2004.5.30(日)〜6.1(火)

オーピー映画『人妻タクシー 巨乳に乗り込め』撮影。
オレはこの日記で今までにいく度となく、主に天候に助けられたことを指して「奇跡がおきた」と言ってきたが(そしてそれがいつしかスタッフ、キャストの間で「イケジマ・マジック」とささやかれていると)、今回こそはその中でも、まさに最大級の「奇跡がおきた」のだった。
天気予報では3日間とも降水確率70%という最悪の予報。
初日と2日目の夕方までは最悪雨が降ってもまだいい。しかし、2日目の夕方から4日目の朝までは全てがオープンのロケでの撮影。雨に降られたが最後、今回の映画は成立しないのではないかと思えるまさに背水の陣。
しかしオレのことだ。なぜか雨は降らず、「イケジマ・マジック健在なり」ということで撮影は終わるのではないか、いつものことだ、なんとかなるさ…という気分でいたものでもあった。
ストーリー。中年の女性タクシー・ドライバーが中年男の客をのせる。男は「海に行ってくれ」と言う。その2人の海までの一夜の旅がメイン・ストーリー。その旅の間に、2人の過去の回想シーンがアトランダムに入り込んでくる…。

初日。
女(持田さつき)の回想シーンのみの撮影。埼玉にある豪邸Tスタジオでのロケ。
風は強いが快晴。
今日は実景以外は全てが家の中の撮影なので、この日くらいは雨が降っても…とは思っていたが、キャメラマンの志賀ちゃんはやはり晴れていた方が明りが回るので「いいねえ…」と独りごちてご満悦。
順調に撮影は進み、ほぼ予定通りの夜7時半に終了。
それから千葉の津田スタジオへ移動。9時前に到着。
いつもなら、深夜、時には明け方までの飲み会となるのだが、さすがに明日からの二晩完徹のスケジュールを思うと少しでも寝ておこうとなり、深夜1時前には全員寝床についていたのだった。

2日目。8時開始。この日は、スタジオでは全て男(牧村耕次)の回想シーンのみ。
まずはオープンから。2シーン。
風は増々強く、晴れてはいるものの、雲の流れ早く、不吉な予感。
スタジオにもどり5シーン。
たまに雨の混じる曇り空となってくる。増々イヤな感じ。
午後3時終了。これにて回想シーンは全てが終了。あとは現実シーンのみとなる。5時まで休憩タイム。
オレも1時間ほど眠ってしまう。とりあえず仮眠出来たのでホッとする。
午後5時、いよいよオープンロケへ出発。これから明後日の朝までノンストップの撮影となるのだ。とりあえず雨は上がってる。
暮れなずむ夕方の6時、第一現場の国道沿いの食堂に到着。
これから、明日の明け方までにロケハンで決めた4ヶ所で18シーン撮らなくてはならない。時間との勝負。そして、天候との勝負だ。とにかくすべてがオープンロケなので、雨が降ったらアウトと思っているオレがいる。その一方で降るはずないさ、いつものように…と楽観視してるオレがいる。
食堂・内と駐車場を使った5シーンが終了した夜の9時頃、いきなりパラパラ、そしてドカーンと大ツブの雨が降ってきた。
ああ、とうとう来てしまった!
食堂の国道をはさんで向かい側にデッカイガソリン・スタンドがあったのだが、助監督の佐藤が話をつけて、とりあえずスタンドの屋根の下に避難。
作戦会議。ロケハンで決めた場所はこうなると全滅なので、ここで(夜の10時頃から明日の朝5時頃までは誰もいなくなるとのこと)やれるとこはやってしまおうとなる。
そんなわけで、強い雨と風の中、とりあえずは雨はしのげるので、このGSで朝までやることとなる。
7シーン撮る。6シーンをこぼす。こぼしシーンは翌日東京にもどってからでも最悪やれるというシーンね。

最終日。
そんなわけで明け方の5時過ぎまでそのガソリンスタンドで何とか7シーンはやれたのだった…。
しかし…。
雨は激しく降り続けている。
このままでは何も撮れないので、とりあえず仮眠して様子を見ましょうとなり、コンビニの駐車場に車を入れ仮眠タイムとなる。
7時から11時までの予定であった。
しかし疲れ切ってはいてもそんなに眠れるものではない。9時くらいには目を覚まし、相変わらず激しく降り続ける雨を見てはボーゼンと「ああ、オレの長い間の幸運もこれまでだったか!? もうおしまいだ…」と一人落ち込んでいたのだった…。
ところが…。
10時頃、雨の中を助監督の佐藤と志賀キャメラマンが近づいてきた。
「池ちゃん!」
「何?」
「海の家が借りられたよ。ラストの岩場の変わりに、ここでやれたらなぁ…と思いながら覗いていたらドアが開いたんだよ。おっと思ったら中に人がいて、事情を言ったら、使っていいよと言うんだよ」
「えっ、マジ!? ホント?!」(実はオレもプロットの段階から海の家というイメージはあったのだよ。でも、とても予算的に借りるのはムリなので、そのシーンは岩場ということにしてたのだな。)
「オッケーだよ。それから、東京にもどってやる予定だったシーン46だけど、盗みでやれるマック発見したから、そこでやっちゃおう!」
…ホント、おどろいた。海の家とマックもだけど、それを雨の中、ロケハンしに行き、さがして決めてきたキャメラマンと助監督の行動にオレは心底ビックリしたのだった。
それは久しく忘れていた新鮮な驚きだった。
映画って、スタッフが作っているんだ…って、久々に、そして強烈に思い知らされたよ。
オレは感動した。
映画って、スタッフ・ワークなんだ。
喜びいさんでマックに行き、1シーン。
さらに喜んで海の家へ。
これだよ、これ!っていう空間のすごさね。
コーフンし、かつ、しみじみと海の家での撮影をする。
終了、午後の2時すぎ。
それから、いよいよ撮影のクライマックスとなる、男の海への入水自殺のシーンとなったのだが、その時、なんと、雨が上がったのだよ。
たび重なるあまりにもステキな展開に、「ああ、神様はこのために雨を降らせてくれていたんだな」とマジに思う。
雨のおかげで、海の家に出会えたし、また天気が悪かったせいで、海はサイコウの荒れ具合(あとでラッシュを何度も見てビックリしたけど、よくぞ牧やん、死ななかったな。絶対ムリすんなよ、危険を感じたら即逃げてくれよと言ってはいたが、そこは役者、絶対引かないんだよね。でもそのおかげでとんでもない絵になっていた。マジに命がけでした)。
夕方5時過ぎ、海は終了。
オレと役者2人は近所の温泉に入り、冷え切った精神と肉体をほぐす。ところがその間もスタッフたちは役者抜きのカットを撮っていて、体を休めるヒマもないのだ。
マジに海辺は寒くて、海の水は冷たくて、全員が冷え切っていたのだけどね…。
映画はスタッフが作っているのだ
夜7時頃、東京へ向けて出発。
夜9時、東京着。
前日のこぼしもふくめて、ナイト・オープンを12シーンほど撮る。
朝の5時、終了。丸々2日間の完徹であった。
終わってみれば、雨のおかげで今回の絵がいかに豊饒になったことか。
無事に終わって思うことはそれだけ。
映画の神様が雨を降らせ、オレたちをある地平まで導いていてくれたんだな…そう思う。

2004.6.2(水)

そんなわけで朝の7時頃、家に帰ってきたのだが、帰るなりFAXの山が届いていた。7月に入る予定の後藤大輔組の初稿である。例によってオレがプロデュースをやる予定なのだ。

2004.6.3(木)

編集。
途中、後藤ちゃんが顔を出し、今月中の20日くらいからクランクインしたいと急に言ってくる。オレ自身がそのくらいまでかなり忙しいので、ちょっと待ってよという感じなのだが、本人の意志強く、それではあとで打ち合わせとなる。
編集終了後、後藤ちゃん、飯岡キャメラマンと打ち合わせ。マジに20日頃インしたいということで急遽助監督さがし。知ってる助監督さん、10人くらいに連絡する。
夜の10時頃、堀くんからTELあり。やってくれるという。とりあえずホッとする。

2004.6.4(金)

オールラッシュ。ラッシュ後の編集で、68分近くの尺を61分まで持ってくる。
編集後は堀くんも交えての後藤組打ち合わせ。
堀くんと付き合うのは、7年半前の『ゲイのおもちゃ箱』以来。その頃と比べると、はるかにしっかりして、たくましくなっているのに、あらためて歳月というものを感じないわけにはいかない。
オレは明日5日から9日まで浜松・姫路に行ってしまうので、その間のことは全て堀くんにたくして行くしかない。特に一番心配なのは、急遽決めなくてはならないヒロイン役ね。
インまであと2週間しかない。オレでさえこんなメチャなスケジュールではやったことないってのに。かなりムチャだよね。でも今回はコメディなのでいきおいのまま少しでも早くやってしまいたいという後藤ちゃんの気持は、それはそれでよく分かるんだけどね。

2004.6.5(土)

恒例となった浜松のシネマ新映での舞台挨拶。今年で5回目。今回は山口玲子と美奈に来てもらった。
山口は今年になって3回目のトークショー。美奈も2回目。単純に言って一人の女優と2度3度というのはオレ的には面白くないかも。話の内容もあまり変わらないということでお互いにあきてしまっているのだ。反省とては、次からはせいぜい2回までの女優とトークしたい。
もうひとつ反省としては、これはオレたちの問題とはちょっと違うのだが、トークの直前に、彼女たちが出ていた映画をやって欲しいということね。今回はトークのあとにその映画をやるというタイム・テーブルで、そうなると、トークのあとはロビーでサイン会撮影会となるので、みんなロビーに来てしまい、結局は彼女らが出ている映画、ほとんどの人が見てないということになり、それはちょっと面白くないなァと思ったしだいです。
夜は去年に続いてお客さんの有志の人たち(主に女装マニアとオカマさん)による接待。カラオケ・バーで盛り上がる。そのオカマさんの一人に、20年くらい前からのオレの俳優時代からのファンだという人がいて、オレを喜ばせてくれる。カワイイんだよね。あの時、スクリーンの中にいて私があこがれていた人が今ここにいるなんて、とてつもなくカンドー!とか言ってくれたりしちゃってね。
最後は、例年どおり、オーピーのT部長の部屋、そして、オレの部屋という具合に、T部長、山口、美奈、オレ、そしてファンの太田君の5人で明け方まで飲み続けていたのだった。

2004.6.6(日)

社長の接待で、浜名湖の超高級温泉ホテルで、一人二万円は下らないと思える懐石料理をいただく。毎年思うことだが、ホント社長にはお世話になりっぱなしです。今後もよろしくお願いします。
夕方の6時頃、東京へもどるみなさんと別れて、オレは一人姫路へと向かう。
目的は、旧友の長谷川と会うこと、それと、長谷川が主宰している「うんちく祭り」のゲストとして、ピンク映画を語るためだ。
夜の9時頃、姫路に着く。ほぼ20年ぶりの姫路の街は、激しい雨の中、暗く沈んでいた。長谷川が車で迎えに来てくれる。
まずは「怖」(以前からの読者にはおわかりのように女の子2人のオルタナ・バンド)が根城にしてるライブハウス「マッシュルーム」に連れて行かれる。そこはとあるホテルの地下にあった。入るなりコーフン。色んな空間があり、若者たちが思い思いのたたずまいでその中にいるさまはまるで大学の学生会館のようで、オレには非常に面白い空間の空気感であったのだ。
それから、マッシュルーム近くの長谷川邸へ。「怖」のメンバーたちも集まってきて、さっそく飲み会へ。
翌日早いということと、オレも疲れていたということもあり、深夜の2時頃にはおひらきとなりフトンに入ったと思うが、そのへんの記憶は今や定かではない。

2004.6.9(水)

3泊4日の姫路を離れ、夕方4時頃の新幹線で東京へもどる。
姫路での記憶に残ることがら。
「うんちく祭り」。「キング・オブ・ピンク」としてオレが登場。ビデオ上映も含め5時間ほど。それなりに楽しくピンクを語れたと思う。
港近くのお好み焼き屋「えのき」。午前中から入って、ビールをガンガン飲みながら、お好み焼きを一人、2枚3枚と食べていく…。なんとも言えない郷愁のようなものが、あの場所、空間、そして時間帯に満ち満ちていたのだった…。
駅前の繁華街にある串カツ屋。ここもまた昼からオヤジたちが飲んでいて、一種特権的な空間。オレもはまったよ。
そして、長谷川邸。この家のオカシサは言葉ではつくしがたい。見なくてはわからない。見て納得。とにかく変というか、ユニークな家です。
夜の8時頃には東京駅に着く。あっという間だね、姫路なんて、とは思うが、そこはやはり近くて遠いもので、今度はいつ行けるんだろうと思うと、ついでにもっと西の方も旅行したかったなァという気持がフツフツとわいてくる。
しかし、そうも言ってられない事情があるから帰ってきたわけだし、頭を切り替えなければ。連日、昼から飲んでいたので頭の中はブヨブヨになっている。

2004.6.10(木)

後藤組打ち合わせ。いまだヒロイン役決まらず。今回は夫婦二組の話で他の3人は決定済み。ヒロインの夫に境賢一(劇団民芸の俳優。後藤ちゃんとは高校時代の同級生。それが時を経て監督・役者として再会した)。もう一組の夫婦に、本多菊次朗、林田ちなみ。
「ま、なんとかなりますよ」と言う堀くんがたくましく見える。さすが国映できたえている人は違うよね。

2004.6.11(金)

監督作品『人妻タクシー 巨乳に乗り込め』アフレコ。
快調。えらいテンポよく、夜の9時前には終了。最近というか、ここ2、3本早く終わることが続いていたが、それにしても9時前は早い。
ラッシュ見る。10時半終了。
飲み会に突入。朝まで飲む。ヘロヘロになる。久々に電車の中で寝てしまい、なかなか家までたどりつけないこととなる。