2004.1.20(火)

15日にひいた風邪がまだ治らない。思い切ってダラダラしてずい分体を休めたつもりだったけど長引くものだ。でも今日は外出予定日。
知ってる人もいると思うけど、オーピー映画には「監督賞」という「賞」があって、制作、営業、支配人の人たちが点をつけて、それがある点に達すると、「監督賞」となり、金一封が授与されるという寸法だ。いかにも老舗の映画会社らしいシステムで、何はともあれ金一封はいただけるというのは、実にありがたい制度ではある。
今日はその授与式。ここは行かねばなるまい。しかもオレは最新二作(『痴漢電車 誘惑のよがり声』『豊乳願望 悩殺パイズリ締め』)でいただいただけにね。
式自体はあっさりしたものであっという間に終わるのだが、いつもこまるのはその後。昼前から時間がドーンとあいてしまうのだ。
いつもは映画のハシゴをしたりする。しかし今日は体調いたって悪し。でもせっかくだからやっぱりハシゴしようと、「ぴあ」を開いて渋谷の単館系にねらいを定めて渋谷へ出る。調子よかったら4本見ちゃおうという心づもり。
まずはイメージフォラムで今評判の『ヴァイブレータ』。
見始めてすぐ「しまった!」と思う。こんな体調悪い時に、こういう地味な心理ドラマ見るもんじゃなかった。薬の作用もあって眠くなってきちゃうんだよ。途中から、映画を見てるんでなく、眠気との戦いとなる。つまらないんじゃないんだ。面白そうな匂いに引かれて何とか起きようと必死になるわけだしね。
つまり、ちゃんと見れなかった。失敗。
その中でも思ったことをいくつか言うと、まずは大評判の寺島しのぶの演技だが、オレには世評ほどいいという感じは全然受けなかった。がんばってるのは分かるけど、魅力がないのだ。スターのオーラというか、絶対的、根本的な魅力がないのだ。一言で言うと「チャーミングでない。この人のどこが「ジェルソミーナ」なんだよ!?(そう言う人がいた)。天の邪鬼のオレとしては、全然ダメじゃんと言いたくなるね。相手役の大森南朋、この人はいいよ。寺島しのぶよりオレはこの人の芝居に引かれたね。大森南朋、カイです。
鈴木一博の撮影があいかわらずシャープですばらしい。
それから、こういう地味で難しい題材にとり組んだ監督廣木の力技は感じた。でもね…。
とりあえず、もう一度見ないとダメですね。
ま、そんなわけで、これ一本で疲れ切ってしまったオレは、あと3本は放棄して、グッタリと家に帰ったのだった。また熱も上がってきてサンザンだったよ。ちなみに見たかったあと3本は、『ジョゼと虎と魚たち』『アイデン&ティティ』『DEAD LEAVES』ね。
大ニュース!(個人的な)。なんと今日で、酒を5日もあけている。すごい! 信じられないけど、ホント。

2004.1.21(水)

新東宝の福ちゃんと打ち合わせ。主に次回作のヒロインえらびを中心にね。2本撮るので、せめて1人はニューフェイス出したいものだよ。
新東宝2本とオーピーの、ま、3本撮りだな、その超過密なスケジュールもほぼ固まってくる。新東宝の2本を2月25日から3月1日、オーピーを3月21日から23日で撮影。オーピーの方はまだネタも固まっていないし、あー、少し緊張してきた。
6日ぶりに酒を飲む。夜中、知人と電話で数時間話したのだが、その時飲み出して、数時間後にはグテングテン。何を話したのかおぼえてないよ。

2004.1.23(金)

やっと風邪が解放に向かう。
それにしてもここ一週間ずい分ビデオを見た。レンタルビデオ、そしてケーブルTV、そして、NHKBSの「小津特集」…などなど…。二十数本見たかなァ。
この一本。
クリント・イーストウッド監督・主演の『ブラッド・ワーク』(去年、あっという間にロードショー終わってて見れなかったのだ)。
クリントの魅力全開ね。無造作にライフルつかみ、のっしのっしと不審な車に近づいていくクリント…。カッコイイ!! もう、スターのオーラ、出まくりね。70過ぎてのあのたたずまいは、これはもうただごとではない、と言うしかないのだ。
クリント・イーストウッド、健在です。
新作『ミスティック・リバー』への期待、いやましにたかまる。早く見なくちゃ。

2004.1.24(土)

五代暁子と打ち合わせ。
とりあえず、新東宝の2本撮りの初稿は上がってて、ほとんど直すところもないしで、フリートーキング。酒をガンガン飲みながらね。オーピーの方もネタができつつあるけど、これはもう少し時間かけたいので、アバウトな話で終始。

2004.1.25(日)

二週間ぶりに外で飲む。阿佐ヶ谷の「まるきや」に行くと、松島氏がいる。そこから2人で3軒ハシゴして、朝まで飲んでしまった。

2004.1.28(水)

女のコと面接。華沢レモンちゃんという19才のカワイイ子。つい先日、今岡組でデビューしたそうだ。オレは3月に入る予定のオーピー作品のヒロイン役でどうかと思い面接したのだが(実はオーピーのネタはまだ何も決まっていない。何となくジワジワ…というのはあるんだけどね。簡単に言うと2年前にやった『デリヘル嬢』みたいなスタイルのものをやりたいんだけどね。いずれにしても何もネタが決まっていないのにヒロイン役もないもんだけどね)、オレ、いっぺんで気に入ってしまい、お試しで、次回の新東宝作品の脇役やってもらうことに一気に決定!

2004.1.29(木)

久しぶりにAV出演。AVとは言ってもオレは脱ぎからみなし。数行のセリフ言うだけで、実働15分。それでウン万円のギャラ。メチャおいしい仕事だったね。チョコボール向井とも久々に会う。相変わらずナイスガイだった。

2004.1.30(金)

女のコと面接。新東宝作品Iのヒロイン候補。矢崎茜クン。AVでバリバリ売れてるらしい。このコもいっぺんで気に入る。茜クンもピンクの安いギャラにも驚かず、ぜひやらして下さいと言う。これも相思相愛ってヤツで、このコも一気に決定!
これで新東宝作品・仮題『ああっ、結婚!I 恐怖のサイコパスファミリー』、『ああっ、結婚U 恐怖の淫乱ファミリー』の2本ともキャスティングが決定!
「I」の方が、矢崎茜をヒロインに、酒井あずさ、山口玲子、華沢レモン、牧村耕二、本多菊次朗、平川直大、そして神戸…。
「U」の方が、山口玲子をヒロインに、秋津薫、矢崎茜、そして、牧村、本多、平川、神戸…。
なんだ、ほとんど一緒じゃない、だって? そう、そういう話なんだもん。ひとつひとつは独立しているが、続けて見たら一本の作品にもなるという、つまりはそういう企画なんだよね。だから役者もほとんど一緒なのだよ。
どうなることか…。
ま、楽しみにしててよ。
夜、決定稿上がる。

2004.1.31(土)

新宿ピカデリーで『ラスト・サムライ』。いやあ、満員の客入りにビックリ。でも、見て納得。
ただただ空虚、空疎なハリウッド大作群が横行する中、久々に見応えのあるハリウッドの大作を見たなという感じ。
見た人みんなが言うように、アカデミー・ノミネートに見るように、渡辺謙が圧倒的だよね。まさに「役」との出会いだね。一人の俳優が生涯で、その身におこりえるかもしれない一度か二度の奇跡的な出会いというか、最大のチャンスというか…。
渡辺謙は見事に「役」をゲットした。「役」を生きた。「役」に成り切った。つまり、「渡辺謙」に成り切ったのだ。これはすごいことだと思う。
それにしても、トム・クルーズ、あんたは偉い!

2004.2.1(日)

早くもロケハン。大泉学園のスタジオとその近辺を見て回る。ロケハンすると気が入ってくるので、今回は2本撮りなので準備を早めにしたい身としては、ちょうどいいタイミングだね。
決定稿を印刷に回す。

2004.2.3(火)

新東宝『ああっ、結婚!』印刷台本上がる。
午後3時から、シネキャビンで、演出部、役者の来れる人たち集合。簡単な打ち合わせ。
8時くらいから飲み会に突入。結局、朝の6時まで飲んでいた。

2004.2.6(金)

女優面接。紅蘭嬢。次回オーピー用なんだけど、次回オーピーの企画ってドキュメント風のヤツなんで、出来るだけピンク未出演の人で固めたいと思っているのだ。紅嬢は、その条件にも合うし、美人だし、人間的にも面白そうということで即決定。これで次回オーピーの女優は紅蘭、華沢レモンと2人決定。
あと一人どうするかだよ。役柄は、主婦、風俗嬢、女子高生とあり、このうち二つが決まった。あとは主婦役ね。復活した佐々木麻由子とは思っているんだけどね。でも出来るだけ知られていない人で固めたいという意図もあるしね。でも、女優だけはそう出来ても男優はそうもいかないし、結局は知られた顔が出てきちゃうわけだから、女優も一人ぐらいは知られた麻由子でもいいかな…なんて色々と悩んでいるのだ。

2004.2.7(土)

五代暁子と打ち合わせ。次回オーピーのプロット、内容を決定する作業ね。今までの話で大体のコンセプトは決まってるんだけど、それをより煮詰めるってことね。
決まる。『デリヘル嬢』のスタイルをより押し進め、ストーリーらしいストーリーのない、エピソードの羅列でいくことに決定。女のキャラクターも、予定どおり主婦、風俗嬢、女子高生で決定。

2004.2.8(日)

阿佐ヶ谷アルスノーヴァで遊劇社公演『真説・昭和桃尻姉妹』を見る。佐々木麻由子嬢と一緒に行く。女のコ2人の芝居という部分がやはりちとつらかった。余裕ないもんなあ。
見たあとは、阿佐ヶ谷だし、最終日だったし、麻由子嬢だし、これはもう大飲み会に突入だよね。結局、朝の6時過ぎまで飲んでしまった。
その中でひとつの企画が出てくる。麻由子嬢、遊劇社の女優たちと女の2人ないしは3人芝居をやろうかという話になり、なんとその演出をオレがやるという話になったのだよ。芝居の演出なんて、監督になってからはやってないので、十数年ぶりのこと。今までもたまには芝居やりたいなァとは思っていたけど、現実的にはこれだけ忙しいとムリということで十数年もたってしまったが、今回は何となくそういう話で盛り上がってしまい、これはひとつのチャンスと思い、その流れに乗ってみようかということだ。
予定は来年の夏。場所は新宿タイニイアリス。出演者で決まっているのは、佐々木麻由子、遊劇社の女優(名前、正確には知らないのだ。なんということ!)。演目は、これから夏くらいまでに決める。いくつか候補は出たけどね。
ま、待ってて下さい。オレもこうして発表したからには責任も出てくるし、ここは流れに乗って楽しもうと思ってますんで。

2004.2.10(火)〜11(水)

新東宝『ああっ、結婚!』コンテ。
公開タイトル決まる。
一本目が『インランなる一族 第一章 背徳の戯れ』。
二本目が『インランなる一族 第二章 絶倫の果てに』。
内容とピッタリのナイスなタイトルだと思う。「淫乱」を「インラン」とカタカナにしたとこがミソね。
内容に少し触ると、仮題のとおり、結婚がテーマね。
結婚したいと思っている男タカシがいる。合コンに参加して2人の女性を気に入る。結婚したいと思う。そこから話がふたつに分かれ、片方の女性・涼子と結婚した場合が『第一章』で、もう片方の女性・三好さくらと結婚した場合が『第二章』ね。
『第一章』でタカシが結婚した涼子の家族は「恐怖のサイコパスファミリー」であった…ということで、こちらは少しコワイお話ね。
片や、『第二章』で結婚した三好さくらは(この名前に反応する人もいるかも。そう、オーピーで三本までやった『三好家シリーズ』の長女さくらね)、人の三倍は好きものの、超インラン女であったということで、こちらはおバカなコメディね。
という具合に中味はかなり違った2本になります。
涼子役に新人の矢崎茜、さくら役に今ノリノリの山口玲子。タカシ役には平川直大。
公開はバラバラになりますので、一本見た人は必ずもう一本も見ること。その方がより楽しめると思いますんで。

オーピーのプロット上がってくる。話らしい話がないので、会社がなんと言うかちょっと不安。でも何とかやりたいもんだ。最近は会社に言われる企画が続いているんでね。たまにはやりたいものやらんとね。

2004.2.12(木)

新宿ピカデリー。やっとクリント・イーストウッドの『ミスティック・リバー』見る。イーストウッド・ファンのオレとしては、満を持してと言いたいとこか。
すばらしかった。何と堂々たる風格のミステリーであることか。そして、何とせつない人間ドラマであることか。
ラストシーン、かすかに見える救い、光明…そして、それを運んで来るのが「赤ん坊」であるという一点において、これはイーストウッド版の『羅生門』であったのか、とオレはひとりごちたものだ。
久しぶりに「映画」に酔いしれたオレは、これまた久しぶりに清美ちゃんの「銀河系」に寄り、うまい酒を飲んだのだった。

2004.2.13(金)

ロケハン。
今回は久しぶりに三郷スタジオを使う。それに初めて使う大泉のスタジオもある。よって丸一日かけてじっくりと見る。
一段落。夜は阿佐ヶ谷「スターダスト」「まるきや」と回り、朝まで飲んでしまう。