこの映画、
一言で言えば、感動があった。
まず第一に、ジャック・ニコルソンがすばらしすぎるほどすばらしい。
ニコルソンと言えば、『イージー・ライダー』の昔から常に見るものに対して意識的な気持にさせる俳優ではあったが、オレ自身はそれほど好きという俳優ではなかった。
ところが、今回のこの映画、ホント、ニコルソン、すばらしいです。
最近のニコルソンの持ち味である、自ずからの醜悪さを過剰に表現するという芸風−例えば『バットマン』とか『恋愛小説家』とか−は、ぐっと控えめになり、あるがままの自分をたんたんとさりげなく自然体で提出、表現しているのだが、そのたたずまいのなんといいこと! かわいく、そして渋い。つまり、実に魅力的なのだ(2、3日後、ビデオで俳優ショーン・ペンが監督したニコルソン主演の『プレッジ』という映画も見たが、このニコルソンも実にいい。この2本の映画、主人公であるニコルソンが、『シュミット』では会社を、『プレッジ』では警察を−退職する日というところから物語が始まる。そしてテーマも、大胆に一言で言ってしまうと、老人になってから自分探しの旅に出るという部分で共通する。結末は、『プレッジ』では悲劇、『シュミット』ではハッピイという大きな違いがあるが…いずれにしてもこの2作、比較対照すると、実に面白いものがあると思える)。
そして、そのニコルソンの持ち味を引き出した脚本、演出、ともに快調で、これぞ傑作。
こういう映画に出会うと、一般映画も、ハリウッドも、まだまだ捨てたもんじゃないなと思うのだな。『ミザリー』のアカデミー賞女優キャシー・ベイツのアッとおどろく衝撃的なヌードもあるし(オッパイをおがめる!)、この映画はおすすめします、積極的に。
映画のあとは清美の「銀河系」。朝まで飲む。

2003.7.10(木)

次回オーピー作品のプロット上がる。次は久々の「痴漢電車」がついにきてしまった。コメディでという条件。クランクインは9月上旬の予定だ。

2003.7.11(金)

オレの友人の伊井一郎が書いた『女剣一代/聞書き「女剣劇役者・中野弘子伝」』という本を読む。
伊井はオレの古い友人で、学生時代、演劇青年時代からのつき合いだからもう30年以上にもなるか。
彼は昔は芝居のホンを書いたり役者もしたりしていたが、基本的にはモノ書き、評論家体質のヤツで、そのヤツの労作がここに完成したというわけ。
どんな内容の本かというと、まさにタイトルどおりの本なのだが、もう少し具体的に言うと、…ンー、ここは本の帯の文句をそのまま引用しよう。
「未だ語られることがなかった『女剣劇』最後の伝説。『ああそれなのに』の美ち奴も、お嬢こと美空ひばりも惚れた!」
「男装の女剣士 中野弘子伝」
「まさに運命的なめぐり合わせによって誕生した奇跡の聞書きといえよう。これは後世に遺すべき、大衆芸能に関する貴重な文献となるであろう」(吉村平吉)
とあるが、この本の内容とテーマはまさにこの帯の文句につきるといえる。
大正から昭和30年代くらいまでに至る大衆芸能の歴史に少しでも興味のある人にとっては、まさにとっておきの勉強の書であり、この本を読むことは、まさに胸踊る体験になるであろう−と、読み終えたオレは思うのだ。
そんなわけで、この本おすすめします。発行は新宿書房。定価は3800円。少し高いと思えるかもしれないが、定価の何倍もの内容の実に密度の濃い本であるということを保障します。
ぜひ読んでみて下さい。

2003.7.13(日)

その伊井が主宰したイベント「懐古調侠艶会/夢のキャバレー」を見に行く。場所は四谷のコア石響というトコで、これまたこういうイベントやるにはうってつけというか、はまりすぎというか、つまりはそういうトコ。
田辺一鶴を始めとした老芸人たちのパフォーマンスの数々。年寄りなだけに肩の力は抜けてはいるが、サービス精神の瑰の魂の連弾の3時間。
ワイン飲み放題ということもあり、すっかりワインと芸に酔ってしまう。
これほど楽しいとは思わなかった。こんなに面白いんだったらもっと他にも誘えばよかった。
そのあとは阿佐ヶ谷「まるきや」へ。またもや朝まで飲んでしまう。

2003.7.14(月)

次回オーピー作品「痴漢電車」のプロット上がる。ミュージカル風にしたいという大いなる野心作−になる予定。

2003.7.15(火)

またも清美の店「銀河系」で朝まで飲んでしまう。

2003.7.18(金)

オーピー森山組の役者リハ。森山の今年3作目、計5作目となる。脚本は佐野和宏。出演の女優陣は、佐々木日記、柏木舞、山口玲子というゴーカ版。森山初のコメディ。さて、どうなるか?
夜は、シアターTOPSで芝居。ONEOR8の『鈴とファンフーレ』。
作・演出の田村くんの才能は買うが、今回はちょっと…。田村くんの超日常的リアリズムのスタイルにも、今回は具みを感じてしまい、入っていきずらかったのだ。
でも客は満員です。ンー。