2002.6.27(木)

樹組、小道具、制作備品などの確認で演出部、セメントマッチに集合。

2002.6.28(金)

樹組、役者衣裳合わせ。
後藤組、夜の8時、新東宝のオフィスにてクランクイン。今回は新東宝のオフィスでのロケが中心なので、少し変則的なスケジュールとなる。今日は夜中2時終了。
合間をぬって、下北沢「劇」小劇場で、劇団LRPの公演を見る。何も語ることのない芝居。作・演出の谷津かおり嬢とは鳥やすでたまに会う。何と言おうか。ま、はっきり言うしかないよね、つまらないと。

2002.6.29(土)

樹組ロケハン。
後藤組、朝7時半集合で新東宝へ。オレは夜の9時から翌朝の5時まで現場にいる。本日の終了は、翌朝の7時。

2002.6.30(日)

後藤組3日目。午後1時新東宝集合。終了、翌朝の7時。オレは夜の10時から翌朝の5時までいる。それから、雨の中をタクシーで奈賀毬子、平山久能を送って鳥やすへ。
そこで、元月蝕歌劇団の女優さんであった高野美由紀さんに会う。高野さんとは以前からちょっと知り合いなのだが、高野さんから8月にやる芝居見に来て下さいよ、私、初めて演出やるんですと言われ、チラシをもらってビックリ。寺山修司の『さらば、映画よ!〜スタア編』ではないか!
『さらば、映画よ!』ってオレにとっては一生忘れられない芝居なのだ。なぜならこの芝居はオレの人生を決定づけたからだ。
30数年前、新宿のピットインでこの芝居を見てしまった時の衝撃は今だに忘れられない。あまりの衝撃に席を立つことの出来なくなってしまったオレは、そのまま寺山さんの劇団天井桟敷に入ってしまい、そして−途中を大幅に省略して−今に到る、のだから。
その衝撃の舞台『さらば、映画よ!』は、「スタア編」と「ファン編」の短篇の2本立てなのだが、なぜか「スタア編」は戯曲集にも収められることなく来ていて、よって、上演の機会が少ないというか、オレは、「スタア編」をやってるという情報は今まで見たこともなかったのだ。
だからオレにとっては今回の高野さんの公演は30数年ぶりの再演という感じね。
あの時の衝撃と感動は、オレの人生を決定づけたものだ。オレも若かった。2年の浪人生活を経て、大学に入ったばかりだった。20才、ハタチだった。その分、あまりにも思い入れも強いので、正直言ってあの時ほどの衝撃と感動は味わえないとは思う。
それでもすごく楽しみでもある。あの時のオレに出会えるかもしれない……なんて思うと、ちょっとたまらないものがある。
宣伝しちゃおう。8月17日と18日。場所は阿佐ヶ谷のザムザ阿佐ヶ谷。演出、高野美由紀。出演は、高野美由紀、他となっている。料金は前売り2500円、当日3000円。問合せは、03-3990-5844です。
寺山修司版では、オカマの2人芝居だったの(つまり、男の2人芝居ね。ちなみに、「ファン編」は、ホモの、つまりこちらも男の2人芝居ね)、女性のみが何人も出て、しかもバラエティというか、一種ミュージカル仕立てみたいにするというプランのようなので一体どんな芝居になるのか見当もつかないが、なかなか上演の機会もない芝居なので、興味ある人はぜひ見に行って下さい。あっと、劇団名は「A・P・B−TOKYO」といいます。

2002.7.1(月)

後藤組撮休。

2002.7.2(火)

後藤組最終日。朝の7時半集合で、今日はやっとオープン・ロケの日。オレはつき合わず、午後からの樹組のコンテ打ち合わせに行く。終了後、時間があいたのでシネマスクエアとうきゅう『セッション9』というスリラーを見る。これ面白い。もう一度見ようと思う。
後藤組、夜8時に新東宝入り。オレは10時頃顔を出す。夜中の2時頃オレは引き上げる。撮影は朝の6時頃までやってクランクアップ。
それにしても、今回の後藤組も天候にめぐまれた。ツユのさなかの連日の雨模様の中クランクインしたのだが、雨の降ってる時は、新東宝の地下にいたので全く影響がなく、オープンに行くと雨が上がるという展開。ホント、よかった。

2002.7.4(木)

樹組クランクイン。午前中はオープン。昼から新宿の、オレもよく使う田中スタジオでのロケ。オレは午後の2時頃顔を出す。といっても、後藤組と同様、オレはやることがない。現場に入れば、あとは監督と現場の人たちのものなので、オレは一切口出ししない。ま、樹かずはこれがフィルム・デビューなので、少しは心配で撮影をチラチラ覗いていたわけだが、かずもけっこう如才無くやっているので全く心配もなくなり、ほとんど控室で役者たちとダベッてすごす。夜の10時頃オレは引き上げる(撮影は12時前には終了したようだ。そういえば今日も午前中は久しぶりに晴れ間がのぞく天気のよさ。ついてるじゃん。さいさきいいぞ)。
ゴールデン街。久しぶりに清美の店へ。評論家の松田政男さんにほとんど10年振りに会う。「さっきから、このデブだれだ?と思って見ていたら、なんだ池島くんじゃないの。それにしてもえらく太ったね」と、のっけから言われる。いくら自分でも自覚しているとは言え、そんなに分からんくらい太ったのかと、ちょっとショック。それでも「キミの劇団のセメントマッチの芝居は全部見ていると思うが、あれはよかったな。池島くんが山本竜二くんとやった2人芝居、ピンターの『ダム・ウェイター』、あれはよかったよ。色んな人たちの『ダム・ウェイター』見てるけど、キミたちの『ダム・ウェィター』が一番いいよ」と言われ、一気に盛り上がる。
松田さんは芝居好きの映画・政治評論家で、セメントマッチの芝居も必ず来てくれたものだ。オレも役者時代は年に2回は必ず芝居をしていたものだが、10年前から本格的にピンクの監督をするようになってから芝居を主宰することは辞め、よって、松田さんともほぼ10年ぶりの再会であったというわけだ。
一気に盛り上がってしまったオレは、清美の銀河系から、東中野のリズ、高円寺の鳥やす、角屋と久しぶりに(でもないか?)朝までガンガンに呑んでしまったというわけさ。

2002.7.5(金)

樹組2日目。オレは現場には行かず。助監督からの報告では、今日は深夜の3時頃までやったそうだ。
オレは後藤ちゃんと高円寺のライブハウス。
以前からこのページで触れてる姫路の女のコ2人組の天才バンドCOA・怖の片割れのエディが他にバンドを組んでやってきたというわけ。バンド名→「赤馬時計」。
ここではエディは、怖の時とは全く違うことをやっていて、それはそれで興味深いものだった。怖は、なんというんだろう、とにかくすごいハードなロックなんだが、赤馬時計は、エディの作ったしみじみとしたバラードをエディの歌とギター、そして、他のメンバーの発するフシギなギ音で聞かせるといった趣向。エディの声ってカワイイのねと思いました。ライブのあとは、鳥やすに行ったのは言うまでもあるまい。エディもちょっと付き合ってくれました。
実は今回の後藤組、COAの音だけで全編音楽をつけようというプラン。2月にCOAがライブに来てた時、後藤氏も連れてったんだな。すると彼、すっかりはまってしまい、今度、音楽を使わせてくれという話になる。COAは以前からオレにも「うちらの音楽使って下さい」と言っていて、このプラン、とんとん拍子に進んだというわけだ。
COAの音楽が全編をおおいつくす後藤大輔の新作『OL発情 奪う!』(撮影は終ったばかりで今日は編集だった)は8月6日新宿国際で封切られる。期待するように(もっとも新宿国際のあの劣悪な音で見るって、実に、トホホ……なんだけどね)。

2002.7.6(土)

樹組『キミニ惚レテル』撮影3日目。今日は新宿のライブハウスのロケからスタート。オレも久しぶりに早起きしてエキストラとして現場へ行く。先日知り合ったばかりの次回作の女=ユミコも来てくれる。
昼前に終了。オレはそのユミコ、石動三六氏などと共に、ノド渇いたねと、エスニック料理屋に行き、昼からビールを呑む。
昼のビールは効く。それから映画でも行こうかと思っていたが、いやいやほとんど徹夜で来たことだし、ビールも呑んじゃったしで、映画を見たら完全に寝てしまうだろうと思い、適当に街をブラつき、明るいうちに帰宅する。

2002.7.7(日)

樹組最終日。今日はオレは医者の役で出演。今日も朝から東映化学。それにしても人の多い現場だ。なんせ役名のある役だけで、20人くらいいるし、昨日のエキストラも20人以上はいたしね。スタッフも多い。メイクさんが3人、スタイリストの人も1人いて、しかもみんなカワイイ女のコで、ホモ映画なのに女のコの姿の目立つこと。実にいい現場だ。ただしその分食費などは普段の倍以上はいくだろうと思うと、あんまり嬉しがってばかりもいられないけどね。
終了・撤収、深夜3時。毎日ほとんど半徹夜だったね。でもこれまた天候にめぐまれ、無事にロケを終えることが出来て、よかったよかった。あとは映画の出来に期待しよう。現場見てる限りは期待出来そうだけどね。
ちなみに公開は、8月中、上野の世界傑作劇場となります。見て下さい。後藤大輔脚本・荒木太郎監督のホモ映画と2本立て。見るっきゃないね。

2002.7.9(火)

新宿ピカデリーで映画を2本。『アイ・アム・サム』と『スコーピオン』。『アイ・アム・サム』は全編に流れるビートルズ・ナンバーのすばらしさと、さっそうと登場する女弁護士役のミシェル・ファイファーのカッコよさが一番強烈で、あとは意外に泣けなかったなァ。泣くつもりで見てたんだけどね。『スコーピオン』は、オレのようなエルビス・マニアにはたまらない映画ね。アメリカ映画には年中エルビスが出てくるのだが、この映画は頭からケツまでエルビスだらけなんだもん、も〜、たまらんよね。

2002.7.10(水)

後藤組『OL発情 奪う!』オールラッシュ。

2002.7.11(木)

樹組『キミニ惚レテル』編集。

2002.7.12(金)

樹組オールラッシュ。後藤組アフレコ。
オレは合間をぬって映画を2本。渋谷東急で『少林サッカー』。気軽に楽しい映画で頭をリラックスさせて、次にユーロに行く。ゴダールの『フォーエヴァー・モーツァルト』。ゴダールの映画をスクリーンで見るのっていつ以来?というくらい久しぶりだ。なつかしい気分。あいかわらず難解で美しいゴダールだった。
後藤組のアフレコ、そして音入りラッシュ、終了、深夜の2時。高円寺鳥やすに移動して演出部のみでアフレコ打ち上げ。途中、麻由子嬢も顔を出す。

2002.7.14(日)

樹組『キミニ惚レテル』アフレコ。終了深夜2時。またも鳥やすに移動してアフレコ打ち上げ。

2002.7.16(火)

後藤組『OL発情 奪う!』ダビング。オレは夜の数時間のみ顔を出し、あとはゴールデン街、清美の店「銀河系」で時間をつぶす。2軒目の翔子の店「寺小屋」にいる時、やっと終ったと後藤ちゃんも顔を出す。2人で朝まで呑む。しとど酔う。

2002.7.17(水)

樹組『キミニ惚レテル』ダビング。今日は夕方から最後まで付き合う。終了、0時前。キャビンで軽く呑み、それからかずと「寺子屋」へ。またも朝まで呑む。

2002.7.18(木)〜20(土)

やっと終った。2本ともあとは試写を残すのみ。ホッとした。3日間、ずっと家で過ごす。部屋の模様がえをしたり、本を読んだり、ビデオを見たり……やっとオレに戻れた気分だ。

2002.7.21(日)

2年前亡くなったオバの三回忌。四谷のお寺。オレは親族代表なので行かないわけにいかない。仕方ない。黒いネクタイしめて行きました。
昼からビールをガンガン呑んでかなりいい気分になる。
映画でも見るかと思い、新宿武蔵野館で『笑う蛙』。
いや、面白かった。「覗き」というシチュエーションに引かれて見に行ったのだが、これは予期せぬ面白さであった。フツーの日本映画見てこんなに笑えるのっていつ以来だろう? なんて思いながら見る。余りに面白かったので、ロビーで藤田宣永の原作本『虜』、そして脚本が掲載されてる雑誌「シナリオ」まで買ってしまった(「シナリオ」誌を買うなんて何十年ぶりだよという感じ)。
おすすめします、この映画(いや、オレって実は、大塚寧々の隠れファンでね、けっこう好きなのよ、あの女優。だから彼女主演というのもオレ的にはポイント高いのだけどね)。

2002.7.22(月)

後藤組『OL発情 奪う!』初号試写。

2002.7.23(火)

樹組『キミニ惚レテル』初号試写。
新人監督である樹かずの個性が全面に出ているという意味で非常にユニークな映画になったと思う。特に個性的なのがキャメラワークなんだけど、これほど手持ちキャメラを大胆に強調し、駆使した映画って最近見たことなかったね。それと、カッティングの早さね。カッティングが余りに早くて、余韻みたいなものはほとんどないのだが、その分、もたられないんだなァ。つまり、独特のテンポとスピード感が出てくるのだ。そう、疾走感、そして、一種の軽みがね。この映画って一言で言うと「青春映画」ってことになるんだろうが、絵のタッチそのものが、「青春」しちゃってるってわけさ。それと、さっき余韻がほとんどないと言ったけど、ここぞというとこはキチンと絵は落ちつくのだ。つまり、ヘソははずしてないのだ。
樹かず、いいわ。ハッキリ言って、オレはそんなに期待してたわけじゃないんだよね。だから、予想を心地よく覆されたって感じかな。
かくして、珍しく激戦となるにちがいない今年の新人監督賞レースに、樹かずも堂々と名のりを上げたってわけさ。
8月1日から9月4日まで上野傑作で、後藤大輔脚本・荒木太郎監督の『天使がぼくに恋をした』と同時公開される。みなさん、ぜひ見に行って下さい。ホモ映画は見る人が少ないのでその分賞取りはハンデになるので、ここはぜひ見てもらって正当な評価をいただきたいと思うしだいだ。