2003.2.16(日)

オレの次回オーピー作品(仮題『DENPA−KEI』)の台本が上がったので、今日から女優陣には個別に会って渡すことにする。とりあえず今日は、望月梨央。
ついでに芝居も一緒に行く。
森角の劇団天然工房の池袋シアターグリーンでの12日間興行『トラブラ トラップ トラベル』のAバージョン「トラブル篇」を見る。
相変わらずのドタバタ・コメディ。昇り調子の集団独特の熱気、満員の客席、そして軽い笑い……と、梨央のような一見の客、また、芝居を見なれていない客には、とても受けてはいた。しかし…。
オレはあまりかえなかった。一言で言うと、大テーマが希薄なのだ去年の森角の芝居(ユーレイが出てくるヤツ)で、森角の芝居におけるひとつの到達点を見てしまったオレとしては、この程度の笑いとカンドーでごまかさないでよと思ってしまうのだ。つまり、去年のユーレイの芝居と同レベル、もしくは、それ以上のモノを求めてしまっているからだ。つまり、見方がキビシイのだ。去年のユーレイの芝居と同レベルもしくはそれ以上の芝居を、3回4回と連発した時、森角劇団は大ブレークするに違いないと予言したオレとしては、ちょっとジクジたる思い−ってヤツなのだ。
ま、森角には、オレを喜ばせる芝居を連発してよと言っておこう。その時は、きっと、大ブレークするから。オレとしても、よりキビシク見ていこうと思う。
芝居のあとは、見に来ていた石動三六氏も誘い飲みに行く。池袋で2、3時間飲んで高円寺に移動。オレの次回作出演女優の一人、母レモンの水子も呼び、また、梨央も高円寺の飲み仲間を呼び、ガンガンに盛り上がるのだった。

2003.2.17(月)

今日は、出演女優の一人、美奈と会い打ち合わせ、というか、飲みに行く。これで3人の女優全員に台本が行った。あとの人は郵送ね。

2003.2.18(火)

引っ越したばかりのセメントマッチのニュー事務所の片づけ。脚本家の五代暁子との共同事務所。彼女もやってきて、作業のあとは豪徳寺駅前のメチャうまの焼鳥屋で酒を飲んで今日はおしまい。

2003.2.19(水)

『DENPA−KEI』ロケハン。朝8時新宿集合。このいきなりの昼夜逆転が普段はダラダラと朝まで酒を呑んでいるオレにとっては実に刺激的でいいのだ。いよいよ近づいてきたというけじめになって、いきなり気が入ってくるのだ。
まずは千葉の九十九里浜まで。なんと驚いたことに1時間20分で海辺に着いた。遠い遠いというイメージがあるが、渋滞が無いとあっという間に着くものなのね。
それから有明、お台場あたりを見て回り、次のロケハン地、新宿に着いたのがちょうどお昼。予定より2時間も早い。
新宿近辺をざっと見て回り、次は助監督の田中と小川のアパート。キャメラの鈴木一博の意見で、田中のアパートがロケ地に決定。
そして最後、色華昇子さんのマンション。
いや〜、助監督たちから「スゴイ、スゴイ」と聞いていたけど、これが聞きしにまさるスゴさ。いや、これは映画を見てビックリして欲しいので何も言うまい。一言、ものすごい部屋です。今まで誰もあんな部屋見たことないでしょう。
ロケハン、夜の9時頃終了。このあとも仕事のある一博さん、助監督たちと別れて、オレは一人、阿佐ヶ谷Stardustへ。今回も借りる予定なので、ロケハンも兼ねてね。

2003.2.20(木)

ロケハン。昼の1時集合。今日はメインセットとなる東ヶ丘のスタジオのロケハンのみ。ついでに簡単な打ち合わせもして、夕方5時終了。
6時、セメントマッチ。助監督たちは荷物の整理。オレは望月梨央を呼んで特別レッスン。緊張しいの彼女のために2人でビールを飲みながらの特訓。4時間ほどやる。充分な成果あり。声も出るようになったし、なにより、カッコつける自分を捨ててくれるようになる。演技って、カッコつける自分とオサラバするところから始まるもんだからね。つまり、さらすということね。恥ずかしいと思っている自分のある部分、人前では見せたくないと思っている自分の精神と肉体の恥部−それをかなぐり捨てるとこから演技は始まるのだ。梨央もだいぶ、体で分かってくれたようだ。
最後は駅前の飲み屋でおつかれ会をやり解散。
この2日間でだいぶ気が入ってきた。
やるぞ!

2003.2.21(金)

コンテ。

2003.2.22(土)

役者リハーサル・衣裳合わせ。午前10時集合。終了、夕方5時半。
キャスティング。主役、本多菊次朗。オレの映画5本連続出場となる彼だが、今回は初の完全なる一人主役。頑張ってもらうしかない。女優陣は、望月梨央、美奈のAVギャル系と、不思議系の母レモン水子、そして増々カルト化している色華昇子の4人。昇子さん以外は全員ピンク初出演という瑞々しさ。たまりません。はっり言って、みんなヘタです。でも何か妙にいいんだなァ…。絶妙なヘタウマ具合とでもいおうか…。今からどうHを撮ろうか、ワクワクするのだ。他に、樹かず(監督してからうまくなったね)、神戸顕一というレギュラー陣、そして母レモンの片割れ、花女も花をそえる。
普段は終了後は呑み会となるのだが、若干のロケハンを残していたオレと一博さんと田中はみんなと別れロケハンへ。
ロケハン終了後は新東宝へ直行。
オレの組とほとんど同時進行で準備している後藤大輔組の打ち合わせ(今年になってから、監督作2本、プロデュース作2本とやっていて、こりゃ遊ぶヒマないわ)。
3月13日のクランクインまで3週間を切って、今だ女優陣が一人も決まっていないのだ。そこを一気に決めてしまおうという話だ。ヒロインが決まらないのが、何といってもつらい。前回森山組『美人保健室』主役の麻木涼子を後藤ちゃんはえらく気に入ってしまい、会社もOKで、彼女さえOKなら苦労はないのだが、彼女の方でちょっと出来ない事情があって、暗礁に乗り上げてしまっているのだ。
結局、明日もう一度、最後のトライを彼女にしてみますと、後藤ちゃんが言い、これにて打ち合わせ終了。新宿の居酒屋で飲み会となる。

2003.2.23(日)

助監督の笹木と打ち合わせのため新宿にいるオレのケータイに後藤ちゃんから吉報が入る。「麻木涼子、OKです。今、2人で祝杯あげています。来ませんか?」。もちろん、飛んで行く。肩の荷がおりたというか、ホッとした。自らの出来ない事情を一気にクリアして後藤作品に出る決意決心をしてくれた麻木涼子には、感謝感謝。最後の決め手は、後藤ちゃんの台本(仮題『夜明けの牛』)。ま、それだけいいホンなのです。

2003.2.24(月)

音楽の大場一魅と打ち合わせ。今回は仕上げの時間がかなりギチギチにきびしいので、今から打ち合わせておこうということです。
合間をぬってシネマミラノで『アレックス』見る。大好きなモニカ・ベルッチ(あの『マレーナ』のヒロインね)が出てるし、彼女のヌードがたくさんおがめるHっぽい映画と思い何げに見たりだが、引っくり返ったね。こういうのを本当の意味での衝撃の映画っていうんだろう。そう、面白いとか、つまらないとか、いいとか、悪いとか、そういう言葉が(映画を語る時、そのほとんどがこの4言葉に集約されているのだが)まったく意味の持たないというか、いかにチンプな言葉であるというか、いや、そんなことさえも言うのが恥ずかしくなるような、この映画の圧倒的な生理感覚。そう、生理感覚のみで、性を、暴力を、叩きつけ、そして、愛を、描き切ろうという、まさに画期的な映画。
オレはショックの余り、一魅とわかれたとは一人飲み屋に入り、増々自分の映画のコンテに熱中したのだった。

2003.2.25(火)〜26(水)

終日コンテ。こうして、森角の芝居のBバージョンは見れないまま時は過ぎて行くのだった。

2003.2.27(木)

昼12時に東映ラボで演出部、そして鈴木一博さんと集合して最終的なコンテ打ち合わせ。
4時から、プロデュース作品、オーピー映画・森山の新作『美人保健室』初号試写。
絵作りはガンバッた。力作とは言える。しかし、一番大事な、人間を描くということ、ここでは、ヒロインのたゆたう気持ち、心情を的確にあぶりだし描くということがスポンと抜け落ちているというのが、オレの印象。
つまり、人間と格闘していないのだ。
映画は、絵じゃないよ−と言いたい。
きびしい言い方かもしれないが、森山ももう3本目だし、甘いことは言ってられない。黒沢久子さんの脚本がステキなホンであっただけに、より残念だ。
打ち上げ。オレは朝の4時まで飲む。クランクインを3日後に控えてはいるが、最終的なコンテ打ち合わせをやってしまえたので、気が抜けてしまい、ま、いいかと飲んでしまったのだった。

2003.2.28(金)

森山組映倫試写。13時から。あんまり寝てないのでキツかったが、自分のせいだし、しようがないのでもちろん行く。
森山の映画、会社には好評のうちに迎えられる。会社の好意点は集約すると3点。ひとつ、からみが多かった。ひとつ、ヒロインの麻木涼子がいい。芝居に力があるし、巨乳である。そして、もうひとつが、ロケーションと絵がすばらしかった。まさにそのとおりだと思う。
でもね、とオレは言いたい。からみって多ければいいってもんじゃない。えげつなく、かつ、からみでさえ、いや、さえじゃない、からみでも、ンー、ちょっと違うが、ま、いいか、からみでも人間を描くもんだし、etc…(そうそう、麻木涼子にはオレも文句ないです。すばらしい可能性を感じます、彼女には。今回は助けられました)。
ま、でもいいか。苦労した分、会社にはほめられたし、すぐ次のが決まったしね。森山の次、4月下旬撮影と定められたのだ。次はオレの言うとおりやって赤字出すなよ。アイツ、3本続けて大赤字なんです。
夜。阿佐ヶ谷アルスノーヴァで芝居。劇団遊劇社の『スキヤキ』見る。
以後、打ち上げ、そして、スターダスト、そして、居酒屋と飲み続け、またも朝まで。イン前にして、もうヘロヘロだよ。

2003.3.2(日)〜4(火)

オーピー作品『DENPA−KEI』、公開タイトル『牝猫 くびれ腰』撮影。
今回の作品の内容に関しては今までほとんど触れていない。つまりは、そういう、ネタをバラしたくない、作品なのだ。ひとつだけヒントを言うと、オーピーで6、7年前撮って好評を得た『美人秘書 パンストを剥ぐ』という作品があるのだが、今回のねらいは、その『美人秘書』の構造を、よりヘビーに、よりディープに、よりエンタテインメントに、よりゴーカケンラン風にやってみたいということなのだ(『美人秘書』の内容を一言で言うと、一人のホームレスの老人の幻想の世界、白日夢の世界を描いたものだ。主演に佐野和宏。佐々木基子はこれがピンクデビュー作となる。その年のピンク大賞4位。撮影日数、究極の2日という映画であった)。
ま、ここまで言っちゃったら、内容を言ったに等しいか? ま、オレにしてみたら、一種実験的な映画でもある。

初日。
前日からの大雨が、明け方の4時になっても降りやまず、おまけにカミナリまで鳴り響き、実に心細い気分で初日の朝を迎えたのだった。
朝6時、助監督からのモーニングコールに起こされ、さっそく表に出てみると、一応雨は上がっている。しかし、空は厚い灰色の雲におおわれ、一種不気味な感じ。なんといっても今日は朝一から九十九里浜でのロケなのだ。雨に降られてしまっては映画にならないという最大のヤマ場を初日から迎えてるのだ。いつものことだが、ギャンブルだな…。
7時新宿集合出発。8時半九十九里浜着。空は相変わらず厚い雲。突風が吹き、海は大荒れ。寒い、実に寒い。ムリはすまい。最初の予定では腰くらいまで水につかるくらいのところでやるつもりであったが、何メートルという波がいきなり来るので、ヒザくらいのとこでやることにする。それでもいきなりの大波で全員ビッショリとなる。本多菊次朗、波にもまれての大熱演。水子ちゃんは大波からくるたびに引っくり返ってのたうち回る。色華昇子さんは、何が来ても微動だにせず永遠にニコニコと手を振り続ける。なんとたくましいことか!
11時半、決死的な(でもないか)九十九里浜での撮影終了。地元の旅館で役者たちは熱い風呂に入り、全員で昼食。
午後1時、出発。とにかく無事に終ってくれた。天気も徐々に回復し晴間も見えてきた。ホッとしつつ一路東京へ。
午後2時、お台場近辺の広大なゴミ処理場着。ここでワンシーン。始めるやいきなりパトカーがやってきて、撮影出来なくところであったが、ここではチーフの田中がうまく立ち回り、何とか無事終了。ついてる。すごくついてる。なんせ身のタケほどのススキにおおわれた平原で、そのススキがパトカーのポリスたちから、オレたちを見えなくしてくれたからだ。
午後4時、新宿のとある公園着。お日様との戦いとなる。5時半終了。ギリギリ間にあう。もうひとつデイシーンあったのだが、それは結局この日はこぼすことになる。
6時半、板橋の色華宅着。ここで5シーン。強烈な、余りに強烈な美と毒気に彩られた色華館。2、3時間ならそれも面白がっていられるが、5時間6時間となると、その余りの毒気に当てられ酸欠状態となる。かなりきつかったが、これは絵で見たらすごいだろうなと思う。公開を待て。楽しみに待て。
深夜1時半終了。撤収2時。

2日目。
この日は一番ラクな日ではあるが、ヤマ場がまたひとつある。1メートル半くらいのゴミに埋もれた部屋と、その中を徘徊する一人の男というシーンがね。今のオレにも、さてどうなるのか予測のつかない設定。ワクワクするね。
7時半、新宿集合出発。新宿近辺で6シーン消化。昼頃、椎名町のチーフの田中のアパートへ直行。
午後1時、田中宅直。そう、ここが「ゴミに埋もれた部屋」なのだ。部屋を覗いてうれしくなる。よくぞここまで! やってくれた! 夢にまで見た部屋がそこにあるのだ。田中、笹木、柴田−いい演出部だ。
ワクワクして撮影する。
終了、4時半。阿佐ヶ谷スターダストへ。
5時半スターダスト着。ここで4シーン。初めてスターダストのすべてを見せた。洗面所までね。
終了9時半。今日はこれにて全て終了。ママにちょっと飲んでいく?と言われ、撮影の一博さんを誘い飲み出す。ふっと気づいたら11時半。入れたばかりのボトルが3分の2も減ってる。これはまずいと重い腰を上げる。
撮影中はいつもは梅ヶ丘の事務所に泊まっているのだが、阿佐ヶ谷からだと、自宅のある国分寺の方が近いので、今日は珍しく自宅にもどる。それがまずかったのだが…。

最終日。
新宿集合7時半。オレは間に合うように出たつもりだったが、なんと中央線で人身事故発生。電車30分以上動かず、オレの到着8時15分。大事な最終日が小一時間の遅れとなってしまったのだ(それにしても中央線は事故が多い。なんとかして欲しいよ)。
まずはオープンをいっぱつやり、それから東ヶ丘のスタジオに入る。あとは移動なし。終るまでこのスタジオのみの撮影。Hシーンもこの日に集中してるし、シーンも多いのだが、移動なしというのがオレをリラックスさせてくれる。
まずはHシーンから。美奈と樹かずのからみを二つ。美奈、いい。すごくいい。セクシーにしてダイナミック。美奈も樹も、もちろん前バリなし。前バリなし同士のからみを撮るなんて、ホント久しぶりという感じ。最近のオレは前バリを憎んでいるので、それだけでもうノリノリね(なぜ前バリを憎んでいるのかについては、2、3回前に書いた覚えがあるので、ここではくり返さないが、一言言うと、前バリをつけることによって安心してしまう、つまり、肉体の一部隠すことによって、精神まで隠してしまう俳優のなんと多いことか−と思うからだ。隠すな! 心を閉ざすな! なぜなら、それじゃあ芝居にならないからだ)。オレの理想とするピンク映画のからみを久々に撮れたのだった。
それから一気に15シーン。
望月梨央と本多菊次朗のからみが2回。梨央もいいよ。何より、私はこれが一番好きだし得意だという気持が全開するのがいい。つまり本気モード。ウソがないのだ。はっきり言って、かなりHです。相手が可能ならば本番しちゃいかねない気迫なのだから。本多も、なんと驚いたことに、前バリをつけないで現場に来た! これはひとつの事件だ。これでオレの組5本目となる菊だが、分かってきてくれてるなと、内心オレは大いにうれしかったものだ。
終了、明け方5時半、6時半に次の仕事で羽田まで行かなくてはならない一博さん、ギリギリの時間だった。
撤収7時半。帰宅9時。眠くて仕方がないのだが、この充実感、幸福感をいつまでも味わいたくてオレは出来る限り眠らない。ゆっくり風呂に入り、洗濯なども始める。
昼12時、眠りにつく。

2003.3.5(水)

というわけで、ずっと眠っていたが、深夜の12時ベッドから出る。ビデオを見たりして過ごす。

2003.3.6(木)

編集。67分30秒。7分オーバーであった。またか…。