2003.1.10(金)〜12(日)

新東宝作品『ノーパン秘書 悶絶社長室』撮影。
オレも長い間ピンクの監督やってるが(今年で満12年だ)こんなに早くクランクインするの初めてではないかしら? 12月はとことん忙しくして、1月はめいっぱい遊んでいたいというのが長い間のオレのスタンス。それゆえ、1月に入るにしても出来る限りおくらせていたものだったが、今回ばかりは諸般の事情でそうもいかず、忘年会気分もそこそこに、正月気分にいたるや、ほとんど味わえないままクランクインに突入したのだった。

初日。
今日はとてもラクな日。その分あと2日が大変なんだけどね。つまり、とてもバランスの悪いスケジュールなんだな。どうしてそうなったかというと、あくまでお金の問題ね。
今回の作品、森角の初のピンク脚本作なのだが、どういう内容か、かいつまんで言うと、6人の男と女が会社の中で右往左往する話で、つまり、6人の集団劇なのだ。ということは、バランスのいいスケジュールにすると、その6人がベタ、つまり、毎日出番があるということになり、その分、ギャラがかかってくる。そうなると、いくら少々予算のいい新東宝作品といえども、あっという間に赤字になってしまうんだな。そういうわけで、3人はベタ、他の3人は2日の出番ということにしたのだな。そうなると、とたんにバランスが悪くなるというわけ。
(そういえば、予算の話だが、去年の秋口からXcesの予算が大きく下がって、今や実質的には、新東宝が一番いいのではないかという状況になってきてしまった。ヘタすると、今のXcesだと、オーピーよりきびしいのではないかということもありえる話になってきてるのだ。ま、ウチワの話なので、ここではこれ以上語るまい)。
そんなわけて、まずは初日。朝7時半集合。
シーン59。ラストの3つ前のシーン。新宿中央公園(そうなのだ。今回は62シーンもあるのだ。台本のページ数65ページ。いつものオレの組の平均値は、シーン数50シーン前後。ページ数45ページ前後、つまりは、かなり長いということ。その分長い映画に出来るわけではないので、今回は、スピードとテンポが勝負の分かれ目ね)。
役者、まいまちこ(今回がオレの組2本目の文学座出身のグラマーガール)、松田信行(ピンク3本目。オレの組2本目。森角の劇団天然工房の旗揚げメンバー)。今日は基本的には、この2人のシーンのみをやる日。
サクサクッと1時間くらいで終らせて移動するつもりだったが、以外とモタつく。役者2人が妙にタラタラやってるんだな、そのテンポでやられた日には、この映画90分になっちゃうんだな。たのむよ〜、倍のスピードでやってくれよ。そんなわけで、芝居場のカット2は、10数回のテストを重ね、やっと本番に突入。
10時終了。駒込のラブホテルに移動。11時前に到着。
Hシーンも含めて4シーンをそこでやる。
2時過ぎ終了。3時前に撤収。次の現場、阿佐ヶ谷のジャズ・バー「stardust」へ向かう。
そこでワンシーン。6時前に終了。新宿へ向かう。ナイト・オープンをワンシーン撮るつもりだったが、あまりの人混みの多さにあきらめる。去年の12月24日にロケハンした時は、ほぼ同時刻だったが、人通りは少なかったのでいけると思っていたのだったが…。
新東宝へ移動。柏木舞登場(前作の『熱い肉体、濡れた一夜』でデビュー。今回が2本目のAVギャル)。松田クンと柏木の疾走するダンボール箱の中でのHシーンを一発。
10時前終了。それから、タイトル撮りをして、新東宝終了。さきほど撮りこぼした新宿へ向かう。
終了、深夜の0時近くなっていた。一番ラクな日でコレかよ!? 回ったフィルム、3本半。今回の予定は、19本回す予定。ということは、あと2日で16本回す計算になる。つまり、あと2日は大変なのだ。特に明日は戦争だ。台本全体の2分の1が明日やる分量に集中してる。明日のスタジオ、えらい料金の高いスタジオでね、普段オレらが借りるスタジオの3〜4倍の料金なのだ。延長OKなのだが、深夜の延長料金てのが、えらいまた高くてね、オレとしては、何としても、明日は深夜12時がリミット。それ以上時間をかけてしまったら、たちまち、トホホ…ということになるのだ。でも、やる前からかなり絶望的な気分。12時に終わるなんて、100パーセント近くないだろうと…。そう、かなり不可能なことなのだ。それに挑戦するから、つまり、だから、明日は戦争なのだ。ザ・ロンゲスト・ディだ!

2日目。
いつもより、ちょっと早い朝7時新宿集合。
今日一日で、台本全体の半分、32ページ、シーン数にして26シーンをやらなくてはならない。朝までやれれば可能かもしれない。しかし、オレの決めたリミットは深夜12時。はっきり言って不可能だ。でも、いい。とりあえず、始めようではないか。イッツ・ショー・タイム!だ。
今日から役者も6人が全員集合。今日はエキストラも多く、10人以上が来る。
昼メシ前の午後1時までに、Hシーンも入れてだが3シーンしか消化出来ず。あと23シーン。もはや絶望的な気分。欠番に出来るシーンをさがさなくては…。
午後は、エキストラ全員集合シーンを6シーン。日のあるうちというのがねらいだったのだが、4時半というギリギリの時間に終了。
夜7時の夕メシの段階で10シーン終了。残るは16シーン。残された時間は4〜5時間。これはもうムリだ。朝までかかる。何とか少しでも痛手を少なくしようと、必死で欠番を考える。
結果、5シーンを欠番にする。そして、ラストシーン。これを翌日のロケ地、新東宝まわしとする。それでもあと10シーンある。もうこれはうまくいっても深夜の2時3時だなと、大きな出費をカクゴする。
ところがだ、俳優のみなさん−まいまちこ、松田信行、本多菊次朗、酒井あずさ、柏木舞たちのすごいノリで、驚くべきテンポでバタバタとかたづいていくではないか。
結果、終了12時過ぎ、撤収1時過ぎという奇跡的な結末となったのだった。
はっきり言って、ただ撮ればいいやと、いいかげんに妥協してやったわけではないのだ。というか、オレは映画演劇に関しては妥協できない体質で、とにかく許された時間内では目いっぱいやるのがオレの体質。
だから、はっきり言っちゃうと、俳優がすごかった。ほとんど文句なしという芝居でくるので、バンバン撮れちゃったのだ。
結果、ほぼ予定通りというか、いや、不可能を可能にしたというか、そういう奇跡が起きた。
ホント、役者に助けられた。みんな、すばらしい! 今回ばかりは、ホント、マジにそう思う。
戦争に、戦いに勝った。
1時過ぎに撤収して、新宿へ向かう。ナイト・オープンがワン・シーンあるのだ。
本多菊次朗と酒井あずさ。2人ともすばらしい出来で、サクサクッと終了。深夜2時になっていた。
しかし、こんなにうまくいくなんて…。ホント、オレは戦争に勝った将軍。戦友たちとの別れがつらい…。が、明日もある。
深夜2時過ぎに解散。すばらしいギャル3人(まいまちこ、酒井あずさ、柏木舞)は、みんな家が遠いので、今日はセメントマッチ泊。
セメントマッチに着くや、3人はそそくさと寝てしまう。オレは部屋の電気を暗くして、一人、酒を飲みながら、今日の幸福に酔う。
ホント、みんなありがとう。
こうしてオレも5時過ぎにはフトンに入ったのだった…。

最終日。
今日もシーン数はめちゃ多い。29シーンもある。でも基本的に新東宝のオフィス中心のロケなので、気分は全然ラク。
午前10時新宿集合。でも9時半頃にはほぼ全員そろってしまう。なんてみんなステキなんだろう。
まずは新宿近辺でのオープンを4シーン。
午後1時過ぎ、新東宝に入る。
新東宝近辺でのオープンを8シーン。デイ・シーンギリギリの夕方4時過ぎに終了。
昨日こぼしたラスト・シーンも屋上でやったが、オープンにしてホントよかったよ。このシーンは、オープンのシーンだったのだとしみじみ思った。オープンにして、大正解だった。
暗くなってから新東宝のオフィスに入り、あとは終るまで17シーン。
終了、明け方の5時。回ったフィルム、結局、20本半。1本予定をオーバーしてしまった。
一言で言うと、いや〜、早かった。リズムとテンポ、そして役者の出来がよければ…とは思っていたが、こんなにうまくいっちゃうとは…。クランクイン前に思った理想に限りなく近い展開。傑作の予感がフツフツとわいてくる。
松木さんと一緒に夜明けの中央線。「池ちゃん、高円寺で飲んで行かない?」という甘い言葉に誘われて高円寺は駅前の角屋。うまい酒ではあったが、オレは起きながら眠ってる状態となる。朝の7時か8時か、分からないけど、そのあたりで解散。オレは眠っちゃまずいので、国分寺までずっと立っていく。
無事、国分寺に着いて、あとのオレには、至福の時、つまりは眠りが待っている。


2003.1.15(水)

ホント、たっぷり寝た。14日の朝、何時か分からないけど帰って来て、10時くらいには眠り始めたと思うが、それからえんえんと、何度か目をさましつつ、それでも意地になってベッドから出ないで、結局、体中の関節が痛くてもうダメだというまで眠ってしまったのだ。20時間は寝ただろうか。朝の8時に起きる。
さわやかな気分で、オーピーへ次回作のプロットをFAXする。クランクイン前日の9日には上がっていたのだが、とてもFAXするような気分と状態ではなかったので今日まで寝かせておいたってわけ。次回は、寺山修司風のシュールな世界をやりたいのだが、会社はいやがるだろうな。さて、どうなるか…。
新宿に出て映画を2本見る。久しぶりだ。1ヶ月ぶりくらいだと思うが、とにかく今年は初めて。
『ゴジラ×メカゴジラ』。手塚監督の前作のゴジラを、ゴジラ史上最大の傑作と思っているオレとしては、大いなる期待を持って見たのだったが…。今回はダメでした。とにかく、話がなさすぎ。前作にあったワクワク感、ドキドキ感、そして、戦う生きものとしてのゴジラの哀しさまで描いていたというすごみなど、今作では望むべくもなかった。ちょっとガッカリしました。
『ハリー・ポッター』。前作よりよく出来てるとは思うが、もはやこの手のものには何ら感情移入出来ないのだ。
久しぶりに、清美ちゃんの店「銀河系」に顔を出す。しどと酔う。

2003.1.16(木)

新東宝作品『ノーパン秘書 悶絶社長室』編集。69分あった。まいった。今回は、Hシーンはそんなに回してないので、Hシーンでの尺の調整はかなりきびしいのだ。何とか63〜64分くらいでOKにしてもらわないとヤバイ。

2003.1.17(金)

オールラッシュ。プロデューサーの福ちゃんから63分以内ならOKと言ってもらえる。かなりホッとする。再編集で、何とか63分35秒という線まで持ってこれる。あと36秒だ。
新宿プラザで『マイノリティ・リポート』。これも、星2つくらいの映画だったなァ。

2003.1.18(土)

アフレコ。
シーン1。社長室。社長役の本多菊次朗と秘書役のまいまちこのHシーンからスタート。午前10時開始で始まったが、このシーンが何と1時間半もかかった! この調子だと、明日の朝になっても終わらない!
と思ったものだったが、結果、終了深夜の1時半。いつもよりちょっと時間かかったかなという感じ。というのも、今回、Hシーンはそんなになくて、63分のうち、十数分という感じなので、助かったなということなのだ。
で、オレがここで一番いいたいことは、最近の俳優って、なんてHシーンがヘタなの!ということなのだ。特に今回の俳優にそれを強く感じた。その中でも、シーン1の本多菊次朗とまいまちこね。
一番頭にくるのは、フツーの芝居と、Hシーンとをはっきり分けているというその姿勢だ。
フツーの芝居はテンション高く、全力投球してるのに、Hシーンになったとたん、テンションがガクンと落ちる。形だけの芝居になる。
なんで?
ものすごく簡単に言うと、Hシーンをバカにしてるからなのだ。
Hシーンなんて芝居じゃない。あれはピンク映画だから仕方なくやるもんなのだ。オレは、私は、あんなことはホントはしたくないけど、ピンクだから仕方なくなってるのよ。どうでもいいじゃん、Hシーンなんて。オッパイゆらして、それらしくやってるだけでいいじゃない−という気分を声なき声でピンビン感じてしまうのだ。
だったら、やめろよだ。
役者とは何か? その本質の一面を言うと、さらけ出す行為だと思うのだ。精神と肉体のすべてをさらけ出すという行為。
さらけ出せないんだったら、ピンクは、やめるべきだ。それは、ピンクに対する、ひいては芝居というものに対する、大きく言うと、芸術に対する大いなる冒涜行為なのだから。
だいたい、あの前バリというものが、最大のガンだ。前バリは、肉体の一部を隠すことによって、精神の一部までおおい隠してしまうのだ。簡単に言うと、スケベの象徴である部分を隠すことによって、スケベなココロまで隠してしまうのだ。そしてアンシンしてしまう。サイテーだ! すべてをさらけ出すカクゴのない者は、役者ではないのだ。
それにしてもすばらしいのは、AVギャルをやりつつピンクを始めた、酒井あずさと柏木舞の2人ね。この2人には、フツーの芝居とHシーンの境い目がないのだ。すべて全力投球。「私は芝居はヘタで御迷惑かけるでしょうが、せいいっぱいガンバリます。Hシーンは私の得意分野なので、迷惑かけた分、バンカイするくらいガンバリます」−という心の叫びがビンビンに聞こえてくるのだ。
これこそ、芝居というものに対するまさに正しい心のありようではなかろうか。
でもね、今回の俳優はみんなすばらしかったよ。ホント、キャスティングの勝利だなと何度思ったことか。だからこそ、オレはくどく言い続けるのだ。Hシーンも芝居だと、心から分かってくれよと。楽しんでやってくれよと。
終了、深夜1時半。2時から飲み会に突入。朝の6時か7時頃か、みんな倒れるようにそのままソファか床で寝てしまう(さすが、役者はみんな、いや違う、松木さんは残ってたが、他は帰った)。

2003.1.19(日)

午前10時からラッシュ。オレも椅子で2、3時間眠ったと思うが、音楽の大場一魅も来たし、みんなで見る。
ラッシュ後、一魅と打ち合わせ。
終了後、またも飲み会に突入。午後1時くらいから。途中、役者の牧村耕次も顔を出し、本格的に飲み出し、松木さんがまず沈没。演出部も帰らせ、あとはオレと中村さんと牧やん。最後は近所のパブで深夜0時まで飲んでいたのだった。

P・S
この作品『ノーパン秘書 悶絶社長室』は2月11日に新宿国際で公開されます。どうぞ見てやって下さい。面白いこと、保障します。よろしくお願いします。
また、2月14日より25日まで、池袋シアターグリーンにて、森角の劇団天然工房の新作が上演される。タイトルは『トラブル トラップ トラベル』。ブレーク寸前の天然工房の芝居、ぜひ見てやって下さい。問い合わせは劇団事務所(03-5389-9102)まで。ヨロシク!