2003.5.12(月) プロデュース作品・森山組『純愛夫婦 したたる愛液』(オーピー映画)アフレコ。 今回で4本目となる森山作品、今まではほっぽっていたのだが、今回は初めて現場にベタ付きして、3日の撮影で何とかやってしまうというコトをオレなりにレクチャーしたつもり。 ともかく3日で終って、オレとしては最大のテーマをクリアしたので、あとはとりあえず森山の世界。オレはもう関係ないやというところなのだが、そうもいかず、アフレコに顔を出す。 ついでに望月梨央をシネキャビンに呼んで、オレの次回オーピー作品に関する衣裳合わせ、そして、本読みもする(8日の役者打ち合わせに彼女来れなかったのだ)。 夜の9時頃スタジオをあとにして、次回の新東宝作品のヒロイン探し。とある事務所に顔を出し、何人かのAV嬢を紹介してもらう。明日も他の事務所のAV嬢を紹介してもらうので、今日のところはとりあえず保留。ともかく今日明日の人たちの中からえらぶしかないという追いつめられた状況ではあるのだ。 それから、オレの友人のTV制作会社の社長・草野にTELすると、今から会おうよと言う(今回の森山組で、草野のとこから現場人間たちが5人もエキストラで来てくれて、大いに助かったものだ)。 草野と久しぶりに飲んで(今ふと思ったが10数年ぶりのことだ)すっかりハイな気分になってしまったオレは、それから清美ちゃんの「銀河系」に顔を出す。 かなり酔ってしまったオレ。それからの記憶がアイマイ。クランクインの4日前なので何とか家に帰らなくてはと早朝の電車に乗ったことは乗ったのだが、ふと気づくと八王子だったりして、結局家にたどりついたのは朝の8時であった。 まいったよ。 2003.5.13(火) ロケハン。新東宝の『ノーパン秘書2』のほうだ。午後1時荻窪集合。ゆっくりで助かる。ま、見るとこもそんなにないということなんだけどね。 夕方6時ロケハン終了。 新宿の喫茶店で7時にモデルプロの社長およびモデルさんたちと面接。新東宝のヒロイン探しの最後の賭けだ。 せっかくだったけど来てくれたモデルさんの中にはイメージの人見あたらず。しかし、社長が何げに見せてくれた宣材の中にイメージの女性がいた!…のだった。 西園貴更という人(キサラと読む)。 さっそく社長がその人に連絡を取ってくれ、あっという間に新東宝作品のヒロイン決まる。 会ったこともない人にいきなり決めるなんて危険極まりないことだし、オレもめったにこういう決め方はしないのだが、ま、たまにはこういうこともあるということです。 やっと、というか、ともかく、新東宝『ノーパン秘書2』のヒロインが決まったオレは、ホッと一息。それから演出部の打ち合わせをはさみつつ、阿佐ヶ谷のStardustのママに今だに何のアイサツもしてないなと思い、阿佐ヶ谷へと行く(次回オーピー作品の方で、例によってstardustも借りるのだが、ちょっと前に「貸して」「いいよ」という話をして以来キチンとした話をしていなくて、一度行かなくちゃ…と思っていたってわけ)。 オーピーのクランクイン3日前なので、今日は最終電車で帰るつもりではいたのだったが、ふと気づくと、もはや電車はない。仕方がない。stardust→まるきやとハシゴ。 朝5時前の電車に乗る。6時前には家にたどりつくつもりでいたのだったが…。 ふと気づくと高尾にいたり東京駅にいたりして、結局たどりついたのは朝の9時。 クランクイン直前に2日も続けてこんなことしてるなんて…。オレは底なしのバカ。最低だ。 2003.5.14(水) 夕方起きる。やっとコンテに集中。 2003.5.15(木) オーピー作品クランクイン前日。夜の6時半、新宿集合。千葉の津田スタジオに今日のうちから入るという計画。 夜8時、スタジオ着。さっそくキャメラの飯岡ちゃん、助監督の佐藤吏(オレの組、ほぼ一年ぶり)とコンテ打ち合わせ。 11時過ぎ終了。酒を飲み出す。最初はみんないたのに、明け方の4時、オレだけ。16日は朝7時開始予定。2時間寝れるか…。オレも眠りに入る。 2003.5.16(金)〜5.18(日) オーピー作品『不倫妻の淫らな午後』(仮題『いつの日か、きっと…』)撮影。 今回の作品に向けてのオレ的なポイントは2つある。 ひとつは、今回のストーリー、いわゆるいい話なのだが、それをいかにピンク映画的に昇華させられるかということ。つまり、簡単に言うと、いい話をいい映画に出来るかということだ(ま、こんなことは、いつものことだが…)。 もうひとつは、一部、モノクロのフィルムを使うということだ(これはいつものことではない)。 ホームヘルパーの仕事に燃えている中年主婦が、ある日たずねた老人は、20年前の不倫相手だったというのが物語の導入部。20年前、その女は、妻子持ちのその男に真剣な恋をした。その男と一緒になりその男の世話をしたいと心から思ったものだが、しょせんかなわぬ恋。泣く泣くその男とは別れたのだった。その男は今やアルツが入ったボケ老人。女のこともまったく思い出せない。女にとっては、皮肉なことに、あなたの世話がしたいのという思いが20年の時をへて実現することになる…というのをタテ系に、その女とOLの不倫(ま、これもメインストーリーの相似形というわけです)、そして、その女の娘の恋愛(この娘がかしこいコで、父と母のことをとても客観的に、かつ愛情込めて見つめているのです)などを織り混ぜつつ展開する物語だ(五代暁子のオリジナル脚本)。 つまり、今回の話は回想が多いのです。そしてそれをモノクロで撮ろうというのが今回のお楽しみなのです。 オレの知る限り、カラー時代になってからのピンクでは初めてのモノクロ使用だと思う(今回は、オーピーと新東宝の2本撮りなので、仕上げの時間もいつもの倍になり、その分、時間がかかるといわれているモノクロの現像という技術的な問題もクリア出来るということで、今回の決定となったのだ)。 キャメラマンも乗ってるし(ちなみに今回は飯岡ちゃん)、なんかワクワクするのです。 初日。 朝6時半起床。7時撮影開始。2時間ほどしか眠ってないので、エンジンがからず、最初のシーンはかなりキツイ。 なにしろ今日はシーン数が多いのだ。全55シーン中、24シーンが今日の予定。しかも、今日は、老人と中年女のシーンばかりという、いきなり物語の佳境なのだ。 小さいシーンから順々につぶしていって、夕方、ついに、女と老人の20年振りの再会シーンとなる。いやー、力入りました(今回は、フィルムの量が多いのだ。オーピーからいつもどおりに支給される本数が19本。それ以外に、前回までの残りフィルムが約1本分。それから、特別に注文したモノクロフィルムが4本。つまりトータルで24本。いつもより、4、5本多いのだ。だから、その分は残るはずだし、当然そのつもりでいたのだったが…)。 そんなわけで(つまりフィルムの量が多いので気が大きくなって)今回は、ギジ・マルチで撮影するシーンが実に多いのだ(ギジ・マルチとは、オレ的な言い方で、ホントは何というのか分からないのだが、どういうことかというと、例えば2人の俳優の会話のシーンで、カットバックでつなげていく場合、2カットで撮ってしまうということだ。つまり、まず一人の俳優の絵を長回しで撮ってしまい、次にもう一人の俳優主体の絵も長回しで撮ってしまう。そして編集でカットバックさせていくというやり方だ。このやり方だと、単純にいってフィルムが2倍消費するわけで、その意味ではフィルムの許容量がきびしいピンク映画的には、向いていないやり方である)。 2人の重要なシーンのほとんどをこのやり方でやりました。オレ的にも、これほどギジ・マルチを多用したのは初めてだった。 佐々木基子がすばらしい。その一言です。久しぶりに本格的な女優に出てもらい、とても新鮮だった。 牧村耕二もいいよ。やはりガラがいいというのか、オープンロケに行ってた時、近所のオバサンが撮影を見ていて、「あのおじいさんも役者さんなんですか?」と聞いてきたのだ。つまり本物の老人に見られたということ。これだけでもすごい。 終了、深夜2時半。 世田谷のセメントマッチ着、4時半。 ビールを飲み、シャワーを浴び、ベッドに入ったのは6時だった。 2日目。 8時新宿集合。まずは東高円寺での墓地のロケ。それから、東ヶ丘のスタジオ近辺に移動して、オープンを数シーン。昼過ぎ、スタジオに入る。 今日は佐々木基子の家族のシーンが中心。 基子の娘役の月島のあ(新人)の存在感が面白い。このコ、ひょっとしてかなりいいかも…。 終了、明け方の5時。オレはみんなより先にタクシーに乗って、東ヶ丘から近いセメントマッチ事務所まで帰り、シャワーを浴び、ビールを飲み、7時頃ベッドに入る。明日の集合は11時。3時間眠れる。 最終日。 11時新宿集合。近辺のオフィス街で2シーン。それから北区の滝野川公園へ移動し、回想の3シーン。 午後3時、駒込のラブホテルに入る。そして、Hシーンを中心に8シーン。終了、深夜1時。 阿佐ヶ谷のstardustへ移動。バーのシーンを2つ。これにてすべて終了。夜明けの5時。みんなバレたあとも、オレと牧やんと望月梨央の3人はstardustで朝の7時まで飲み、それにて解散。 朝8時、国分寺の自宅に到着。シャワーを浴び、バーボンを飲む。体中にすさまじくも心地いい疲労感と、たとえようもない達成感が広がっていく。一言で言えば、幸福感か。 10時、ベッドに入る。 2003.5.19(月) 夕方の6時頃、目をさます。起きる。明日は次の新東宝の『ノーパン秘書2』の役者リハーサル。準備をしなくては…。 2003.5.20(火) 午前11時まで『ノーパン秘書2』の役者リハ準備。少し寝なくてはとベッドに入る。2、3時間眠り、午後1時起きる。 午後4時から新東宝にて役者リハ。ヒロイン西園貴更と初めて会う。思ったとおりの雰囲気。プラス、芝居っ気もあるし、気立てもよさそうでホッとする。 終了、夜の9時。撮影の小山田勝治と近所の飲み屋へ行き、最終電車ギリギリまで酒を飲む。小山田氏とやるのは初めてなのだ。何にしても、「初めて」というのはいいものだ。 新東宝のクランクインは25日だ。 2003.5.21(水) 森山組『純愛夫婦 したたる愛液』初号試写。 森山にとって4本目の監督作品。オレは正直言って今回初めて「いい」と思った。 脚本がいい(脚本・五代暁子)、演出がいい、役者がいい、撮影がいい(撮影・小山田勝治)、音楽がいい(音楽・大場一魅)…つもり、全部いいのだ。 森山の映画で泣かされるなんて…思ってもいなかった。うれしいオドロキだ。 あとは森山がどこまで分かってくれるかだ。今回は森山にとって初の3日撮り作品。今までは、4日か5日でやっていた。つまり、時間をかければいいということは、はっきり言って、全くないのだ。要は、いかに効率よく集中力を持続させるかということなのだ。 その意味で、また次回作が重要な勝負所となってきた森山だ。 それにしても、オレは今回、野球の監督が胃が痛くなるということがよく分かった。今回の現場でのオレの立場って野球の監督そのものだったのだ。つまり、戦況をじっと見てるしかないのだ。自分では、打つことも、投げることも、走ることも、守ることも、何も出来ないのだ。「なんでこうなるんだよ?! なんでそんな簡単なこと出来ないのだ。じっと見てるしかないのだ。そして、ギリギリの段階でやっと叱咤激励に立ち上がるという寸法。こりゃ体によくない。 映画の監督って、野球に例えると、チームの4番バッターであり、エースであり、キャップテンなのだ。そして野球の監督って、映画に例えると、プロデューサーなのだ。 そういうことが、よ〜く分かったのだった。 2003.5.22(木) 25日クランクインの次回作『ノーパン秘書2』のコンテ。翌日の午前10時まで。 |