2001.11.20(火)
新東宝で12月13日から入る予定の、佐々木麻由子、とりあえずの”引退”映画『暗くなるまで待って・ピンク版』の方にもそろそろ本腰を入れなくてはならない。というわけで脚本の五代と打ち合わせ。
実は、この初稿の方はだいぶ前の9月30日に上がっていて、会社の方からは基本的にOKを取っていたので少しのんびり構えていたというのもある。
ところが、ここ3、4日、ロケセットの押さえをやっていて、どうしてもその期間借りられないというロケセットが出てきた。そこでなければ、かなり困ったことになるというような場所なのだ。では、スケジュールくり上げるか、くり下げるかしたら…とも思ったが、こちらは佐々木麻由子のNGでダメ。
そんなわけで、そういうことも含めて五代と打ち合わせしたってわけ。
で、結論。ムリして意にそわないロケセットでやるよりは、いっそ他の企画に変えないかという話になる。佐々木麻由子では、他にやりたい企画として、『欲望という名の電車』なんてのもオレと五代の間では以前考えたこともあり、急遽それにしないかとなる。
オレの一存では決められない。さっそく担当プロデューサーの福ちゃんにTEL。20〜30分くらい話をして、福ちゃん、オレに任せるということになる。
かくして半年くらい前から進めていた企画『暗くなるまで待って・ピンク版』はボツとなる。もっとも、初稿を読んでえらく気に入ってくれていた福ちゃんは、「来年、葉月螢の主演でやって下さいよ」と言ってくれたので、来年はそうなることを期待してね…。(オレも葉月とは一度もやったことないので、それはそれで楽しみではある。)
こうして、佐々木麻由子、最後のピンクは『欲望という名の電車』のピンク版ということになったのだ。ヴィヴィアン・リーがやった、杉村春子もやった、ジェシカ・ラングもやったというブランチ役だ。
2001.11.21(水)
オーピー映画『芸能(裏)事情 熟肉の感触』初号試写。ンー、何か足りないのだ。釈然としない気分がわだかまる。志賀ちゃんの撮影は文句のつけようのない出来。役者もみんな適材適所で問題ない。ンー、何なんだろう、この釈然とした気分は…?
そんなわけで、打ち上げもあんまり楽しくなかったんだが、それでも、翌日の朝の9時まで後藤大輔宅で呑んでしまったけどね。
2001.11.24(土)
五代と打ち合わせ。それから五代がプロットにかかっている間に、ヴィヴィアン・リー版の『欲望という名の電車』をビデオで見る。やはり面白い。27〜28年前に一度見ているのだが、その時の印象よりずっと面白く感じる。ついじっと見入ってしまった。
五代のプロットでは、ブランチが元高校教師という設定はそのままだが、妹のダンナのスタンリーは、肉体労働者からエロ本出版社の編集者に、妹はAVギャルというように変わっている。妹夫婦の赤ん坊も、産まれる前から、産まれた後というように変え、この赤ちゃんに、最近産まれたばかりの、元ピンクの女王・橋本杏子の赤ちゃんを借りようとなり、すぐさま杏子のOKも取り、新たな企画にワクワクしてくるオレたちであった。
2001.11.25(日)
五代が初稿を書く間、オレは臨時のベビーシッターとなり、五代の一人息子つぶらくんの子守り。
6時間ほどつぶらと遊んでるうちに初稿が出来る。それにしても、いつもながら、早い! 一読。面白い。ポイントは、原作では、ただただ人のいい妹が、ここでは、ただの気のいい女ではなくなっている点。妹の精神の暗部まで照射しようとしてる点だ。
さっそく新東宝へFAX。
2001.11.26(月)
新東宝の福ちゃんと打ち合わせ。
何と、信じられないが、驚くべきことに、またもや企画が変わる。理由を一言で言うと、会社の注文を聞いていると、『欲望という名の電車』が『欲望という名の電車』ではなくなってきてしまうからだ。そんなせつないことは出来ないということだ。クランクインの18日前でまた新たな企画作りから始めなくてはならないなんて、さすがにオレの10年間の監督生活でもなかったが、そうも言ってられないってことだ。
さっそく五代宅で企画会議。今度は福ちゃんも交えての3者会談だ。
五代から『スウィート・ノベンバー』でやりましょうとの提案。キアヌ・リーブスとシャーリーズ・セロン主演のラブ・ストーリーだ。1ヵ月限定の恋をする女の話だ。オレも福ちゃんも未見であったが、五代から映画のストーリーを聞いて、それでやれるだろう、というか、やるしかないとなり、一応の決定を見る。その瞬間、疲労こんぱいのオレは椅子からくずれるように眠りに落ちてしまったのだった…。これで五代宅に三連泊。現場中でもなくちゃ、そんなことはこれまで一度もなかった。つまり、それだけ異常事態であったということね。
2001.11.27(火)
オーピー映画『芸能(裏)事情 熟肉の感触』映倫試写。会社側の反応は思っていたより悪いものではなかったので少しホッとする。オレなりに見えてきた今回の作品の欠点、一言で言うと「主役の不在」ということにつきるんじゃないかしら? 一応の主役は中国人女優の美麗なんだけど、美麗の日本語の技術がそこまでたどりつけなかったということ。また、それをカバーしきれなかった演出家としてのオレのミスなんじゃないか――と、今はそういう気がしてきたね。
丸の内ピカデリーで『スウィート・ノベンバー』を見る。原作の映画を一応見ておかないことには話にならないもんね。
基本的にはストーリーラインそのままいただくとして、ラストだけは変えたいと思った。あの結末ではカタルシスがないのだよ。
さっそく五代と打ち合わせ。
深夜、『スウィート・ノベンバー』ピンク版のプロットがFAXされてくる。ん、いける、これでいける。
2001.11.28(水)
深町組『未亡人旅館3 女将の濡れたしげみ』出演のため、ロケ地の塩山まで出かける。久しぶりの深町組。今年成人映画に出演のみで出るのは、辺ちゃんのホモ映画に次いで2本目。ホント、めっきり出なくなったもんだ。
久しぶりの深町組は楽しかった。深町組だと、オレはお釈迦さまの手の平のソングコウのような気分を味わえるのだ。つまり、好き勝手にノビノビと遊べるっていうね。
今回の出演には付加価値もあって、佐々木麻由子、葉月螢、里見瑤子という3大ピンク女優と初めて共演して、少しづつだがみんなと芝居もあったのだ。なんかうれしかったな。
麻由子嬢とは濡れ場もあり。これも楽しかった。彼女はかなり面くらっていたようだけどね。
夜は呑み会。久々にリラックスして呑む。結局、麻由子嬢とオレは朝の6時まで呑んでいたのだった。今さらあせっても仕方ないしね。それにしても、今回のオレの一転、二転には当事者である麻由子嬢にも迷惑をかけたと思うのだ。でも。けっしていいかげんにやってたわけじゃないので、ここは許してね。
2001.11.29(木)
夕方、東京へ戻ってくる。
深夜、『スウィート・ノベンバー』ピンク版の仮題『ウィンター・スカイ』の初稿がFAXされてくる。それにしても今度という今度は、久しぶりに五代暁子ってすこ゜いと思った。彼女の豊富なアイデア、そして書き上げるスピード、そしてその水準は、ほとんど天才的と言っていいだろう。ホント、五代と組んでてよかったよ。
2001.11.30(金)
五代宅で台本直しの打ち合わせ。深夜、高円寺「鳥やす」で麻由子さんと会い、初稿のコピーを渡す。(それにしても「鳥やす」にくるのって、ここ1ヵ月半で2回目だ。もう1回は小林悟監督のお通夜の流れで呑みに来た時ね。毎晩のように行ってると一部では思われているようだが、行けなくなるとこういうもんだ。ま、それだけここんとこバタバタしてたってことだけどね。)
2001.12.3(月)
『ウィンター・スカイ』決定稿上がる。そのまま印刷所に入稿。
ホッと一息。映画を見に行く。久しぶりの気分。新宿プラザで『ポワゾン』、東映パラスで『ソードフィッシュ』。
2001.12.4(火)
印刷台本上がる。シネキャビンで演出部と役者打ち合わせ。今回はオレの映画に初めて川瀬陽太が出るのだ。楽しみだ。
夜は久しぶりのハシゴ。演出部と近所の呑み屋でまずカンパイ。そのあとは、チーフの佐藤オサムと、ゴールデン街のif、オレンジ王子、そして寺小屋、最後は高円寺取すと呑み歩く。鳥やすでは、佐々木麻由子、後藤大輔とも合流。結局、朝の8時まで呑んでいたのだった。