2003.4.17(木)

ここ2、3日でいきなりバタバタと仕事が舞い込んで来て、5月中に3本やらなくてはならなくなる。5月はオーピーを1本やることになっていたのだが、それ以外に、新東宝とVシネマが1本ずつ舞い込んできたというわけ。新東宝は、ついこないだやったばかりの『ノーパン秘書』の2だ。去年の春頃にも、オーピーと新東宝の2本撮りというのをやってるので、その時の自信もあり、オレも何とかなるだろうと、思い切って3本やることにする。
とりあえず、決まっていたオーピーのスケジュールを白紙にもどして、3本やるためのスケジュールの研究。
Vシネは5月の10日から12日と決められていたので、これはキマリ。オーピーを5月16日クランクイン、新東宝を5月25日クランクインとする。
オーピー1本だと思ってのんびりかまえていたのだが、いきなりあわただしくなってきちゃったよ。

2003.4.18(金)

久しぶりに深町監督の初号試写をのぞく。
タイトルは『小説家の情事 不貞の快楽』。見てるうちに、「オッ、なんだコレは!?この妙な緊張感は何なんだ!?この妙な空気感は一体何なんだ!?」と思い、いつしか画面に引きつけられていたのだった。
内容は一言で言うと、なかみつちゃん演じる中年の小説家を中心とした生と死のドラマ。
登場人物は誰一人として幸福ではない。いや、全員が破滅へと向かってゆく。それは、最初から運命として定められたかのようで、その意味では全員が運命に殉じ、自らの生を全うしていくのだ。あくまで静かにたんたんと…。そして、いさぎよく…。
オレは見てるうちに、昔、三島由紀夫が山下耕作の『総長賭博』をさして、「これはギリシア悲劇である」とズバリ見事に言い切ったのだが、その言葉を思い出していたのだった。
そう、この深町監督の新作は、まさに深町版の『総長賭博』であり、「ギリシア悲劇」であったのだ。運命に殉じて、自らの生と死を全うしていくという点。そして、それをあくまでシンプルにムダなく、余計なものを極限までそぎ落としたその演出スタイル。以上2点においてこの作品はまさに「ギリシア悲劇」である。
これは、還暦を迎えた監督の新たな境地への出発である。
いや、ピンクはやはり面白い。この傑作、心して見て下さい。
打ち上げ。またもや朝まで飲む。

2003.4.20(日)

森山組オーピー作品『純愛夫婦 したたる愛液』役者リハーサル。
キャスト。主役の中年男に牧村耕二(オレの関係作では初出演だ)。その男につきまとうフシギな女にまいまちこ(オレの作品に2本出てる)。他には、竹本泰志、高根綾、美奈、野上正義、城春樹…。
キャスティング、ばっちりです。あとは、赤字が出ないように、森山がしっかりと3日でやれるかどうか。ま、やってくれないとやばいんだけどね。
そんなわけで、楽しみではあります(オレも今回は初めて現場にベタ付きする予定だしね)。
事後は飲み会へと突入。まずは演出部演技部全員で新宿の居酒屋へ。2次会は阿佐ヶ谷のまるきや。森山と牧やんと竹本、そしてオレ。途中から奈賀毬子、佐々木麻由子も顔を出してくれ、大いに盛り上がり、飲んでしまう。結局、朝までね。

2003.4.22(火)

高根綾の大久保の事務所に顔を出し、台本を置いてくる。
原宿ラブ・ミー・テンダーへ行き、ELVISの新作CD3タイトル、新作Tシャツ3種、その他を購入。そうそう、ELVISの娘のリサマリーの初CDも購入。リサマリー、なかなかいい声でいいですよ。
渋谷アップリンク。オレの『超いんらん 姉妹どんぶり』を上映してくれるので、担当者と打ち合わせ。見に来てね。
セメントマッチ。演出部打ち合わせ。
忙しい一日だった。夜9時終了。あとは五代と、次回オーピー、そして新東宝についての打ち合わせ。飲みながら。終了、深夜2時。フーッ。

2003.4.23(水)

銀座で映画を2本。
スバル座で『リロ&スティッチ』。わがELVISの曲がガンガンにかかるというので楽しみにしていたが、映画はダメ。ディズニーものとしてはサイテーの出来だと思った。
日比谷映画で『ネメシス』。スター・トレックの新作。やはりこれもダメ。いかにピンクが面白いかということが、逆照射される。
阿佐ヶ谷。スターダスト、まるきや、とハシゴして朝まで飲んでしまう。

2003.4.25(金)

次のオーピー、新東宝の新人女優さがしで、いくつかのプロダクションを回る。
あいた時間に、新宿ピカデリーで『シカゴ』見る。昨今のアカデミー賞はテンから信じていないが、それでも「えっ!?こんなもんがアカデミー賞?!」と、あらためて驚かされたレベルの映画。それにしても最近はロクな新作がないなァ…。
夜、一魅と打ち合わせ。

2003.4.26(土)

5月10日にクランクイン予定だったVシネマが、メーカーのつごうで5月下旬にずれ込む。よって自動的にオレは監督出来なくなる。ホッとしつつ、少しはガッカリもしてる。
5月16日にクランクイン予定の次回オーピーのキャスティング始める。
新東宝の『ノーパン秘書2』のプロット上がる。さすが五代暁子。あっという間にバカバカしい快作を作ってくる。
森山組クランクイン前日。最終的なチェック。とにかく今回は3日でやるということ。オレもいきなり忙しくなってきたので、現場に行くのはヘビーなのだが、森山に頼まれたことだし、カクゴを決めて3日間付き合うつもりだ。

2003.4.27(日)〜29(火)

森山組『純愛夫婦 したたる愛液』撮影。

初日。
のっけから大変な日。まずはオープンをひとつやったあと、3ヶ所スタジオを回らなくてはならない。オレの予定では、終了は翌日の朝4時から5時の間。
朝7時集合。江戸川橋公園でオープンを一発。9時前にTスタジオに入る。最悪でも6時までに終らせたかったが、何とか6時半には撤収。駒込のホテルに向かう。
ホテルは最悪でも12時には撤収したい。なぜなら、そのあと行く予定の新宿の居酒屋は深夜1時までに行かなくてはならないからだ。1時過ぎると誰もいなくなってしまうのだ。となると、必然的に撮影日数は伸びる。
ホテルではHシーンが2つ。森山に確認すると、3時間で終らせますと言う。ということは、悪くても11時には終るだろう。撤収して出るのが11時半というところ。今日はここまで予定どおり来ているし、森山を信用し始めていたオレとしては、ついホッとして気をゆるめてしまった。役者たちとダベッて、そのあと少し眠ってしまったのだった。
ふと目をさましたら、11時。当然2つ目のからみをやってることだろうと思い、そばにいる役者に確認すると、驚いたことにまだひとつ目のヤツが終っていないという。
エッ!どういうことだ!とビックリしたオレは眠気も一瞬にしてさめ、からみをやってる別室へと急いだのだった。
そこからは、オレと森山の戦いだよね。
いきなりいつものヤツのペースになってる森山。このままでいくと、撮影が1日伸びるのは確実。そうならないためには、オレがガタガタ言うしかない。
12時までに終らせろとオレは言明。
いや、そんなムチャなと森山が言ったら、オレはいつでも現場をほっぽって帰るつもり。だってそうじゃない。森山から頼まれたんだからね。今回は赤字を出したくないんで現場仕切って下さいってね。オレはオレの言うとおりやるんならということで現場に付き合ってるんだからね。
さすが森山も(どういう心境であったかは分からんが)、そこからしゃかりきになり、なんと、オレが驚いたくらいのスピードで、なんとか深夜12時に2つ目のからみまで終らせたのだった。
撤収の時間があるので、オレだけ電車で新宿へ向かう。
目的の居酒屋に12時45分着。マスターからキーをあずかり、一人、撮影隊の来るのを待つ。
1時15分撮影隊到着。
4時半撮影終了。朝5時撤収。
終ってみれば予定どおりの一日であった。
朝、事務所に帰ると、次回オーピーの『いつの日か、きっと』の決定稿がテーブルに置かれていた。

2日目。
オール新橋ロケ。今日はどう考えても予定どおりいくしかない日なので(なぜなら、デイシーンとナイトシーンがはっきり分かれていて、昼のシーンは昼のうちに撮るしかないからだ)、オレも自分の組の準備もあるしで、オレは夕方過ぎに現場に顔を出す。
終了、夜9時。予定通りだ。
新宿に出て、森山、牧村耕二とションベン横町キクヤで酒を飲む。
とりあえず順調に来てる。問題は分量の多い明日だ。

最終日。
朝7時渋谷集合。オープンをいくつかやって10時過ぎに東ヶ丘のスタジオに入る。
オレは自分の組の準備というか、ロケハンをしながらの行動。昼前にスタジオに入る。
夕方、オレと森山の2度目の戦いとなる。
お前、あともう一日やって赤字出していいんならいいけどさ、そうしたくなかったら、今のペースの3倍は早くしないと明日の朝には終わらないよ−とオレ(翌日の朝5時終了がオレの目標。というか、それがギリの線なのだ)。
森山なりにマキが入る。
終了、翌日の朝6時。撤収7時。ほぼ予定通り。
そうして、今回の森山組は4本目にして、初めて赤字を出さない現場となったのだった。

朝、現場から事務所に戻ると、新東宝の次回作『ノーパン秘書2』の初稿がテーブルの上に置かれていた(事務所は五代暁子の協同の事務所なのだ)。

2003.4.30(水)

さっそく、『ノーパン秘書2』(仮題『赤の衝撃』)初稿を巡っての会社側とのミーティング。

2003.5.1(木)

森山組編集。さすがに3日撮りだと、いつもの森山組のように70〜80分とめちゃくちゃに長くはならない。67分という、いつものオレの組くらいの長さに編集される。

2003.5.2(金)

森山組オールラッシュ。再編集。
オレの次回オーピー作品『いつの日か、きっと』印刷に入れる。

2003.5.3(土)

『いつの日か、きっと』の印刷台本上がる。演出部、俳優と最初の打ち合わせ。
夜、音楽の大場一魅と会い、打ち合わせ。
それから、まるきや、スターダストとハシゴ。久しぶりに佐々木麻由子嬢と会う。朝まで飲む。

2003.5.4(日)

五代と、新東宝『ノーパン秘書2』の脚本直し。

2003.5.6(火)

オーピー『いつの日か、きっと』ロケハン。
演出部チーフは久しぶりに佐藤吏。

2003.5.7(水)

五代と、新東宝『ノーパン秘書2』の脚本直し。

2003.5.8(木)

オーピー『いつの日か、きっと』(公開タイトル『不倫妻の淫らな午後』)の役者リハーサル。
キャスティング。佐々木基子(オレの組でデビュー。今回なんと6年ぶり!)。望月梨央(前作『牝猫 くびれ腰』でデビュー。2作目)。月島のあ(Vシネ・クイーン。ピンクデビューとなる)。牧村耕二(オレの組、初出演!)。本多菊次朗(オレの組6本連続出演となる)。竹本泰志(オレの組2本目)。神戸顕一(言うまでもないヤツ)。松元義和(新人)。
以上。
久しぶりの基子さんがすばらしい(考えてみれば、オレが名づけ親なんだよね)。本読みだけで、オレばかりか、全員泣きそうになる。オレの組では久々に本格派の女優の登場だ。とりあえず、文句なし。
月島のあ。このコ、なかなかいい。味がある。楽しみだ。
撒きんも楽しみ。うまくいったら、男優賞ものの役なのだ。がんばって欲しい。
リハのあとは渋谷へ。アップリンク・ファクトリーで上映中の『超いんらん 姉妹どんぶり』のトークショー出演のためだ。
上映前に少し時間があいたので、モスバーガーで時間をつぶしていると、アップリンクのスタッフに会う。入りはどう?と聞くと、今回の企画(「恐怖の箱」のイベント名で小沼勝監督の『箱の中の女』などホラー系ポルノを5本上映する企画)客入り悪いんですと答えるではないか。折からの雨もあって、もし客がゼロだったらどうしようとマジに心配してしまった。
しかしその心配は杞憂のものとなり、場内はそこそこの客で埋まってくれた。ホッとしたよ。上映前には何人かの客に声を掛けられる。「甘い生活」楽しんで読んでますよ、と言ってくれる人もいたりして大いにうれしいオレ。
映画が始まる。ビデオ上映というのがチト悲しかったが、ま、仕方がない。
久々にこの映画見たわけだが、今回思ったのは、時の流れのゆったりした感じがとてもいいなァと思った。フツーのピンクより少し長い64分という尺のおかげもあるだろう。
トークショー。お客の意見を少しでも聞きたいということで、女性客を中心にコメントを求める。結局、女性客全員にコメントをもらえた。みなさん、一人もしりごみすることなく堂々と御意見、質問をしてくださるのに少々感心。ホントにコアな映画マニアなんだなと思う。
終了後は、ゲストの水原香菜恵、佐藤吏、客で来てくれた牧村耕二、まいまちこと飲みに行く。
しかし、飲んでも今ひとつオレの気分は盛り上がらない。もうすぐ2本の映画の撮影に入ると思うと、心ここにあらず状態というか、話題に入っていけないのだ。オレにしては珍しく12時に解散して、まっすぐ家に帰る。

2003.5.9(金)

新東宝『ノーパン秘書2』(仮題『赤の衝撃』)決定稿上がる。

2003.5.10(土)

『ノーパン秘書2』の印刷台本上がる。助監督の小川と打ち合わせ。
それにしても、今だにヒロインが決まらないのだ。困った。
オーピー『いつの日か、きっと』(公開タイトル『不倫妻の淫らな午後』)は、16日クランクイン。
新東宝『ノーパン秘書2』は、25日クランクインだ。
今、すごく重い気分だ。イン前はいつもそうだが、今回はそれが2倍だからね。

●インフォメーション●
6月7日、今年もまた行きます。浜松シネマハウス新映。新作『牝猫 くびれ腰』の封切上映。出演女優の望月梨央、美奈が同行。近辺の方はぜひ見に来て下さい。ヨロシク。