2003.5.23(金)

森山組『純愛夫婦』映倫試写。はっきり言って、今のオレは目前に迫った『ノーパン秘書2』のことをやっていなくてはいけない状況。とても他のことする余裕ないのだが、プロデューサーの責任として仕方なく顔を出す。
午後1時から。つまり、朝の10時までコンテやっていたので、そのまま完徹のまま行ったのだった。
眠っちゃうかな?と思っていたのだが、若干からみのシーンで眠気におそわれたくらいで、最後までキチンと見れた。
やはり、この映画いいです。みなさんの評価が楽しみなところです。
試写後は目白へ移動。森角の劇団・天然工房の公演『ソプラノ』を見る。
演出も、役者も、ホントうまくなってきた。見事なものだ。でも何かもの足りない。なにか? それは、脚本の世界観だ。一言で言うと、毒がないのだ。
演劇なんて、しょせんはカブク者の世界(歌舞伎の語源。かぶいた人=傾いた人。つまり、世の中からずれている人、ずれてしまった人の意)。つまりは、「ろくでなし」の世界だ。
といって、その「カブク者の世界」、「ろくでなしの世界」、つまりは「毒」の世界は、人間の一般社会において、ホントに特殊な世界かというと、決してそういうことはなくて、人間なんて、しょせんはみんな「ろくでなし」であるという考え方もあるわけで、そうなると、とても普遍的な世界観でもあるわけだ。
その観点から森角の芝居を見ると、今や、今回や前回の作品には、やはりもの足りなさを感じてしまうと言わざるをえない。
シェイクスピアが『マクベス』で言っている「きれいはきたない、きたないはきれい」は、表裏一体の世界観を示していると思うが、例えていうと、森角の芝居には「表」しかないのだ。その「裏」の部分、つまりは、人様にはあえて見せたくない部分、隠しておきたい部分、つまりは「毒」の部分をこれからどう森角的スタイルの中に取り入れ、消化し、形として出していくか…そこにこそ今後の森角のテーマがあると思うのだ。
極論を言えば、「毒」こそが、演劇が描くべき究極のテーマであり、コメディだから「毒」なんていらないのだと言うのならば、それはあまりにも自らの演劇的可能性を閉ざしてゆくことになると思うのだが…。ま、今度ゆっくり森角と話そうと思うのだ。
芝居のあとは真っすぐ家に帰り、『ノーパン秘書2』のコンテを続行。気が入っているせいか、前夜完徹にもかかわらず、朝までやってしまう。ま、ギリギリ、セーフね。

2003.5.24(土)

クランクイン前日。夕方、例によって、キャメラマン、助監督と会って、最終的なコンテの確認。今回のキャメラは小山田。オレは彼と組むのは初めて。しかし、助手時代の彼は、何度もオレの組に来てるし、その点、気心知れていることだし、それに、前回の森山組『純愛夫婦』のキャメラもよかったし…ということで実に楽しみなのだ。

2003.5.25(日)〜27(火)

新東宝作品『ノーパン秘書2 悶絶大股開き』撮影。
森山組から数えると、ここ1ヶ月で3本目の撮影だ。息づく間もないが、精神的には実にラクな気分だ。つまり、これだけ続くと、撮影前のいやなプレッシャーがないというか、プレッシャーを感じてるヒマもないというか、つまりは、ずっとのった状態という感じで、実にいい感じなのだ。これからは意図的に、年に1回くらい2本撮りやりたいなという気分だ(ま、会社のつごうもあるし、なかなかそうもいかないけどね)。
キャスティング。西園貴更(ピンクデビューの新人。本読みでは安心させてくれたけと、さて、どうかね?)。酒井あずさ(『ノーパン秘書』に続いての社長夫人役。今回はよりパワーアップした演技を期待)。望月梨央(今年のオレの監督作全部出てるので、これで早くもデビュー4作目。彼女のやる気、そしてHシーンに期待だね)。柏木舞(デビュー3作目。石動氏から、彼女の人気高いですよと聞き、急遽役を作る。ま、特別出演て感じかな)。本多菊次朗(1年前の『デリヘル嬢』でオレの組初出演。以後全部出てて、これで7本連続出場。今回は得意の(?)社長役。がんばってね)。他は、樹かず、神戸顕一、銀治、五代親子、松元義和(オレの前作『不倫妻の淫らな午後』でデビュー。2本目)、そして久々のオレといったところ。
実は今回の作品、久々の2日撮り(ちなみに、97年の『美人秘書 パンストを剥ぐ』・佐々木基子デビュー作、99年の『不倫女医の舌技カルテ』・河村栞デビュー作、以来の2日撮りだ)。
ホントは2日でやるにはかなりきついのだが、3日にしたら「アカ」が出そうなので、ここは思い切って2日にしたというしだい。
勝負だ!

25日(日)。初日。

いつもどおり朝7時半新宿集合。
今日一日で台本全体の3分の1強を撮る予定。終了予定は翌日の朝の6時頃に設定。
まずは西新宿のとあるビルの屋上から実景をいっぱつ。本編中のラストカットだ。
次に新東宝のビルへ移動。実景を含めてオープンを2シーン。
京プラ前舗道で1シーン。中央公園で1シーン。
次に大久保近辺の北新宿公園へ移動して、その近辺で3シーン。
ちょうど昼になっていた。予定通り、公園で昼食。
午後1時過ぎ、西口の某シティホテルにチェックイン。ここで明日の朝までHシーンを4シーン撮るのだ。台本40ページ中10ページにまたがるHシーンだ。そう、今回の作品はHシーンが実に多いのだ。たぶんオレの全作品中でもHシーンの割合は最高に多いと思う。だから、2日でやれると言えるのだが…。
まずは、本多菊次朗(社長)と、望月梨央(OL)、樹かず(あやしい中国人)の芝居を一発。からみになだれ込む。からみでは、かずの出番はホンの少し。からみ、うまいけど演出上しかたがない。梨央、十分いやらしく期待に応えてくれる。
夕方5時頃から次のシーン。本多と酒井あずさ(社長夫人)、松元義和(サラリーマン)の3Pシーン。3Pとはいっても、ここも、一組はやっていて、一人は見ているというシチュエーション。まずは、見ている本多のカットのみを20カットほど撮り、次に、見られてるカップルを20カットほど撮り、最後に3人全員のカットという具合。
9時過ぎから、いよいよ6人登場のHシーン。本多、望月、酒井、それに、西園貴更(秘書役)、神戸顕一、銀治(ともにサラリーマン)が登場。
ここも片撮りをバンバンしていく。普段のオレって、流れがあるし、片撮りってめったにしないのだが、今回ほどHシーンのオンパレードだと、2日撮りということもあり、片撮りでガンガンやっていくしかないのだ。
だから、コンテも普段のHシーンに比べるとはるかに緻密。というか、普段はHシーンのコンテってけっこう現場主義で、そんなに準備段階で緻密に考えることってないのだ。
しかし今回は、2日撮りだし、Hシーンはやたら多いし、Hシーンの人数も多いしで、けっこう緻密にコンテ考えている。そうじゃないと、片撮りなんて出来ないしね。
本多が3人の女と順々にからんでいくということで実に長いからみであった。
午前3時半終了。ほぼ予定どおり。
それから新東宝へ移動。トイレのシーンを2つ。6時終了。
演出部と撮影部はタイトル撮り、ブツ撮りがあるので残り、オレと役者たちはそれにて解散。
オレはホテルにもどり、8時頃眠りにつく。

2003.5.26(月)

撮休。チェックアウトがあるので、2時間ほど眠って起床。11時にホテルを出る。
さて、何をしよう? 映画でも見るか? いや、眠ってしまうだろうから止めよう…と、あてどもなく新宿の街をさまよう。
そうだ、「キネ旬」を買おう。昨日、現場で神戸が「キネ旬」を開いて、「ここ見て下さいよ、岩下志麻さんのインタビューのページですよ。『心中天網島』の集合写真に若かりし監督が写っているじゃないですか!」。
ビックリした。ハタチのオレがそこにはいるではないか! 当時のオレは天井桟敷にいて、ある日のこと、寺山さんに呼ばれて「池島くん、キミ、将来は映画の監督になりたいと言っていたね。ぼくの友人の監督が映画を撮ってるので、勉強のため現場に行ってみないか」と言われたのだ。いちもにもなく「お願いします」と言っていたオレ。
そこが篠田正浩監督の『心中天網島』であったというわけ。
久々に「キネ旬」買ってしまった。
いつまでぶらついてても仕方ないので、それから家へもどる。
ケーブル見たり、ビデオ見たり、明日のコンテの確認などをしつつ、ダラダラと時を過ごす。
深夜の2時頃眠りにつく。

2003.5.27(火)

撮影2日目にして最終日。
朝7時集合。今日一日中、井荻のオフィス・セットでの撮影。
ガンガン回していく。
オレも気合入りまくり。ものすごいスピードとテンポだ。冴えまくっている。余りの冴え方に、自分で感動してしまう。オレってすごいなァ…。もう完ぺきにコーコツ状態ね。
終了、翌日の朝5時。予定より1時間オーバーしてしまったが、本来は2日はかかる量を、とにかく22時間でやれてしまったわけで、全然オーケーだよね。
2日間で撮ったカット数264カット。1日平均132カット。以前は1日に100カット以上撮るのはムリだと思っていたが、今回は100カットどころか、130だからね。
ま、今回は、セットの移動もほとんどないし、Hシーンがとても多いということで、2日撮りに挑戦したわけだが、内容的な手応えも充分にあるし、またひとつ自信がついたという気分だ。