2005.6.22

森角の劇団天然工房の13回公演『クーラー消してもいいですか?』を中野のザ・ポケットで見る。
この芝居は天然の代表作であり、3年前の池袋シアター・グリーンでの初演の時のカンドーは今だ忘れられないものがある。
「私のことを忘れないでいて欲しい…」という死んだ人間のせつないまでの気持が劇の進行と共に立ち昇ってきて、ホント見事な出来であったと記憶している(詳しくは、このホームページの2002年6月21日の日記を読んで下さい。けっこう詳しくストーリー展開、二重構造の作劇の見事さ、オレの受けたカンドーなどについて書いている)。
ああ、それなのに、しかしながら、今回の再演の舞台にはガッカリさせられたのだった。
ホンもほとんど変わらず(後半にいく分付け足した部分があるくらい)、役者も、1、2に入れかえあったようだが主要メンバーは全く同じ。それなのに、全く違う芝居に感じた。
どうしてこうなるの?
もちろん芝居は生きものであるし、変貌してゆくのは当然だ。しかし、初演の時より、より良くなってなければ再演する意味なんてないんじゃないだろうか。
初演の時の、少々荒けずりながらも疾走するスピード感、テンポ、サスペンス、笑い、絶妙の間…それらが今回はどこにも見当たらない。妙にバタバタし、芝居芝居してしまい、ピュアな感覚が欠如してしまっている。
最近の森角の芝居に感じる不満、予定調和された世界であるという不満を今回も感じざるをえない。キレイにパッケージされさし出されたモノ。中味も品質保障つきですよとさし出されたキレイな箱。
しかし、そんなモノを見たいわけじゃない。キレイにパッケージされた箱を突き破ってくるパワー、何が起こるか分からないというサスペンスにこそ、芝居とか映画とかを見る楽しみがあると思うのだ。
お前はどうなんだ?と言われそうだけど、オレのことはおいといて、森角には、オレなりの立場でズバズバと言っていきたいということね。
どうしたらいいか?
そんなことは知らない。森角たちが考えることだ。
芝居は難しい。次に期待だな。また驚かしてよ、と言うしかない。

2005.6.23(木)

オーピー『黒下着の好きもの女医』編集。
なんと、72分20秒もあった。アッチャーだよ。前作の『肉体秘書』も75分くらいあってあせったが、プロデューサーの福ちゃんの63分30秒までいいですよという言葉に力を得て、何とか12分弱まで切ることが出来た。しかし、今回はオーピーなので、リミットは61分まで。11分以上も切らなくてはならない。あ〜あ、またかよ…だ。前回はフィルム22本も回したけど、今回は20本だったので、せいぜい67〜68分くらいだろうという希望的観測もあったので、よりショック。

2005.6.24(金)

オールラッシュ。映倫の先生も「面白いですね」と言ってくれた。よし、やるぞ、悩んでいても仕方がない。思い切ってカットしてゆく。
まずは苦労して撮った待合室のシーンのうち集合シーンの3シーンを全てカット。これにて、せっかく来てくれた山口真里の姿は映像から消える。ゴメン。すまない。しかし、これで一気に5分ほど切れた。
次に、3つのシーンで、頭とか途中をカットして、これで2分弱。
そしてHシーンね。これで4分切れれば目標達成。
結局、61分40秒となる。あと40秒強。このくらいならアフレコ、ダビングで何とか切れるだろう。
ま、だいたんにカットして、何とかつじつまは合わせたけど、ピンクの60分という定めがやはりうらめしいよね。待合室の集合シーンなんかは、言わば遊びのシーンなので、本スジとはかかわってないので思い切ってカットしたが、ホントはああいう遊びのシーンは必要なんだよね。いくら1時間程度の映画でも、やはり息抜きは必要だよね。映画がよりふくらむというかね…。今回のなんか特に本スジだけだと、息苦しいというか、キリキリした話なんでね。
悲しいね。せつないね。

2005.6.25(土)

アフレコ。
開始、いつもより1時間早い9時とする。三神サラがアフレコ初めてだし、けっして器用な方じゃないしということで早める。
終了。夜11時半。終わってみれば、いつもと大差なし。つまり予想より早かった。夜中の2時、3時になるのをカクゴしていただけにね。ま、みんないいし、三神もガンバッたということですね。
飲み会。結局、朝の7時か8時くらいまで飲んでいましたね。キャビン泊。

2005.6.26(日)

10時半に起こされる。2、3時間しか寝てない。ま、いつものことか。
11時からラッシュ。ここからがいつもと違う。いつもは、ラッシュ見てるうちに眠ってしまうんだよね。前作の『肉体秘書』なんて実にグッスリ眠ってしまったものだ。しかし今回はどうしたわけか眠気がおそってこない。面白い面白い…と音楽の大場一魅とキャッキャッ言いながら最後までキッチリ見てしまったのだった。どうしたんだろう? 不思議だ。いつもは見てるにしても、強烈におそってくる眠気との戦いの方がメインだもんね。ま、あまりに疲れてて、ナチュラル・ハイになってたのかもね。
ま、それはともかく、今回のヤツ、かなりの力作です。面白いです。自信、少し、あります。一魅とも、今回は音楽でシーンを説明したり厚くするのはやめようと話しました。役者の芝居で充分持つねと。
そんなわけで、オレも今回のヤツには期待しますね。前作の『肉体秘書』とどっちがいいかねなんて一魅と話したりして気分は盛り上がりっぱなしです。
なま音、ダビングと作業は残ってるけど、今回のヤツ、早く見たいなという気分ですね。
午後はキャビンで仮眠。
夜6時、天然工房の芝居を今日見に行った志賀ちゃん、福ちゃん、水原香菜恵たちと劇場前で合流。飲みに行く。途中から石動三六一派も合流。そして最後には天然工房の打ち上げも合流となり、大飲み会となったのだった。

2005.6.28(火)

ダビング。
役者の芝居のテンションはすごいけど、印象としては暗くて地味な映画が、最後は一気に大エンタテインメントとなって終わるというオレ的な意図があったのだが、一魅がまたまたハジけた音楽を作ってくれてね。最後が思った以上にカッコよくてサイコー!! いつもありがとう!!だよ。
しかしねえ、ピンク館では、あの音の効果がほとんど伝わんないからねえ。そう思うと、またまた、せつなく、悲しくなるけどね。
終了、夜の11時。
12時頃、ヘロヘロの一魅高円寺のアパートまで、オレは一人、そのまま高円寺の「山本竜二の店」で映画の一人完成祝いをしようかと行ったってわけ。
深夜の2時頃だったか、竜二のケータイに衝撃的な情報が伝わってきたのだった。

林由美香、急死!!

えっ、ウソ!? そんなバカな! なんで!?
ことの真偽を知るべく、オレは由美香と一番親しい吉行由実にTELする。出た瞬間、泣きくずれている吉行の声を聞き、情報は正しかったことを知る。
しかし、どうしてそんなことが…。なんで、どうして…?

2005.6.29(水)〜30(木)

いつもはダビング終わると、久しぶりに映画でも見るかと映画に行ったり、また実際タイニイでやってる鳳組の芝居に行くつもりでいたのだったが、由美香ショックのせいか、どこに行く気にもなれず、家でじっとすごす。まるで今の天気のように、心はドーンと厚い雲におおわれ、何もする気にならない。
由美香が初めてオレの組で主演してくれた9年前の映画『濃密舌技 めくりあげる』(オレの大蔵デビュー作でもある。また由美香が主演したのは結局この一本だけでもある)や、オレの一番好きな由美香がいる『こんな、ふたり』を引っぱり出して、じっと見る。
酒を飲みながら見ているせいか、泣けてきてしまう。
ああ、そうだ、2年前に由美香と共演したAVがあったな。FAプロの『愛欲』というヤツ。なんと、夫婦役だったのだよ。そういえば、由美香と夫婦役で共演したなんてこの一本だけだ。貴重だ。引っぱり出して見る。
また、泣けてきてしまう。

2005.7.1(金)

オーピー『黒下着の好きもの女医』初号試写。
打ち上げ。いつもは朝まで飲むのが習わしだが、明日は由美香の告別式なので、12時解散となる。
帰宅。すぐ寝ればいいものを、また由美香のビデオを引っぱり出して、一人お通夜をする。結局、朝の6時頃まで飲んでしまう。

2005.7.2(土)

由美香・告別式。朝8時に起きる。10時半から板橋の某ホールで告別式執り行われる。
昼からは巣鴨に出て、告別式で会った牧村耕次、竹本泰志、五代暁子、キャメラマンの佐藤芳さん、本多菊次朗、瀬川くんらと、駅前のそば屋で酒を飲む。
しとど、酔う。
夜は荻窪グッドマンで桜井さんのライブがあり、林由美香の追悼ライブにするということもあり、オレは絶対行くつもりでいた。
(桜井さんは、オレの映画で2回歌を提供してくれていて、その2本とも由美香主演『濃密舌技』と由美香出演の『こんな、ふたり』だったのだ。特に『こんな、ふたり』ではライブハウスのシンガー役で出演し、そのシーンに出てる由美香と絵の中では共演してるのだ。桜井さんの歌をバックにすばらしく感動的な芝居をしてくれた由美香。これから増々、その時の歌『季節の隙間にしゃがみこんで』は、オレにとって忘れられない名曲になっていくだろう)。
しかし夜の8時頃まで何時間もさまよっていられなくなったオレは一旦家に帰る。少し仮眠してから行こうと思ったのだ。しかし、疲れが出たのか、仮眠のつもりが本眠になってしまい、ふっと目覚めたら夜の10時を回っていたのだった。なんてバカなオレであることか。

2005.7.4(月)

『黒下着の好きもの女医』映倫試写。

2005.7.6(水)

『黒下着の好きもの女医』再び東映ラボで試写。キャメラマンの長谷川氏等、1日の初号に来られなかった人に何人かいたので、その人たちを集めての初号となったのだ。総勢5人。ぜいたくだよね。

2005.7.7(木)

久しぶりに映画館で映画を見る。新宿ピカデリー。やっとクリント・イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』を見た。
『許されざる者』以来、クリント2度目のオスカー、作品・監督賞に輝く傑作とのことで、期待はいやましにたかまり、オレにとっては、満を持してという気分であった。
見ていてじわじわと迫って来たのは、チャップリン、黒沢明が「代表作は?」と聞かれると答えていたという「ネクストワン(次だ)」という言葉だ。
今回の作品がクリント・イーストウッドの最高傑作だとは、オレは思わないが(やはり、『許されざる者』が最高だろう。最近では、前作の『ミスティック・リバー』の堂々たる風格、男のロマン漂う『スペース・カウボーイ』、数年後のダーティ・ハリーといった趣も楽しい、意外な傑作『ブラッド・ワーク』などの方が今回のヤツよりオレは好きだ)、全編に「ネクスト・ワン」の気迫を感じるのだ。つまり、チャレンジし続ける魂とでも言おうか。
今年イーストウッドは75歳になる。しかし、まだまだホントに元気がいい。老け込まないね。オレらの偉大なるお手本だよ。増々、次は何をやるのか?と、「ネクスト・ワン」が楽しみだよ。

2005.7.9(土)

下北沢シネマアートンで初の演劇公演。かわさきひろゆきと里見瑤子による『小鳥の水浴』。
オレがこのレナード・メルフィによる傑作を翻訳してから35年以上だった。12年ほど前に、かわさきくんの手によって、新宿タイニイアリスで初演された。以後、かわさき劇団のレパートリー演目となり、今までに3回再演され、今回が4回目の再演になるとのこと。
しかし、はっきり言って、今までの『小鳥の水浴』に満足したことは一度もなかった。(唯一、手塚美南子と入江浩治が演じた時にだけ、緊張感あふれる舞台を見たと思ったが、それも火事場のバカ力的な偶然性が働いた幸運によるもので、つまりホントに練り上げられた芝居というわけではなかった)。
見るたびに失望し、若かりしオレがあれほど惚れ込んだ『小鳥の水浴』って、こんなにつまんない芝居だったの?と煩悶するばかりであった。
だから、今回の再演にも全くといっていいほど期待していなかった。27歳くらいという設定の主人公(フランキーとヴェルマ)を、里見はともかく、40過ぎのかわさきくんがやるというだけで「ちょっと待ってよ」という気持になったものだったが、翻訳者として、公演後のトークショーに出てくれと言われ、ヒマだし、ま、いいかということで出かけたというわけだった。
そして、見た。
驚いた。すばらしい出来であった。初めて『小鳥の水浴』という芝居を見た気がした。初めて、フランキーとヴェルマに会えた気がした。オレの惚れた『小鳥の水浴』に初めて会えた気がした。
里見、かわさきとも今までの役者人生の中で最高の出来ではないだろうか。特に里見瑤子のテンポの早いセリフまわしはすばらしく、何かに追われているかのように次から次へと言葉をつらねてゆくヴェルマがまさにそこにいるという感じ。彼女の声のよさが生きた。かわさきひろゆきもいつになく誠実に取り組んでいるという感じで、それがフランキーという男の誠実さに見えてくる。
緩急ついた演出のリズム、初日ならではの緊張感なども手伝って、せつなくも美しいフランキーとヴェルマの物語がここに立ち昇ってきたのだった。

2005.7.10(日)

後藤組・役者打ち合わせ。
オレは何と、役者だけでは3年ぶりのピンク映画出演だ。
役柄は、漫才師役。こういう小器用さを要求される役って、実はオレ、一番苦手なんだよね。分かっているだろうに、後藤ちゃんも大胆だよね。しかも関西弁って。どうしよう? ま、今さらどうにもならんし、いつものように、なんとかなるだろうの精神でやるしかないね。

夜は、『小鳥の水浴』。二日目にしてラク日。
前日と比べると、演出的に何か所か手を加えられている。しかし、思いつきで手を加えたとしか思えない改変。稽古不足が浮き上がり、ギクシャクとした妙な間になってしまい失敗。前日の好評にかわさきくん、悪いクセが出たなと思った。(一か所だけよくなってた。街の高台で2人並んで夜の街並を見渡すシーン。前日は一人づつ順番に高台に上ってたのだ。この改変はよかった。街並の美しさや、2人の感情が濃密な空気となって舞台にあふれた。演劇的な余りに演劇的な名場面となったね)。
ま、オレが細かいとこに目がいってるだけで、全体としては、もちろんいい出来で、今日も好評のうちに終えることが出来たといえよう。
今回、残念だったのは、業界の役者仲間や関係者がとても少なかったことだね。今までのイメージが悪過ぎたので(つまり、かわさき劇団には見る価値なしと思わせる芝居が多すぎた)、みんな敬遠したのかもしれないけど、今回ばかりは見てほしかったと思う。ま、今までのこともあるし、芝居は見なくちゃ分かんないし、仕方ないか。
それから、初の演劇公演となったシネマ・アートンだけど、非常によかったと思う。もともとが、『小鳥の水浴』って、反芝居小屋運動という側面もあるオフ・オフ・ブロードウェイの芝居だけに、映画館という非・芝居小屋の空間はとてもマッチしてたと思うのだ。それから、オレにしてみたら、ほとんどが土間という小劇場に比べて、映画館の椅子というのが、なんとも心地よくてラクで見やすかったというのが大きいよね。今後はアートンでの演劇公演が定着してくると面白いね。いずれは、「メルフィ特集」とかやれるといいな。

2005.7.11(月)

プロレスラー、橋本真也、急死… 40歳。
復活することなく死んでしまった。好きだった。

2005.7.13(水)

後藤組・出演日。浅草の木馬亭でのロケ、相方の中村方隆さんとの息もピッタリで(というか、合わせてくれたのか)、なかなか楽しい現場となったのだった。

2005.7.17(日)

五代暁子と、次回オーピー作品の企画会議。正月作品ということで、明るいコメディをやってくれというのが会社の注文。韓国映画の『誰にでも秘密がある』を元ネタにしたものやろうということになる。イ・ビョンホン役に竹本泰志でね。

2005.7.19(火)

深町組・新作試写。ここ数年、限りなくシンプルになり続ける深町監督作品だが、今回の作品は、その中でもひとつの到達点と言える作品かもしれない。余りの「ムダ」のなさに、「美しい」さえ感じてしまったオレだった。近年の深町組としては、Hシーンも充実して、見応えあり。(タイトル忘れちゃったよ。戦争中を舞台にしたシリアスものの一篇。里見瑤子、佐々木ユメカ、川瀬陽太など出演。ユメカが出てるということで、珍しいので、上映時分かると思うけど…)。