2002.10.8(火)〜9(水)

箱根の温泉へ五代暁子親子と一泊旅行。
8日の夜は、五代とピンク版『セレンディピティ』の打ち合わせ。『セレンディピティ』だけではどうにもならないのだが、それにプラス『サイン』を持ち込むことによって何とかならないだろうか?−例えば、こんな風に……。
五代も乗り、ここに『セレンディピティ』プラス『サイン』というアイデアが生まれたのだった。

2002.10.10(木)

さっそくピンク版『セレンディピティ』プロット上がる。ちょっと長いし、予算も普段以上にかかりそう。というか、はっきり言って赤字になりそうなのはミエミエ。あとはオレの判断ということだが、『サイン』を見て盛り上がったことでもあるし、ここはもうやるしかないんじゃないの−というのがオレの結論。あとは会社が何と言ってくれるかだけど、もしもメンドくさいこと言ってきたら、あえて赤字になるの見えてる作品やることもないんだけどね。

2002.10.11(金)

会社OK。もーこうなったら、やるしかない。「五代さん、脚本よろしく」だよ。
映画をハシゴ。
新宿ピカデリー2で『完全犯罪クラブ』。サンドラ・ブロック主演というだけで絶対見るかと思っていたけど(嫌いなんだ、あの女優)、ある人からけっこう面白いから見ればと言われ、じゃあ見るかと見たわけだが(今日は最終日)、ンー、オレはあまりいいとは思わんかったね。サンドラどうこうじゃなくて、あの主演の高校生のキャラの描き方。まだまだ弱いんじゃないかということね。もっと強烈なキャラであってほしいね、オレは。なんか弱いんだよね。もの足りないっていうの。
テアトル新宿でレイトショー。同じく今日が最終日のサトウトシキ『夢なら醒めて』。
けっこうなじんでいる、今岡、小林さん、そして、トシキの世界。それなりに興味深く見れたのだが……。ンー、やっぱり最後の展開をどう解釈するかだよね。
オレは、やっぱり「?」なのよ。
その「?」をかかえたまま、清美の「銀河系」に行くと、なんと、『夢なら醒めて』の助監督、堀くんがいるではないか。さっそく話をしてみるが……やっぱり「?」。堀くん曰く「ぼくも10回くらい見てやっと分かってきましたよ」。そう言われてもねェ……。
『夢なら醒めて』というタイトルだが、一体だれの夢だったの?
主役2人の共同幻想というか、2人の共同の夢だったの? それならそれで、またオチも変わってくると思うんだけど……。
銀河系のあとは、清美と一緒に久しぶりの「寺小屋」。朝まで呑みヘロヘロになる。

2002.10.13(日)

音楽の大場一魅と久々に会い呑む(もっとも一魅はあんまり呑めないけど)。
最後は高円寺、鳥やす、角屋、またもヘロヘロになる。

2002.10.14(月)

ピンク版『セレンディピティ』の初稿上がる。一読。見事。五代暁子。原作の映画を、すでにはるかに超えている。
オレは今まで、いわゆる名作映画と言われているもののピンク版を何本もやってきた。はっきり言って、原作の映画におとるものは何もないと思っている(唯一、『オール・アバウト・マイ・マザー』)だけは少し後悔している。でも、あれだって、本物の赤ん坊を使えていれば、少しは原作に近寄れたのではないかと思うのだ)。特に、佐々木麻由子・最後のピンクとなった『OL性告白 燃えつきた情事』なんかは、原作映画の『スウィート・ノベンバー』より、はるかにいい作品になったと確信している。
で、今回だけど、今回のヤツも、そういう予感がしてきたよね。
次はキャスティングと(やはりヒロインがとても重要。会社の要求する新人ギャルの中にオレたちのヒロインがいて欲しい!)、本来は4〜5日あったらと思える撮影を、何とか3日でやってしまう具体的な策だよね(いつもは大体3日でやってるけど、今回は初稿読む限り、3日ではかなりムリなとこがあるのだよ)。
ま、いつものことといえば、いつものことだ。今は、また映画を撮れるということの、喜びしかないけどね(コレ、ホンネ)。

2002.10.15(火)

またまたライブ見物。高円寺ショーボート。前作の『恋する男たち』の前篇「弟の恋人」に主演してくれた桜井雅也くんのライブを、鳥やすのマスター松木さんと見に行く。
桜井くん、ずい分ユニークというか個性的というか、変わった音楽をやるなァというのが第一印象。まだまだ粗削りだけど、これってひょっとして化けたら面白いんじゃない?って感じは受けました。
他のバンドもいくつか聞いてみたが、余りに子供っぽくて途中で引き上げる。
オーピーの初稿、高円寺の飲み屋に入って一人じっくり読む。いつもながら五代の脚本は初稿からほぼ完璧。あとは小直しだが、今回のヤツは、なんせ、『セレンディピティ』、プラス『サイン』のせいか、3日で撮る映画としては、少々大変そうなのだ。ほんの数シーンのために地方ロケというか遠出が必要だし、それにシーン数も多いし、3日で撮ると思うとほとんど絶望的な気分になる。やはり、4日は必要だな。オーピーで4日だと思うと、それはそれで絶望的な気持ちになったりするんだけどね。
それから「鳥やす」、助監督の小川もよんで初稿を渡し簡単な打ち合わせ。クランクイン予定は来月なかばなので、ちょうど一ヶ月後だ。
いつものように朝まで呑まず、最終電車で帰る。

2002.10.17(木)

渋谷東映で『命』見る。泣くつもりで見てたんだけど全然泣けず。ダメだね、これは。
夜は五代と台本の直しの打ち合わせ。ちなみに今回のヤツ、仮題を『Stardust/恋の迷路』とした。

2002.10.21(月)

ここ2、3日、ちょっと事情があって家でじっとしていた。台本の検討をしつつ、CSで映画ばかり見ていた。ザッと感想を言うと−。
『怪談おとし穴』…68年の大映作品。現代のサラリーマン社会を舞台にした怪談もの。怪優成田三樹夫主演だが、オレには、成田三樹夫に殺されてしまうOL役の渚まゆみが魅力的であった。濡れ場もあったが、当時の表現なのでオッパイ出しさえも無くてかなり残念。
『女奴隷船』…60年、新東宝作品。菅原文太、三ツ矢歌子、三原葉子主演。いいよねえ、Hなフェロモン出しまくりの三原葉子といい、カレンな美人の三ツ矢歌子といいね。でもこれでも露出不足。オレ、かなり欲求不満になる。
『女囚処刑人マリア THE MOVIE』…95年作品。監督・片岡修二、撮影・下元哲、主演・青田典子。ンー、これも露出不足ね。物足りないのだ。
『神坂四郎の犯罪』…56年・日活映画。監督・久松静二。出演・森繁久弥、左幸子、新珠三千代、滝沢修、金子信雄。公金横領、女の持つダイヤ目当てに偽装心中をした疑いで裁判にかけられる男の法廷推理劇。石川達三のベストセラー小説の映画化−ということだが、この映画はかなり面白かった。構造はまさに芥川の『藪の中』であって、もうひとつの現代劇版『羅生門』であった。
色々あるが、ひとつだけいうと、当時の日本映画の役者陣の充実ぶりには圧倒される。森繁ってこんなにすごかったんだ。やっとオレも森繁のすごさが分かる歳になったのかね。
それにしても、左幸子にはビックリ。処女と毒婦を一瞬のうちに見せきる、その振幅のすごいこと! まさに天才的だ。露出自体は当時の映画ゆえ全然ないが、存在そのものがとてもスケベだ。Hが匂ってくる。妙にいやらしいのだ。そそられるのだ。すごい。
こんな映画に出くわすから、やはりマメに見るもんだね。ビデオ未発売ということなので、録画しなかったのが悔やまれる。こんな傑作とは思いもしなかったからね、ま、仕方ないか。
『赤い標的 THE BREAK UP』…98年のアメリカ映画。ブリジット・フォンダ主演。これは全くダメな映画ね。最後まで見てソンしたよ。
『SASORI IN U.S.A』…97年作品。斎藤陽子主演。わが後藤大輔監督作だが、これは余りに台本が悪すぎた。後藤ちゃんもどうにもしようがなかったんだろうね。
『ロミオとジュリエット』…54年の英映画。ローレンス・ハーヴェイのロミオ。なにげに見始めたのだが、最後まで見させてしまう力が、やはりこのシェイクスピアの物語にはあるということか。確かコレって4〜5日くらいの間の出来事なんだよね。出会いから死までの、アッという間の真っしぐらの青春の悲劇。ま、この映画自体はだいぶゆるかったけどね。それにしても、撮影と、カラーの色、そして、美術がすごい。やはりコレも、映画黄金時代の証しか。
『バックステージ』…01年の日本映画。コレも何げに見ていたのだが、つい最後まで見てしまった。内容はタイトル通りの、タレント学校に通うコたちの成功と悲劇の物語。かなりコテコテなのだが、プロデューサー役の女優さんがよかったなぁ。誰だろう?
−という具合にずい分見たけど、これ以外にも、先日の「K・1」、「PRIDE」もまとめて見たりしてTVライフを楽しんだのだった。

21日に森角の初稿やっと上がる(新東宝でやる予定のヤツね)。ずい分かかったなァ。予定より1週間オーバー。プロットが出来た時から数えるとほぼ1ヶ月。普段の五代の異常に早い進行に慣れてる身にはずい分かかったなとは思うが、ま、普通はこんなもんなんだろう。

次回のオーピー作品のスケジュールの検討も色々してみたが、やはり次は4日かかりそうだ。というか、4日でしか組めない。痛いなァ。でも、それでしか出来ないものは仕方ないか。